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ジョルジーの行き着けのBarと小さな生き物

ジョルジーは服を着飾ったマネキンがあるショーウィンドウ越しに自分の髪型を見るとジャケットのポケットから櫛を取り出し、鼻歌を歌いながら意気揚々と髪を整える。

それから彼は「やっぱり俺ってカッコいいべ」と自分の顔を見てニヤリとした後、ふと目線をマネキンの足元を何気無くみた。

するとマネキンの足元で何やら小さな生き物がこっちをみながら手をグーパーグーパーとしていた。


「えっ?なんだべ?」ジョルジーは目を疑った。そこには全く自分が生きた中で見た事がない生き物だったからだ。

「サル?なんだべ」彼は目を擦ってもう1度見る。

小さな生き物は彼を見つめながらまだ手をグーパーグーパーしている。


「なんだべ!変なオモチャだべ」


彼は少し不気味に思いながらももう1度自分の髪型をチェックすると歩き出した。

それから約5分程歩いただろうか。いかにも不良の溜り場ですと言わんばかりの「Death or Death」と言う看板が掲げられたBARに入って行った。

入ってすぐにジョルジーは窓際にいる男を見つけると「よう!ゼットベッド!」と話しかけた。


「久しぶりだなジョルジー!」


ゼッドベッドはカウンターから立ち上がるとジョルジーと抱擁する。


「ゼッドベッドこそ!元気だったべか?」


「おう!最近肝臓がいかれちまってるが身体は元気だぜ!」


「肝臓かぁ!そういやぁーおめぇ酒飲みだったっぺな!」


「おう!酒と女とタバコがありゃあもう何もいらねーよ!」


「あっ?おめぇさ、酒以外なんもねーべや!」


「おう!そうだった!全てを失っていた!わはははは!」


2人は笑いながら会話を交わすと椅子に座った。

座ってすぐにジョルジーは「マスターも久々だべ!俺のいつものあれあるべ?!」

と言って指パッチンをする。


マスターは「あれですかい?」と空のコップをジョルジーに渡した後、バックバーからGoat Milkを取り出し、ジョルジーのコップに注いだ。


「いやー!マスター!最高だべ!これなきゃ俺らの会話始まらねーべさ!流石マスターだべ!」


ジョルジーは嬉しそうに言うとGoat Milkを一気に飲み干した。


「ジョルジー流石だぜ!そのGoat Milkの飲みっぷり!久々に見た!かっけぇぇよ!」


「おう!あったりまえだっぺ!俺のクールでウールな生活はこいつから始まらなきゃ死んでるのも同然だべ!」


そう言うと彼は笑いながら更に続けてマスターに「もう一杯くんれ!」と言う。


「おめぇ!また飲むんか!」とゼットベッド。


「おうよ!今日は久々のおめぇさんとの飲みだべ!無礼講ってやつだぁ!」


マスターはコップにもう一度注ぐとジョルジーはすぐさま飲み干す。


「プハァー!いやぁー!んめぇな!流石ここのGoat Milkは一味も二味も違うべ!」と言ってすぐ様席を立った。


「おう!おめぇのそのトイレいく様最高だぜ!ジョルジー!」ゼットベッドはそう言うとウィスキーを飲み干した。


30分は経っただろうか。ジョルジーはトイレから出てくると「いやぁ。長居してすんまねぇなぁ!」とお腹を摩りながら席に着こうとした。


「おう!何時もの事だから気にすんな!しかしおめぇも罪に置けねーな!こんな可愛いペットどこで見つけやがったんだ!」とゼットベッドがジョルジーを見た。


「えっ?おっ!?なっ?なんだべ?」

ジョルジーは自分の席に着いている小さな生き物を見て驚く。


「こんにちは」


「えっ!?あっ。こんにちは」


「こんにちはって!おめぇのペットじゃねーのか?」ゼットベッドは笑う。


「いや、えっ?なんだべ?」


「マスター。ミルクをもう一杯ください。安心して下さい。お代は彼に任せているので」


小さな生き物はジョルジーを指さすとニコッとマスターに微笑む。


「いや、えっ?ちょ!おめぇ!俺のクールなGoat Milk三杯も飲んでるじゃねーべか!」彼は小さな生き物にツッコミを入れた。


「いやー!お前がトイレで籠城してた時よ、ちっこいのが、入り口の陰でこっちをヒッソリと見てたからよ!ジョルジーの知り合いか?って聞いたら、うん。って答えっからよ!お前の席に座らせてやったんだよ!正確にはつま先立ちだがよ!」ゼットベッドは更に笑う。


