貴族どものクリスマス
平安時代の貴族、今の世のクリスマスを知らば如何ならむ。
中納言、のちの世にてせらるるクリスマスといふものを知り給ひて、本朝もがなと思ひ給ひけり。このこと、左大臣に申し給へば、クリスマスといふものいさ知り給はで、問ひ給ひて、中納言、遠く後の世にて師走の二十五日にする行ひにて、この日志遣ることなど説き奉り給ひぬるを、左大臣、面白きことかなと思へども、これを本朝に例なければいかがせむとて奏し給ふに、上、いみじとて許させ給へば、中納言にクリスマスの儀設けさせ給ひけり。
ここで、中納言の仰すに、クリスマスの志、サンタクロースなる者により遣らむといふことなり。加へて、サンタクロースなる者、赤き衣着たる者なむと。然れども、この頃、赤き袍召し給ふは帝、上皇、摂政関白なりて、畏き御方々なることいふべきにもあらず。故に、緋色の袍を召す五位の貴族つきづきしことならめと思されて、近衛少将を召し給ひ、サンタクロースになさせ給ふ。かくて、皆人クリスマスの急ぎに忙しくなりけり。
師走の二十四日になりて、この日、内裏にくりすますいぶ宴といふものなされけり。雲上人あまた参り給ひて、中納言、クリスマスソングなる曲を吹き給へば、皆もとりどりに遊びののしり給ひ、クリスマスなるもの、いとめでたきものなりとこそ思ひ給へ。
夜になりて、いよいよ少将罷り給はむと、
射干玉の夜もふけゆけば今立たむ皆に届けむめりゐくりすます
と奏し給へば、返させ給ひて、
くりすますさんたの来るを皆人は心もとなく思ひぞすらむ
さて、少将、皆の思ふ人、子らに志したるもの恙無く配り給ひぬれば、皆人おほいにうち喜びて、この後クリスマスといふもの日の本に知らるるやうになりけり。
此度の感想の返信、擬古文にてしてみむと思ふも、擬古文え理解せまじきと仰す御方、「返信は現代語にて」と書き給へば、現代語にて返信せまし。