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いちばん大切なもの

作者: 葉山郁

この話はバルカン民話「いちばんたいせつなもの」をベースにして書いたものです。原作知らなくとも読めます。グリム童話にもよく似た話が存在します。(「賢い百姓娘」)

 そう、それは世界が産声をあげてまだ間もない頃のお話です。

 とある国のとあるお城に、一人の王様がおりました。

 若く何事にも動じない大変頭のよい王様でしたが、それ以上に大変評判が悪い王様でした。

 いったいどれほど評判が悪かったって? いやはや、世に王様は数あれど、この王様ほど民や家臣に嫌われていた方はいらっしゃらなかったでしょう。

 王様は賢者も負かすほどの知者と言われていましたし、力強い方でもありましたから、面と向かって不敬な態度をとれるものはいませんでした。

 でも、他国を訪問されたりまた特に大きな政務がない日には必ずおこなわれる王様の城下視察の馬車が出ると、人々はわざとらしく顔をそらしその先で思いっきりしかめたり、母親の背に隠れた子どもは馬車にむかってこっそり舌を出して目を剥いたりしました。吟遊詩人たちは王様への嫌味をのせた歌をわざとらしくつまびきましたし、それにあわせて素知らぬ顔で口ずさむ者もいました。

 そうして馬車の影が消えるのを見届けてから、人々はわっと集まって王様への不平不満を延々と話し続けたものです。

 どうして王様はそんなに嫌われていたのでしょう。

 まず、残念ながら王様が大変態度が悪い方だったのは確かです。王様は滅多に人に笑いかけることがありませんでした。馬車の中から、玉座の上から、たとえ誰かが話しかけてきたとしても、じろりとひと睨み。それだけでまず、たいていの人間はぐっと言葉を詰まらせます。よしんばそこからなんとか気力を振り絞り話しかけても、王様はその努力を無視するように、ろくに返事もしませんでしたし、答えたとしても一方的に話を打ち切るような素っ気無い話し方をされました。

 はたまたなんの気まぐれか心持ちか、大変珍しく睨んでいない場合なども、ちっともおかしくなさそうなのに口の端だけを曲げた笑み(と呼べるものならば)を浮かべていて、それを向けられた人間は誰でもとてもいやな気分になりました。自分がひどくとるにたらぬつまらぬものとして見下されたような気持ちになるからです。

 また王様が人になされることも、嫌味たらしいことばかりです。自身の頭の良さを鼻にかけて! と町の人々は毎日毎日お互いにひろめあって話し合って王様にたいする鬱憤を高めあっていました。

 そんなある日、街の人々の間にこんな話が舞い込みました。それは王様の定例である視察の最中のことです。王様の馬車がいく街道の脇に、本当に疲れきった様子で座り込む一人の男がおりました。

 王様は馬車をとめて男に、なぜそうしているのか尋ねました。男の返事はこうでした。

「私の家には養うべき家族おります。なのに我が家には、食べ物どころかもう暖をとる薪一本もなく、寒さと餓えが満たされております。なんとかしようとここまでやってきましたが、食料は見当たらず薪をとろうにも腹が減って動けない有様で」

 それを聞いた王様は家来に命じて城から何かを持ってこさせました。家来が急いで持ってきたのは、籠いっぱいの卵でした。王様はそれを家来に渡させながら、馬車からこういいました。

「それを雛にかえして育てればお前の餓えは満たされよう」

 男が何か言うのも待たずに馬車が去っていくと、その一部始終を咎めるような瞳でじっと見つめていた周囲の人々がいっせいに男に駆け寄りました。

 その人々に押される形で男がもらった卵をよく調べてみると、なんとその卵はすべてゆで卵でした。そんなものから雛がかえるわけがありません。餓えた男を前にしてこんなことをするなんてなんとへそまがりで意地悪な王様だろう、と人々は憤慨し満足するまで散々悪口を言った後、男にたくさんの食料を持たせて帰しました。

