平和で怠い学校生活
一階のリビングに着くと早速俺は妹の作ってくれた朝御飯を食べた。ちなみに今朝はスクランブルエッグと納豆一箱とご飯それに味噌汁というメニューになっている。俺は早速納豆を混ぜて、ご飯にかけて、味噌汁をすする。
「お兄ちゃんおーそーい、春、もう食べ終わっちゃったよー?」
テーブルの向かいに座っている妹はすでに朝食を食べ終えていて、食器を重ねている。
「そうか、もっとゆっくり噛んで食べないとダメだぞー、む...じゃくて、体が成長しないからなー?」
「おにいちゃん今、胸って言いかけたでしょ!」
「いやいや、まだ言ってないからセーフ!俺は無実です。」
「セーフってなに!?アウトだからね!ひどーいおにいちゃん、春これでも平均なんだからっ!ほら!」
「あーもうわかったから胸を寄せるな、普通に朝食取らせてくれーー。」
俺がそういうとしばらく妹はムッとした顔で俺をジッと見ていた。俺はその姿をチラチラと見ながら食事を進めていた。
「んねー 毎朝思うんだけどさー着替えるの遅くない?毎朝1人でエッチなことしてたりすんの?」
ぶほっ、こいつは何を言ってるんだ。思わず飲んでいる味噌汁吹き出してしまったじゃないか。
「な、なわけないだろ、お、男の支度にも色々あるんだよ。」
「へぇ〜お兄ちゃんの支度には1人エッチも含まれてるんだ。」
妹はニヤニヤしながら頬杖をし、テーブルの下から軽く蹴ってくる。
朝からその冗談はそこそこめんどくさくはあるが、
「だからしてないって。」
といやいやながらも可愛い妹にツッコミを入れる俺、
「怪しいぃ〜まぁそれはそうと春、今日はピアノの演奏を町内会で頼まれちゃっているから帰りちょっと遅くなるけど晩御飯何が良い?」
「帰り遅くなるなら俺が晩御飯作っとくよ。でも演奏会の会場の近くにいつものスーパーの近くどうせ通るんだから1週間分の食材宜しくな、後、カルピスも買っておいて1リットルのやつ、今日特売日だから。」
「お兄ちゃん、やっぱ飢えてんじゃん。」なんなんだそのジト目はーこいつ本気で俺が1人エッチが朝の支度に含まれてると思ってんのか?ははは...流石に冗談だよな?
「妹よ、それはどういう意味だ。」
「まんまの意味だよ〜、ほら早く早くー食べちゃって〜」
妹はそう言ってニコニコしながら両手で頬杖し、こちらを眺めている。
全く毎日毎日からかいやがってーーと心の中で思いながら俺はせっせとご飯を食べ終えて、急いで出発する俺と妹。
今朝も猛暑でとても暑く、家を出てからものの数分もしないうちに、汗がだらだらと流れてくる。しかし妹の隣で歩くと生温い風に揺らぐショートカットのいかにも女の子っぽい甘い香りがほのかに漂っていて、暑さを少しばかり忘れさせる。
妹は地区内でも超有名な女子中学生ピアニストでモーツァルトやらショパンやら、とにかくどんな難曲でも大人顔負けに弾ける。音楽に関しては右に出る中学生はいないほどの天才だ。(まぁ学力はそんなんでもないんだけども) 家事は完璧、そして何より欲深さがないということだ。おまけに顔面偏差値も高いときた。(兄の俺が妹の顔面偏差値がいいと思ってて良いのであろうか、いや、良いということにしよう。)
女子友達が極端に少ない俺の心の内を最大限に表現できる家族とも友達ともいえるそれが俺の妹、春日井春桜だ。
「じゃあね〜お兄ちゃん〜ちゃんと勉強するんだよ〜〜保健室とかでサボっちゃダメだよ〜」
いつものように満点の笑顔をしながら手を振り、そう俺に向かって言った。
「はいはいじゃあなー春、演奏会終わったら迎えに行くからいつもの駅前で待ってろよー?」
「にひっひ〜分かってるって〜」
妹に別れを告げ再び高校の方面に歩き出す。妹とは通う学校の方向が同じなのでいつも途中まで送っている。というか俺がいつ保健室でサボったんだ?