「いや、えっ!冗談じゃねーべよ!こんなへんちくりんな子ザルの様な生き物・・・あっ!?おめぇー!ショーウィンドウの!!!」ジョルジーは小さな生き物を見て思い出したかのように驚いた。


「なんだ!やっぱり知り合いだったか!」

ゼットベッドは笑うとウィスキーをゴクリと飲む。


「おめぇさ。あのショーウィンドウから付いてきたっぺか!?」


「着いて来てはいないです。たまたまなんです」


「えっ?たまたま?」


「そう。たまたま革ジャン着てる人を見かけて、たまたま追いかけてみたら、たまたま此処に流れついたんです」


「おめぇさ!たまたまの使い方間違ってるっぺよ!」

ジョルジーはそう言うと、小さな生き物をゼッドベットと挟む形で席に着く。


「いえいえ。本当にたまたまなんです。信じてほしいです。僕、流れ着いたのもそうですが、今だって、たまたま店の扉開いたら、たまたまマスターがいて、ミルクを買おうとしたら、たまたまお金の持ち合わせがなかったので、どうしようかとも思ったのですが、たまたまミルクが置いてあったので、たまたま飲んでみただけなんです!」小さな生き物は悪びれる事なく言い切った。


「えっ!おっ?たまたま過ぎるだろ!神か!おめぇは神か!」さすがに偶然が重なり過ぎる話にジョルジーは小さな生き物にツッコミをまた入れた。

「まぁまぁジョルジー!小さい事は気にするなよ!いいじゃねか!こんなへんちくりんな可愛い小さい生き物なんだから!なぁー?えっと・・・小さい生き物!」ゼッドベットは小さな生き物を孫の様に見つめながら頭をナデナデした。


「ありがとー!ゼペットお爺さん!」小さな生き物はゼッドベットを愛らしいまなこでウィンクをした。

「ワハハハハ!名前も年齢もなんか全部間違ってるがな!」ゼッドベットはそう言うともう一度小さな生き物の頭を撫でた。


「まぁ。なんと言うか、着いて来ちまったのもなんかの縁かもしれねぇべ。今日の所は許してやっちゃわ」

ジョルジーはマスターにGoatMilkをもう一度頼むと小さな生き物にいった。


「そう言えばおめぇに自己紹介してねぇべ。俺はジョルジーっーんだがよ。おめぇさなんて名前だべ?」


「僕ですか?」


「んだ!おめぇ以外誰の名前聞くんだ?」


「僕には・・・まだちゃんとした名前が無いんです」小さな生き物は首を項垂れた。


「えっ?名前ねぇ事はねぇーべ?」


「僕、前に知り合った女性には記憶力料理って言われた事があって、何も思い出せないんです」


「まじか?!」


「本当か?!」


ゼッドベットとジョルジー2人は口を揃えて驚いた。


「おめぇそれは記憶喪失ってやつだべ!」


「はい。なので僕も自分自身が何者かわからなくて・・・折角優しいお爺さん2人に出会えたので名前を決めて欲しいなと思った次第なんです」

小さな生き物は2人をチラッとみるとまた首を項垂れた。2人は悲観的な目で彼を見つめると呟いた。


「名前決めろって言ってもな」


「んだ。そもそも記憶喪失って奴さんに名前決めて良いもんなんべか?・・・おめぇさ、なんか自分の記憶でなんらか、一つでも思い出せる事ねぇーのか?」

「思い出せる事でしょうか?」小さな生き物は天井を見つめてみる。


「ああ。何と言うべか、ほら、気付いたら何か持ってる物とか」


「持っている物・・・そうですね。気付いた時に持っていたのはこのバスタオル見たいな物ですかね?」小さな生き物は自分のお腹のポケットからガサゴソと白いタオルを取り出して2人に見せた。