 王様という方の噂には、こういう話が実に多かったわけです。

 ところが、これだけならば話はここで終わったのですが、数日たって街のものたちは思いがけない続きの話を聞くこととなりました。

 その出来事が起った三日後に、王様が馬車で同じ道を通ったとき。あのとき石に座り込んでいた男が、野原をゆっくり歩いていました。王様が馬車をとめさせると、男は小脇に抱えたざるから何かをばらまきながら大声でこう唱えました。

「煮豆よ、はよう、芽を出せ、芽を出せ」

 馬車からその声を聞いていた王様は、口を開きました。

「煮た豆から芽が出るわけがなかろう。持って帰れば食べられるものを、畑にまいて無駄にしてどうする」

 すると男は答えました。

「煮た卵から雛がかえるなら、煮豆からでも芽は出ましょうよ」

 王様は一言も言い返しませんでした。

 この機知にとんだ返しに、街の人々は大喜びしました。なにしろいくら王様に反感を持っていても、王様と張り合えるような知者は今まで現れなかったのですから、その感激はひとおしです。

 何度も何度も飽きることなく繰り返し聞きたがり、ついには街角の吟遊詩人がそれをもじった歌を作るほど。その中で王様のパートはより意地悪そうで憎らしげで、するりと飛び出るきこりの返歌のくだりは軽快で流麗なものでした。

 さて、この貧しい男はきこりでした。人々が恵んでくれた食べ物で、なんとか元気を取り戻し、森に入って良さそうな木を切り倒すとそれを薪にして街に売りに行きました。

 でも街の人々はこのきこりがやってくると、彼の機知を称え肩などを親しそうに叩くものの、薪などには目もくれずに今度はいつ王様にもういっぱい食わせてくれるのか、とそんなことばかりを聞きたがりました。きこりは戸惑うばかりで何も答えられません。

 やがて日がたつにつれて何もしないきこりに人々の失望は募り、彼が街にやってきても注目されることもなくなり歌も忘れられ、人々はまた王様の個人的な悪口にせいを出すようになりました。

 さて、そんなある日、薪を背負ったまま、きこりが道端の石に座りこんでいると、またそこに王様の馬車が通りかかりました。

 馬車はとまり、窓から王様が顔を出しました。王様はきこりに向かってなぜそうしているのか、と問いかけました。

「私の家には養うべき家族がおります。薪を刈ることはできましたが、餓えに満たされております。私は薪を売ろうと街に出かけましたが、一本も売れない有様で。出かけてきたときの薪の重さは平気でも、それを担いで帰る重さは行きの非ではありません」

 すると王様はその薪を一本よこしてみろ、と言い渡し、実際に一本を手にとってこう言いました。

「お前はこの一本で城中の暖炉に火を灯し、一晩中暖め続けることができるか」

 きこりは黙っていました。すると王様は薪をぽいっと投げ返しました。

「そんな役立たずな薪を買うものはこの国には誰もいまい。重さに嘆くなら、ここに捨てておくがよかろう」

 馬車が去っていくと、その一部始終を咎めるような目で見ていた人々が寄ってきました。なんとひどい言い草だ! と中の一人が気炎をはくと、そうだそうだとそのほかの人々が乗りました。そして人々は先を争ってきこりの薪を一本残らず買っていきました。街や家に戻ったときに、王様の非道を話すときそれがこの薪だよ、と証拠を見せようと思いついたからです。

 実際にこの話に街の人々は大いに盛り上がり、特に王様がじかに手にとって投げつけた薪はたいした人気でした。人々は口々に憤慨して、とんでもない、ひどい王だ、と声を高めあいました。

 王様という方の噂はともかく、こういう話が実に実に多かったのです。

 ところが、これだけならば話はここで終わったのですが、数日たって街のものたちは思いがけない続きの話を聞くこととなりました。

 それから三日後、王様が馬車で同じ道を通ったとき。あのとき岩に座り込んでいたきこりが街道をゆっくり歩いていました。そして大声で何かを歌っているようでした。王様が馬車をとめさせると、歌ははっきりと聞こえました。