ところで俺の成績はというと、妹よりは少しばかり良い...と言っても平均よりちょっと上。スポーツすること自体は好きだがスポーツ観戦は嫌いというかあまり好まな.....
「なぁバロム、そろそろ体交換してくれよー早くしないと朝限定クエストが終わっちゃうんだよー」
相変わらずゲームしか能無しのぐだくだ天使に対し、
「アルッシュくん、ゲームは控える方が良いですよ。ゲームは1日1時間ですよ、ゲームなんて
体に良くありません。大体アルッシュくんは自分の体の健康を考えなさすぎなんですーそんなんだからお父様に堕天させられるんですよ。」
などと言ってお説教をしている同一人物なのに別人格の悪魔かメイドかわからない女の子(仮)
「おいおい、バロムよ、俺、これでも一応神だぞ?体の健康とかそんなんこの大天使ルシファーが気をつける必要などない!!」
今朝もこんな感じだ。鏡があればこの二重人格...ではなく、別人格はコミュニケーションを交わすことができる、というか側から見ればお母さんとダメ息子の会話みたいな感じだが...
「何言ってるんですか、この前思いっきり地球の最も恐れられてるウイルス、インフルエンザZにかかったじゃないですか。」
あのアルルが急に意味不明なワードを口にした。地球上で最も恐れられているウイルスがインフルエンザぜっと??血液型によってインフルの違いがあるってのは知ってるがインフルエンザZってなに?マジ○ガーZかなにかか?と密かに思った。
「あ、あれはそのなんだ、わざとインフルって奴に体を乗っ取らせたまでだ!!」
アルッシュは胸を張ってそう言ってはいたが、体を乗っ取るとか良くもまぁこいつ堂々と俺の前で言えたな、おまえも乗っ取る側じゃねーかよ。
「とにかく今日は晩御飯までゲームはお預けです。」
「やだぁぁ〜鏡の中何もないじゃん!お前の服と化粧とちっこいテーブルとテレビ、それにお前の下着の入ったタンスしかないじゃんかーどんな下着履いてんのかおまえのご主人様にバラすぞ?」
アルッシュが使う天術はアルルが使う魔術よりもパワーが遥かに上回っているため、俺に取り憑いて二つの人格に分けられた際に、アルルがアルッシュの魔力に制限を施した。そのためアルッシュはどう足掻いてもアルルには勝てない。しかし、今日はヤケに強気を見せている。
「アルッシュくん、今すぐに魔術をかけて鏡から永久消滅させることも可能ですがお望みー」
アルルは左手を鏡の近くまで持って行き、鋭く獣の如く睨みつけてアルッシュを一瞬にして利口にさせた。
「ごめんなさい、今日は大人しくしてます。」
「アルッシュくんたらお利口さんですね〜」
先ほどまでの殺気らしきものを解いたが、それに代わって逆に妙に怖さを感じる、ウソでも爽やかとは言えない笑顔をしている。
「....いやお利口っておまえ、、完全に殺す宣言してただろ、それは口実ではなく脅しっていうだぜアルル」
こいつらは鏡のある所ならば2つの人格同士でこのように会話と転生することが可能。普段鏡に手をかざして且つ呪文をぶつぶつ唱えているが、実際呪文はただの格好だけで、手をかざし数秒待っているだけで転生は可能なのだそう。ならばその無駄な時間をなぜやりたがると、謎すぎて仕方がない。鏡の中の世界も存在するらしいが、アルル曰くスーパーハイテク上級魔術でアルッシュがその部屋から出れないようになってるらしく、しかも先ほども述べた通り、アルッシュ自体は自力でその部屋から外の鏡の世界に出ることが出来ない。可哀想にーいや、可哀想ではないな、自業自得だなこんなやつ。
