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異世界の飛鳥2

「ピンポーン」



虎ちゃんの家に着いた私は家の前のインターホンを押した。

そしてそれによって出てきた人は・・・



「よう飛鳥。」



虎ちゃんの兄である竜さんだった。

私はとっさに身構えてしまう。

そんな私を見て



「・・・何警戒してんだよ。虎から話は聞いてるしあいつに釘を刺されてるから何もしねえよ。あいつは今コンビニに菓子買いに行ってるから部屋で待ってろよ。」


「は、はい。」



なんか今日の竜さん、優しいな。

私はお言葉に甘えさせてもらって先に虎ちゃんの部屋に上がらせてもらった。

部屋まで案内してくれた竜さんは部屋の入り口に立って言った。



「あと5分くらいで帰ってくると思うから。その間部屋の物色でもして待っててくれ。」


「しません。」


「そうか。」



「そうか」で済ませるなと心の中で思う。

だが続けて竜さんはこう言った。



「何か悩んでるみたいだけど、あんまり考えすぎるのもよくねえぞ。ま、俺はお前が何で悩んでることなんて知らねえけどな。」


「・・・竜さんは私の相談に乗ってくれないんですか?」


「俺が良くてもお前が嫌だろ?そういうのは本心で言ってくれよ。」


「・・・。」


「じゃあ、俺は自分の部屋に戻るな。」



竜さんは部屋の扉を閉めようとする。



「あ、そうだ。お前の相談事とやら、うちに来て虎に話すってことは鈴絡みだろ。気になるなら鈴から話聞いとくわ。聞いた時にはお前はとっくに解決した後になってるかと思うけどな。」



という言葉を残して扉を閉めた。

・・・私、考えていることが顔に出やすいのかな?

私はおとなしくその場に座り、虎ちゃんが来るのを待った。




「おまたせ~。ごめんね、待たせちゃって。」


「ううん。私が相談しに来たんだから謝ることはないよ。」



虎ちゃんはテーブルに買ってきたお菓子を置いて、私の横に座った。



「それで、私に相談することって何?もしかして恋の相談?」


「ち、違うよ。あのね・・・。」



私は虎ちゃんに家で鈴さんと話したこと、私が今どうして悩んでいるかについてのことを話した。

虎ちゃんは私が話しているとき、時々質問をしたりしたが基本は静かに私の話を聞いてくれた。

そして私が話し終えると、長考などせずにすぐ



「別に鈴姉ねぇの妹になってもいいんじゃないの?」



と言った。

私はなぜすぐにそんな答えが出せるかがわからなくてそれを聞いて戸惑った。

虎ちゃんは私の戸惑ってる様子を見てこう言った。



「最終的な答えを出すのは飛鳥自身だから、これは私の意見として捉えてほしいんだけど、別に姓が変わったからって骸亞さんとの繋がりがなくなるわけじゃ無いと思うよ。それに、飛鳥はもう少し骸亞さん離れをした方がいいんじゃないかな?」