 一本の薪で百の暖炉を燃え上がらせましょう。

 百の暖炉をたった一つで消してみせる水差しを用意してくれたなら。


 王様は何も言わずに馬車を走らせました。

 この話を聞いた人々は大喜び。街中の吟遊詩人たちはこぞってきこりのところに押し寄せてその歌を教えてくれるように頼みこみました。

 そうして、同じことが繰り返されたわけですが、街の人々の興奮は今度は簡単に鎮火されるようなものではありませんでした。街の人々は勢い込んで、王様を、もっともっとやっつけてやろう、面前で知恵くらべをして恥をかかせてやろう、と話しこみました。

 その声は大きくなり王城にも届くようになりました。王様の馬車がやってくると人々は勝負、勝負と声高に囃したてるようになりました。その勢いはきこりも巻き込んで、彼はろくろく街にも出られなくなってしまいました。

 そんなある日のことです。王さまが城にきこりを呼び出した、という報が街にぱっと広がりました。それは非公式な対面で場所は王城の庭となっていましたが、街の人々は大騒ぎです。なにしろ王城の庭、それも正門の前の広場ならば柵越しにいくらだって中の様子がのぞけるわけですから。

 街はすっかりお祭り騒ぎとなりました。誰もが期待にふくれあがって、前日から王城前に泊まりこむものも現れました。吟遊詩人はさかんにハープを鳴らしましたし、賭け師たちはせいぜいたくさんの賭け金をせしめようと奔走しました。でもこの公然の知恵比べ、王様の勝ちに張りこむものなどほとんどなかったのですけれどね。

 前日からこの熱狂ぶりでしたから、当日の騒がしさといったら。賑やかしの私から見ても、その中に飛び込むのは少々遠慮したいところです。王城に詰め寄せた人々で道は埋まりその周辺は人の姿で真っ黒になったほどです。

 人々の数多の好奇の視線にさらされながら、柵の向こうの広場で王様はいつもと変わらぬ、不機嫌そうな様子で待っていました。輪のかなり後ろの方から、きこりがやってきたぞ! と声がしました。ただし、若干、その声には戸惑いが含まれていましたが。

 人の輪が少しだけ割れて、できあがった細い道から今や街でもっとも有名になってしまったきこりがやってきました。ただ、彼は一人ではありませんでした。彼の横にフードをかぶった小柄な人影が、青ざめた彼を支えるようによりそっていました。

 門の前までくると、門番がきこりを確かめて二人を中にいれました。じっと穴があくほど眺める人々の前で、また鉄格子がしまりました。するとそこで、きこりにずっと寄り添っていたフードの主がきこりから離れました。きこりは門の前から動きません。心配するような怯えるような瞳でフードの主をじっと眺めています。人々がざわざわと声をあげました。フードの主がひとりで王様に向かって歩き出したからです。

 王様の前までやってくると、そこで立ち止まりフードをとりました。そこから現れたのは、まだ年若い少女でした。いかにも森育ちという素朴そのものの風体でしたが、すらりとした手足に柔らかそうな茶色の髪に、明るい目をしていました。そして王の前でもまったく臆することなく、はきはきした調子で膝を曲げて挨拶をしました。

「お初にお目にかかります、親愛なる王様。私はきこりの娘です。お呼びと伺い参上しました」

「……私が呼んだのは、そなたの父親だったはずだが」

 顔をあげて娘がした返事に人々の目は丸くなりました。

「父が答えた王様への返答はすべて、私が父に教えたものです。どうぞ王様、謎をおかけください」

 見守っていた人々の目はこれ以上ないほど丸くなり、きこりと娘と王様を激しくいったりきたりしました。誰もが呆気にとられて言葉を失っていました。その中で、王様だけがほとんど表情を崩しませんでした。小さく息をつき、口を開きました。