「アルッシュおまえはもうずっとそん中いてろーアルルの方が役に立つし、邪魔にならないし、大人しいから俺はアルルだけでいいよーお前は一生そこで暮らしてろー」
俺はアルッシュが映る鏡の方は見る気もせず、歩き続けた。
「おいおい、なんだ?この大天使ルシファー様に対する態度は? それにその言い分からして俺が何もしてない、何も出来ない子みたいじゃないか!!」
「「 実際そーだろ!!!」」
俺とアルルが口を合わせて言った。
「まぁでもアルッシュくんが外に出てくれないと情報収集は出来ないのも確かですし、私機械使うの苦手なんで。」
アルルのその一言にアルッシュが反応し、
「そーらみろ!この大天使ルシファー様の手にかかればどんな機械だろうと操作なんてちょちょいのちょいだ!!だから早く出してーおねがーいー」
そんなことをごちゃごちゃとアルッシュが言ってるうちに学校に着いてしまった。全くなんて騒がしい登校なんだ。朝くらい静かに過ごさせてくれよホント。
それで、俺の学校が通っているのがーこの私立天津甕星高校だがー剣道の名門校としてもその他の分野でも全国でも有数の名門私立学校だ。そのため学力もかなり高い方に属される。確か去年は、偏差値66以上ないと入れ無かったはずである。実際俺の中学の成績じゃあ、こんなところに入れるわけもないのだが、剣道のスポーツ推薦でなんとか受かったのがこの学校である。しかし、学校の誰もが俺が剣道を極めていたーーなんて思わないのだろう。何故ならこの俺はとってつもなく友達が少ない!!!まぁーーこんなこと当然胸を張って誇れない上にそろそろ友達を増やさないとまずい。というか女子友も徐々に作っていかなければ俺の学園生活が白紙で終わってしまうーー!!その状況は避けたい。というかその状況になるのだけは断固断る!!
「はぁーー誰か女子が声をかけてくんないものかね。」
自分のクラスに久しぶりに入り、自席に腰を降ろして一言目がこのため息プラスこの発言である。
「よぉアキラお久〜一言目がそれとかアキラらしいってゆーかなんてゆーか〜しばらく見ないうちにまた一段と暗さが増したな、全体的に〜」
このメガネかけ、シャキッとしていてキラーんの効果音が似合いそうな奴は俺の数少ない友達のうちの1人、二宮康太。彼は学園のトップ10位に入る天才の1人で、勉強はほとんどこいつに教えてもらっている。その見た目とナンパ趣味から、俺はたまにキザメガネとアダ名で呼ぶことがある。
「おはよーこーたー。おまえこそそのメガネに輝きが増したんじゃねーか? あれ、そー言えば今日まだ、いいんちょー見かけてないけどいいんちょーは?」
「あーーいいんちょーなら多分いつものをやってるんじゃーー」
そう言いかけた矢先、俺らの学級委員長が全速力で走ってきた何やら彼女の作った犬型ロボットと追いかけっこをしているーー
あれれ....ちょっと待て、かけっこというか....思いっきり俺方面に向かってきてますけど!!??