「骸亞さん離れ・・・?」


「そうよ。飛鳥って話すとき骸亞さんに関することばかり話すじゃない。それで、いい加減骸亞さん離れした方がいいんじゃないかなって思えてきたの。」



自覚はなかった・・・とは言わない。

実際、鈴さんからも指摘されたことがあるし、骸亞さん本人にも「俺にべったりしすぎだ」と言われたことがある。

けど・・・



「けど、私は・・・。」


「ああ、そっか。飛鳥は骸亞さんのことが好きなんだね。」


「・・・?うん、好きだけど?」



突然虎ちゃんが納得しだしてびっくりする。

だが、言っていることは至極当然のことだった。

もちろん骸亞さんは家族なのだから好きであって当然のはず。

しかし、私がした反応に対して虎ちゃんはなぜか頭を抱えた。



「あー、なんでこの子はこんなにも鈍感なんだろう・・・。」


「ん?どういうこと?」


「ああいいわ。このことは忘れて。まあでも、そう言うことも踏まえても、飛鳥は鈴姉の妹になっても構わないと思うんだけどね。」


「どうして?」


「飛鳥は骸亞さんと鈴姉、どっちも大事だよね?」



私はもちろんと首を縦に振った。

私にとってはどちらも大切な家族だ。



「けど、今骸亞さんは遠くに行っちゃって普段は会えない。なら飛鳥は骸亞さんから独り立ちしなきゃいけないわけ。」


「う、うん。」



なんだか暴論気味になっている気がするけど、黙って聞く。



「だけど流石に一人じゃ生きていけるわけないから鈴姉の家にお世話になるというわけ。」


「もうなってるよ。」


「そういえばそうだったね。じゃあ飛鳥は今鈴姉の家で暮らしていてどう思った?」


「どう思ったって?」


「もちろんそこで感じたこと。鈴姉の想いとか私達の出会いとか。」



私は骸亞さんと別れてから今日までのことを追想する。

そこで鈴さんのある一言を思い出した。



『お姉さんとして頼ってね。』



それは私が鈴さんの家に暮らすこととなった日に私に言った言葉だった。

だが私は今日まで、基本的に自分でほとんどのことをこなしてきていた。

別にそれは悪いことじゃないけど、鈴さんにとってはもっと甘えてほしかったのかな・・・。



「まあ最終的に決めるのは飛鳥だから。私が言えるのはここまでかな。」


「ありがとう、虎ちゃん。」


「私的には鈴姉の妹になってほしいかな。飛鳥の『お姉ちゃん』って呼ぶ姿を見てみたい。」


「そんなこと言って、もし私がそれで考え方変わったらどうするの?」


「土下座して謝る。」


「なら考え変えようかな・・・。」


「すみません、ごめんなさい。」



意地悪のつもりだったのに虎ちゃんは本当に土下座した。



「ああ、ごめん、冗談だから。顔あげて。」



顔を上げた虎ちゃんは笑顔だった。

私もつられて笑ってしまう。

そしてひととおり笑った後で、



「虎ちゃん、私決めたよ。」


「決めたの?」


「うん。だけど・・・」


「だけど?」


「勇気が出ないから、もう少しここに居させてもらえないかな?」


「・・・。」



虎ちゃんは最後まで臆病者だった私にことに呆れたみたいだったが、無言で了承した。

まずは軽い説教から始まり・・・私たちは門限ギリギリになり、竜さんが声をかけるまで一緒に遊んだ。

そして、帰る時



「飛鳥、ちゃんと言いなさいよ?」


「うん、大丈夫だよ。虎ちゃんのおかげで勇気出た。」


「そう。ならよかった。じゃあまた学校で。」


「うん、またね。」



そう言って私たちは別れた。

そして私は次に待つ試練(?)のために家に帰るのだった。




「ただいま。」


「おかえり、飛鳥。」



家に帰ると鈴さんが出迎えてくれた。

多分答えを早く聞きたくてソワソワしていたのだろう。

実際、今の鈴さんは落ち着きがない。



「鈴さん」


「な、何?」


「お話がありますのでリビングに一緒に来てください。」



なんか朝とは真逆の立場になっていた。

もうここまできてしまった。

心臓がバクバク言っているのが聞こえてくる。

鈴さんに聞かれてしまうのではないかというくらいに大きかった。



リビングに行き、私たちはソファに隣り合うように座った。



「鈴さん、お話というのは今朝のことです。」



私の緊張はもう最高潮に達していた。

鈴さんもそんな感じのようで、私が話を切り出した時体がピクッとなっていた。



「鈴さんから養子の話を聞いた時は骸亞さんに対する思いもあったので迷ってました。ですけど、虎ちゃんに相談して答えを決めました。」


「・・うん。」



私は大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。



「鈴さん、こんな私ですけど妹にしていいんですか?」


「・・・え?」


「え、えっと、つまり、鈴さんの妹になりたいです。この家に初めて来た時に鈴さんが言ってくれたことを思い出して・・・。鈴さんに気を遣わず、甘えてもいいのかなって思って・・・。あの、ダメならいいんですけど・・・。」


「ダメなわけないじゃない。・・・あ~、よかった。」



鈴さんは安堵してそのままソファに横になる。



「断られたらどうしようって思ってたのよ。けど、信じてよかった。」


「正直虎ちゃんに相談しなければ断っていたと思います。」


「そうなの?危なかったんだ~。」


「でも今ではこっちを選んでよかったと思いましたよ。もちろん骸亞さんのことも大事ですが・・・、骸亞さんは遠くに行ってしまいましたし・・・。私には拠り所となる人がいなくなってしまったので、断っていたらいつか私は壊れてしまっていたかもしれないです。ですので、私の新しい拠り所としてもいいですか?」


「もちろん。・・・あ、そうだ。妹になるならちゃんと『お姉ちゃん』って呼んでね。」


「お、おね・・もう少し後じゃダメなんですか?」


「だ~め。」


「・・・わかりました。お、お姉ちゃん。」


「さて、話も終えたしそろそろ夕食の準備にしましょうか。飛鳥、手伝ってくれる?」


「はい、お姉ちゃん!」

水星みずほし たいが 14歳


竜の妹で飛鳥の親友。

飛鳥がこの話時点で唯一敬語なしで話せる人物である。

虎自身は骸亞と面識はなく、飛鳥から話を聞いた内容から人物像を想像している。



おまけ~電話~


竜「もしもし、なんだ鈴か。・・・え?お前が相談事なんて珍しいな。・・・ああ・・・うん。ああ、飛鳥の相談事ってそういう・・・いや、こっちの話だ。まったく、少しは飛鳥を信頼してやれよ。だからお前も話したんだろ?・・・・ん。なら大丈夫だな。笑顔で迎えてやれよ。・・・・・ええっ!?勝手に家に飛鳥を養子として迎えさせるようにしてるって・・。それ、飛鳥が知ったら怒るぞ、絶対。」

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