「昨日降った雨の粒の数はいくらだ?」

 人々が顔をしかめて王様を見ました。けれど娘はにっこりと笑いました。

「三日前に王様がお剃りになったお髭の数と同じです」

 人々の視線は今度は娘に集中しました。一拍あいておお、と大きなどよめきがおこりました。

「鳥よりもはやいものは」

「噂です」

「汚されるのは容易いが、拭うにはこの世のどんな布を持ってしても不可能なもの。汚されることはないが、自ら汚すことは容易いもの」

「名誉と誇りです」

「触れることもできぬのに、時には石よりも固くなり、時には綿よりも柔らかくなる。誰も見たことがないのに、誰もがそれがどこにあるかを知っているもの」

「それは心です」

 王様は一拍おきました。立て続けの即答にさしもの王様も次に出す問いを少し考えたようです。すると娘が口を開きました。

「王様、今度は私が問いかけてもよろしいですか」

「……好きにするがいい」

「本当の賢さとは、どういうものでしょうか?」

 王様は答えませんでした。ただたじろいだようにも見えませんでした。

「それは、人の数だけ答えがある問いだ。そなたは、どう思う。本当の賢さとはなんだ」

 すると娘は迷うことなく、荒れてはいましたが細く白い手をそっと大事そうに胸にあてて答えました。

「自分のいちばん大切なものを、いつでも知っているということです」

 そのときの王様が浮かべた表情の意味を、群衆の誰も理解できませんでした。けれど彼らが訝しく思う前に王様はぷいっと背を向けました。

「お前とお前の父親は、しばらく城に滞在するがいい」

 そうして王様はすたすたと城の門に引き戻られてしまいました。群衆はそれをぽかんと見ていました。今のやりとりにどんな意味があったのか、にわかにはよくわからなかったからです。

 でも少なくとも、王様が勝ったわけではないとわかったのでしょう。確かに王様の問いかけに娘は、打てば響くように答えていましたし、その返答に王様が異議を唱えた場面は一度もありませんでしたから。

 認識はじわじわと広がっていきました。そしてある瞬間から歓声となりました。わああああ、わあああああっと波のように声は広がっていきました。たくさんの手が柵から突き出されて娘に向かって振られました。

 人々は娘が凱旋よろしくこちらに手を振ってきてくれることを熱望していたでしょうが、娘はそんな人々に向かって振り返りちょっとすまなさそうにお辞儀をすると、父親と一緒に王様の去っていった方へと歩いていきました。人々は少しがっかりしましたが、娘達とて王様にそう言われたのだから仕方ありません。

 万歳万歳と、彼らの姿が消えるまで高らかに歓声をあげて、その姿が見えなくなると街の人々は口々に今見たことを興奮して話し合いました。その勢いは収まらず、その日は街角も街の酒場も夜も過ぎるまで大賑わいでした。

 さてそれから始まった数週間も、前日や当日に負けず劣らず凄まじい熱気でした。

 ともかくこの国は、芝居小屋の敵役を王様そっくりにすれば無条件でやんやの喝采。子どもたち向けの人形劇でも大悪党の顔は必ず王様がモデル。憎い敵役みんなが王冠を被っているのをちっとも変に思わないのは、世界広しと言えどこの国の子どもたちだけでしょう。

 ただ、いくら悪役に据えても、それをすかっとやっつけてくれる存在がいなければ芝居も劇も面白くはなりません。娘は一夜にしてこの国でもっとも人気のあるヒーローとなったのです。

 すぐに芝居小屋の脚本書きは新しいストーリーを格上げ、人形師は娘の人形をせっせと縫い始めました。吟遊詩人も絵師たちも早さが命とばかりに、娘を称える詩をその姿絵を瞬く間にしあげ、あっという間にこの国で娘のことを謳わぬ街角はありませんし、娘の姿絵を(ちょっと美化されていましたが)おかぬ雑貨屋はない有様。

 そんなこんなで娘の人気は凄まじかったのですが、街の熱気に反して王城の中は静かなものでした。

 初めの頃は娘の姿を一目見たさに柵の前に毎日毎日長い間張り込む人間もいましたが、そうして張り付いてみても娘の姿はちらりとも見えません。不満を滲ませつつも人々は城の中で王様をこてんぱんに知恵でやっつけているのだろう、と話し合い夢想しあいました。



