たとえばそんなお話
初投稿です。
初心者がちょっとした出来心で書いた作品です。
「ねね」
「……んだよ」
「アタシ達の関係ってなんなの?」
「……知らんがな」
いきなり何を言い出すんだこいつは。
「友達以上恋人未満?それとも彼氏彼女の関係?」
「お前はどう思うのよ」
「さあ?」
さあ?てお前……
こんな会話を交わしている俺たちの関係といえば、俺……ハルトとこいつ……ハルカはまあ、言ってしまえばただの幼馴染み同士ってだけだ。
俺はそろそろランクアップしたいと思っているのだが。
「アタシが彼氏作ったらどうする?」
「出来んのかよお前」
「そりゃね。この間だって告られたし」
得意げな顔がちょっと腹立つなぁ。
確かにこいつなら作ろうと思えば彼氏の一人や二人いつでも作れるだろうな。
見た目だけならテレビに出てる女優に引けを取らないレベルの美少女だしな。
頭がちょっと残念なだけだ。
「ねね、どうすんの?」
「さあな」
「えー」
「えーてなによ」
「つまんなーい」
つまんなくて結構。
「お前はどうすんだよ」
「どーするってなに?」
「俺が彼女作るっつったら」
「ッ!?」
「なんだよその反応」
つーか、なんちゅう顔してやがるんだよ。
どこぞの世紀末覇者みたいな劇画っぽくなってんぞ。
「ど、どーもしないよ?」
だから、劇画っぽい顔で言われても……その、すごく反応に困る。
「まあ、作んないけど」
「ッ!だ、だよね?彼女なんて作んないよね?」
ぱあっと表情を明るくしてペラペラ喋るハルカ。
……こいつの反応面白いな。
「……ああ」
「なーんだ、驚かさないでよ」
「もういるからな」
「ッ!?」
おお、また劇画。やっべちょっとクセになってきた。
どうすればこんな顔できるんだ?
「……劇画」
「劇画ッ!?なんの話だよッ!?」
「お前の顔」
「酷いッ!?」
だって、ねぇ?劇画だもの。
「……彼女いるの?」
「いる」
「だよね、ハルトに彼女なn……え?いるのォーッ!?」
「いるよ」
サッと顔を青ざめるハルカ。先程からコロコロと表情が変わっている。
「い、いるのかぁ……そっかぁ」
「おお、どうしたそんな真っ白に燃え尽きて」
「燃え尽きてねぇよッ!?」
まあ、こいつのウリは美少女フェイスと一人百面相と鋭いツッコミくらいだからな。
頭わりぃし、運動出来ねぇし、要領わりぃし、女子力低いし……
……あれ?こいつなんか取り柄あんの?
「……ねぇ、なんか今ものすごく失礼な事考えなかった?」
「おおっ御名答」
「ッ!こいつ開き直りやがったッ!?」
まあ、ノリがいいからクラスの連中からも結構人気なんだけど。
「なあ」
「な、なによ」
「俺さ彼女いるんだよね」
「……うん」
相変わらずわかりやすい奴だな。思いっきり顔に出てるし。
俺はゆっくりハルカに顔を近づける。
「……ハルカ」
「な、ななななななによ」
顔が真っ赤だ。クク、本当に堪んない。
ゆっくり、ゆっくりと焦らすように顔を近づけていく。
ハルカは何を勘違いしたのか顔を真っ赤に染めながら目をギュッと瞑っている。
そして、耳元で───────
「まあ、嘘なんだけどね☆」
───────ボソリと暴露。
「……え?」
「まあ、嘘なんだけどね☆」
大事なことなので二度言う。
「う、そ?」
「うぇーい、騙されてやんのォ!うぇーい!」
そして、煽る。
「〜〜〜〜〜ッ!」
すると、ほらっ顔がトマト並みに真っ赤になります。
「もぉおおおおおッ!嘘つくなアアァァアッ!」
「あ、キレた」
「あ、アンタはねぇッ〜〜〜ッ!」
「ねぇねぇ怒った?」
「ッ!もう、知らないッ!」
うわ、マジでめっちゃキレてんじゃん。
ぷんすか怒ったハルカは、俺を置いてスタスタと早歩きで家に向かって行ってしまった。
俺はハルカの背後にそっと忍び寄り、後ろからそっと抱きしめた。
「なあ」
「……な、なによ」
「俺さ、彼女はいないんだよなぁ」
「……ふーん、で?」
「でも、気になってる娘はいるんだよ」
「ふーん、ん?え?うぇええぇえええッ!?」
「そんな驚くか?」
「お、驚いてないし。で?だ、誰なのよその娘」
「教えて欲しいか?」
「べ、別にいいわよっ」
ふーん。そうなんだぁ。別にいいんだ。
「ふーん、なら教えてやんね」
「ぇ」
「いいんだろ?別に」
「ぅえ、ぅぅぅ」
「ん?どーなん?」
「ぉ……ぇて」
「んー?声がちっちゃくて聞こえませぇーん」
「〜〜〜ッ!教えってっつってんのっ!」
「ククッよく出来ました」
そう言いながらハルカをギューッと抱きしめて頭をひとなで、そして耳元で囁く。
「お前だよ」
「ぅぇ?」
バッとこっちに振り返ったハルカを見つめる。
あらまあ、おめめまんまるにして、そんな顔真っ赤にしちゃって……どんだけ初心なんだよ。
弄りたくなっちゃうだろ。
「聞こえなかった?」
「うぇ?ぇ、え?」
仕方ない。
「俺はハルカのことが好きだよ?」
そう言ってハルカの額にキスをする。
「うにゃにゃっ!?」
何その反応、超可愛いんですけど。
「ハ、ハハハハハハハルトがあ、アタシのことす、すすす好きィ!?」
「そうだけど」
「そうだけどって……なんであんたはそんな飄々としてるのよッ!」
なんでって、ねぇ?
「さあ?」
「さあ?って……」
マジで俺にもわからんよ。
「ん、んん、まあ、いいわよ。で、あ、あんたはなに?アタシとつ、つつつ付き合いたいわけ?」
「いや全然」
「ふーん、アタシと付きa……って違うのォ!?」
「おう」
「おうって……」
勿論、嘘だ。
俺はハルカと付き合いたい。ずっと望んできたことだから。俺はただの幼馴染みという関係より上へ行きたい。
だが、それも決めるのはハルカ自身だ。
まあ、付き合わないならずっと───────
「───────ずっと幼馴染みのままだけどね」
パチリとウィンクしながらそう言うとボンッという音とともに頭から湯気を出して顔を真っ赤にしたハルカは、うにゃにゃにゃーっ!と叫びながら走っていった。
……なにあれ可愛い。
さてさて、こんな会話をしているが俺たちは幼馴染み同士という関係だ。
少しばかりランクアップして『ただの幼馴染み』から『幼馴染み兼恋人』にちょっと変わっただけの話。
まあ、変わったと言っても"幼馴染み"の後ろに"兼恋人"がちょこんと着いただけ。
ただ、それだけの話だ。
変わった変わった言っているが俺たちはいつも通り平常運転で、なんら変化はない。
それはこれからも同じ。
そうだろう?
Fin
さて、これは初心者な作者がちょっとした出来心で書いた作品なのですが、どうだったでしょうか?
ちょっとでも良かったと思っていただければ幸いです。