「タオル?ちょっと見せてくんろ!」ジョルジーは小さな生き物からタオルを受け取ると何かないかと見つめる。


「んー?なんか・・・フォルテ・・・おっ?おめぇさ!ここに何か小さくマジックで書かれてるけどおめぇさの名前じゃねーべか?」

ジョルジーは小さな生き物に黒のマジックで書かれていた文字を見せる。


「フォルテ・フェリーチェ?」


「んだ!フォルテ・フェリーチェ!おめぇさの名前じゃねーべか?」


「おっ?名前発見か?フォルテ・フェリーチェ。良い名前じゃねーか!」


2人は小さな生き物に笑顔で肩を叩いた。


「フォルテ・フェリーチェ・・・ありがとー!僕一つ記憶力を思い出したんだ!わーい!ありがとー!」

小さな生き物はバンザイをすると2人に2秒ずつ抱きついた。


「おお!良かったな!また何か少しづつ思い出せればいいな!」


「んだ!そうだべな!何か少しづつ思い出せたらいいべ!フォルテ・フェリーチェ!」


2人とマスターと小さな生き物は笑顔で感涙の時間を過ごした。

それから1時間ぐらい経っただろうか。

みんながみんな酔いが回ってきだした頃、ふとジョルジーは思い出したように喋りだした。


「おっ!思ったんだべが、フォルテ・フェリーチェ!おめぇ、ちょっと名前長過ぎて言いづらくねぇか?!」


「長いですか?」


「おお!そうだな!確かにフォルテ・フェリーチェ!名前なげーな!」


「俺はなフォルテ・フェリーチェ!おめぇに今名前なげーからあだ名と言うか、省略と言うか、名前を思ったんだべ!」


「ええ。そうなんですか?」小さな生き物は嬉しそうに見つめる。


「フォルテ・フェリーチェ、フォルテ・・・フェリーチェ・・・フォルテ・フェローチェ・・・フォロテ・フォローチェ、チェローテ・・・ロテ・・・ロト・・・ロド・・・ロドリゲス!」


「おっ?ロドリゲスなんてどうだべ!」

ジョルジーは決まった感を身体全体に出す。


「おお!イカしたセンスじゃねーかジョルジー!」ゼッドベットも大笑いすると手を叩いた。


「いや、えっとフォルテ・フェリーチェで良いです」小さな生き物は怪訝な顔をする。


「いんや!フォルテ・フェリーチェもとい!ロドリゲス!こっちの方が絶対カッケェべよ!なぁ!マスター!」

マスターも納得した顔で頷く。


「いや、ちょっとフォルテ・フェリーチェの方が絶対的に良いと思います。ロドリゲスってなんか・・・」


「大丈夫だべ!ロドリゲス!こっちの方が絶対言いやすいっぺよ!」


小さな生き物はもうこの空気はロドリゲスでないと無理だなと悟ると、「まぁこの場では・・・良いです」と泣く泣く呟いた。


それから終始和やかな時間が流れると、夜も遅くなったと言う事で2人と一匹はお会計を済まそうとした。


「マスター!いくらだべ?」


「7500コインになります」


「んなら10000コインでええべ!」


「おっ?ジョルジー!俺の方が呑んでるから俺が奢るぜ!」ゼッドベットはズボンのポケットから財布を取り出そうとした。


「いいべ!いいべ!今日は面白い出会いもあったからここは俺が奢るっぺよ!」


「あの、僕は?」


「いいべ!いいべ!おめぇさ金なんかねぇーだろ?ここは俺に任せるべよ!」


「ありがとう」小さな生き物は笑顔でジョルジーに言った。


ジョルジーは気前よく10,000コインをマスターに出すとお釣りが返ってくるのを待つ。


「いやぁー!今日は本当最高の夜だったなぁ?こんな不思議な縁はなかなかねぇーべよ!」


ジョルジーは小さな生き物を見ると続けて「おめぇこれからどうすんだ?」と聞いた。


「そうですね。まだちょっとわからないです。行く場所もないですし」


小さな生き物は首を項垂れるとマスターの顔をチラッと見つめた。マスターは「10,000コインお預かりしたので、2500コインのお返しですね!」と言ってお釣りをレジから取り出すとジョルジーに返そうとした。


「行くあてねぇなら俺んちにでも泊まればいいべよ!」ジョルジーは上機嫌で言いながらお釣りを受け取ろうと手を出したその時だった。


小さな手がシュッとジョルジーの手の横から機敏にマスターが持っていたお釣りを掴むと物凄い勢いで小さな生き物は店から飛び出した。


「あっ!ドロボー!」

3人はそう叫ぶがその時には既に小さな生き物の姿は闇夜に消えて無くなっていたのだった。


第3章終わり。




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