 しかし、しかし、実感された方というのが本当にごくごくわずかなので、あまりわからないかもしれませんが、王様の日々というものは忙しいものです。

 人々は毎日知恵比べ三昧などと考えていますが、王様には本来やらなければならない責務がどっさりとあります。それに比べれば正直なところ知恵比べなどお遊びです。

 だから、王城が静かであったのは、本当に、何もなかったからなのです。

 王様はきこりと娘に滞在を命じたものの、それ以降、呼び出すこともなく顔をあわせることもありませんでした。毎日毎日、たくさんの仕事を黙々とこなす王様の頭にはもう彼らの存在はこれっぽちもないように思えました。(実際にあまりなかったのかもしれません)

 ですので、ある日の朝食のテーブル。向かいあう先に娘の姿があったとき、王様は片目を少しだけ訝しげに開きました。

 ですが、威圧感溢れる王様のそれにさらされても、娘はすまし顔。おまけに何故か王様の前にだけではなく、娘の前にも朝食がおかれていて、侍従たちは当然のように娘にも給仕しております。形が整っているのですから、朝食は始まってしまいました。王様が娘に問いかけられたのは朝食が半分程度平らげられた頃でした。

「お前は?」

 すると初めて娘は顔をあげてにっこり王様を見ました。

「きこりの娘です。王様」

「知っている」

 王様は不機嫌そうに答えました。「私が問いかけているのは、何故、きこりの娘であるお前がここにいるのか、と言うことだ」

「私は王様にお願いしたいことがありましてここに来ました」

「願い?」

 王様の顔は依然として不機嫌そうでしたが、続けました。「なんだ?」

「私にこの城での仕事を与えて欲しいのです」

「仕事?」

「はい。いつまでもなにもせずにお世話になるわけにはまいりません」

「お前たちは客だ。働く必要はない」

「でも、王様。客とは、どういうことをする存在ですか? その家の主人とお話をしたり、食事を供にしたり、そういうものが客なのでは? 私どもは一度もそのようなことをしておりません。となると、私たち親子は王様のお客とは言えませんわ」

「……」

「父はすでに厨房裏手で薪割りの仕事をいただいております。残念ながら私は薪を割るには非力なので、別のお仕事をいただけないかと」

 王様は少し眉を寄せました。でも、結局、意思を翻させるのは困難だと判断したのか、ため息をつき

「城での仕事は多岐にわたる。針子、料理人、洗濯人、掃除人、……好きな仕事を選べばよかろう」

「王様にお仕えするとなれば、どの方もその道の一流の方でありましょう? 私などが混じってはかえって方々のお邪魔になるかと思います」

「……なら、何がしたい」

 その言葉を待っていたとばかりに、娘の瞳がいきいきと輝きました。

「王様のご相談役、ではどうでしょうか。王様のおそばにいて、王様がお仕事で行き詰ったりどちらにするか悩まれたときに話を聞いて、考えを述べる仕事です」

 実際に娘が言うような仕事はありました。ただそれは、普通は王様よりずっと年上の、先代からこの国を支えてきた重臣の方とか国一番のえらい学者様とかがなるものです。それに賢い王様は必要なしと、今現在この城で誰もついていない仕事でもありました。

 ま、何が言いたいかというと、王様よりも若いきこりの娘がつくなど、とんでもない仕事であった、ということです。でも娘はちっともおかしくないように

「その仕事はやったことがありませんので、向き不向きは実際にしてみないことにはわからないでしょう? お勤めしまして私には荷が重いようでしたら、別の仕事を探させていただきます」

 王様は娘を眺めました。初めて門前にあらわれたときから何もかわらず、はじけるような元気と何も恐れぬ笑顔を持つ娘でした。王様はため息を吐き出しました。すきにしろ、と言いました。




 さて、その日から、お城に仕える人々は王様のそばにいる娘の姿に目を丸くさせました。娘がご相談役、という仕事を賜ったということを聞いて、その目はさらに丸くなるばかりです。

 王室顧問とかご相談役とかいう堅苦しい役職名にはまるでそぐわない娘ですが、娘の評判や存在は城の中でも知れ渡っていましたから、それもありうるのかもしれない、と人々は呆然としながらもなんとか納得できました。