「ワンワンっっ」
「こらぁーまてぇーーうちのロボワン二号機KUDOU んねぇーお願いーー止まってよー、おいちょっと待たんかいクドウ!!」
大阪弁でクドウとか著作権問題だろ、うちの作者訴えられるんぞ。というか今はそんなことは問題ではなく早くこの犬型ロボを回避しないと!でないと何が起こるかわかったもんじゃない!俺は反射的に全力の小声で、
「アルルゥゥゥゥ」
と叫んでしまっていたがべつに叫ぶ必要無かったのだろう。
アルルは俺が叫ぶ数秒前から攻撃の構えをしていて、残り数センチというところで見事にパーツごと、バラバラに粉砕させてみせた。
「あっちゃーーなんてことをーうちの犬ロボが台無しやぁーーめっちゃお気に入りの試作品やったのにぃーほんまそこのにいちゃん、うちのKUDOUを壊した責任取ってもらうでぇぇーぃー」
相変わらずそのクドウネタを引きずってる委員長、
「いや、壊したの俺じゃないし、おまえの機械製造技術が足りなかっただけだろ。」
と俺は嘆いている彼女に勝手に壊れた理由を誤魔化した。
「そんなはずはないんやけどなぁー、どの部品も改良に改良を重ね、少ない部費を一生懸命やりくりして、汗と涙を拭う日々をこのロボに詰め込んだんやもん。」
委員長は目をわざとうるつかせながらそう言ってはいたが、おいちょっと待て。よくよく思い出してみると、夏休み前に委員長の部室に寄る機会があったから部室に入ってみたけど、未完成のガラクタばっかだったよーなー?よっぽどの飽き性なんだろうな、委員長は。
「まぁーまぁーいいんちょー落ち着いて〜ほらいいんちょーそろそろ授業始まるし、日直の仕事さっさとやったほうが良いんじゃない?」
とキザメガネは苦笑いしながら、委員長の不満を沈めようとしてくれた。
「あーほんま忘れとったわ、今日から学校始まるんやったなー、いやぁここ数日学校泊まり込みで犬ロボやらなんやら開発しててボケとったわ〜どおりでいつもよりわーわーガヤガヤしてる訳やな〜」
といつものスマイルを見せ、せっせと日直の仕事をかたしに行く委員長。
彼女の存在がそもそも愉快で変わり者だが名前がそれ以上に変わっていて八月一日今日夏と書いてやぶききょうかと読む。能天気で奇才、しかし学校ではかなりの有名人の1人。学歴は康太とほぼ同レベル。彼女も学年トップの学力レベルはあるのだが、いつも機械を弄ってて忙しいため、家で勉強をする時間を、機械を弄る時間として使うのが彼女の日常だと自分で語っていたことがあった。彼女は高校入学時に大阪の堺市からここへ何かしらの事情で上京したそうだが、いつもその理由を聞くたび、何故か流されてしまう。まぁ、能天気でも悩みとか訳があるってことなんだと思う。
キーンコーンカーンコーン
チャイムと同時にうちの担任、博打大和先生が入ってきた、ちなみにこの先生もかなり特殊で...
「てめぇーら、新学期だぁぁぁぁ!!!!夏休み明けの新学期ってのはどいつもこいつも弛んでいる時期だ!!!自分のハートにしっかりと帯を締めなおして今日から共に歩んで行くぞ!!!何時も気合いを忘れんなぁぁぁ!!うぇぇぇぇい!!」
・・・でたこの意味わからない声を無駄に張り上げて、まるで応援団長のようなヤンキー風の演説。あ、ちなみにこの先生元は暴走族のリーダーを務めてて改心して先生になったらしいけどこれは流石に教師としてダメだろ...というか改心したのか?これで....うちの堕天使といい勝負だろ...
「はい、そんじゃあ新学期も夜露四苦ぅぅー、今日のスケジュールだが、まずーーー」
すると早速先生は黒板に今日のスケジュールを書き、説明し始めた。今日は始業式が30分行われた後に全教科の復習テストを1時まですることになっている。
こんな感じの担任を改めて目の当たりにすると、早く先生チェンジしてくれよと、今にでも泣き出しそうな気分になる。
「いつみても素晴らしい先生ですね、憧れます」
だが俺の隣でそれを聞いていたアルルは、手を胸の前で重ね、恍惚とした表情を浮かべている。
こいつのツボはよく分からん…。