 そうして、仕事とは言えあの王様のそばに四六時中いて話し相手になるなどと気の毒に、と娘の境遇に肩を竦めあいました。(王様はこのように城の召使い達にもこぞって嫌われていたわけです)誰だって王様のそばにいると、不機嫌そうな顔を向けられることや冷淡な態度をとられることに、すぐにいやになってしまいましたから。

 でも、娘だけは違いました。どころか娘はなるべく王様のそばにいるように心がけました。外交や街に出る視察などは供にできませんでしたが、はじめの朝のように、王様と朝食を毎日共にすることまで強引に押しきったのです。娘の行動には城中のものがびっくりしていました。

 初めの数日は始終にこにこ笑いながら、王様に話しかけました。何も返さぬこと彫像の如し、と言った王様の不機嫌顔にもまるでめげることなく、目の前に座っている相手が、さも心許して一緒に時を過ごすことが楽しくて仕方ない相手でもあるかのように、娘はほがらかに嬉しそうに振舞っていました。

 そうして次の数日、娘は一変して不機嫌顔で朝食の席につきました。こういう言い方は変かもしれませんが、娘のそれはとっても見事な仏頂面でした。この世の全てを差し出してもこの相手の機嫌をとることは無理だ、と誰をも呻かせてしまいそうなほど。給仕たちは何が起ったと首をおろおろさせ、後からやってきて席についた王様すら気づいておや、と顔を動かさせるほどです。娘のこの鉄壁の仏頂面は数日続きました。

 そうしてさらに次の数日。今度は娘は笑顔でも仏頂面でもない、強いて言えば普通の顔で座っていました。でも王様がやってくると不機嫌顔になりました。王様はその変化に気づいてちょっと眉をしかめました。すると、ここで娘の眉もしかめられました。そのことに気づいた王様が、おや、という顔をすると娘もおや、というように王様を見ました。

 そこで朝食のはじめの一皿が運ばれてきたので王様の顔はいつもの不機嫌さに戻り、そうすると娘もまた不機嫌な顔になりました。

 しばらく向かい合う二人は仏頂面で食事をしていました。

 でも、何度も言いましたがこの王様は元来たいへん頭の良い方で、頭の良い方というのはそれがいい点でもあり悪い点でもあるのですが、一度知的好奇心というものが生まれてしまうと(この「知的好奇心」というのは簡単に言うと「知りたい」「自分の考えがあっているか試したい」と思うことですね)どうにもたまらなくなってしまう性分があるのです。

 王様は娘の方を向いて幾つかの仕草や表情をしてみせました。すると娘は鏡のように上手にそれを返しました。

 自分の予想があっていたとわかって王様が満足しかけたときに、ふと面白いことがありました。それまでは王様が仕草や表情をして、数秒遅れて娘がそれを真似していたのに、突然娘が王様がしていない仕草や表情をし始めたのです。数秒考えた王様がそれをなぞりました。すると娘は正解だと言うようににっこり笑いました。

 こんな風にして娘は、朝食の場で幾つかのゲームを仕掛けてきました。初めのときのように言葉を使わぬ動作であったり、あるときは言葉を使ったあてものだったり。その説明はいつもほとんど口頭でなされることはなかったので、給仕をしている侍従たちにはちんぷんかんぷんなことが多かったのですが。

 そんな感じで朝食では娘は大層積極的でしたが、王様が一人になって執務室で書類仕事をこなすときは、たいてい静かにしていました。王様が特に神経を使う仕事にとりかかっているときは、自分の気配をすうっと消して影のように佇んでいることもできましたし、逆に気分転換が必要そうなときはにぎやかにしました。さしもの王様も疲れを見せたときにはミルクを温めたり、執務室の机に庭園の花を飾ってみたり。

 相談役と言いながら、娘がした助言はほんの少しでした。王様が半ば決めつつもやや自信がなく踏み込みかねている事項を、そっと支えるように後押しするくらいでした。娘はまた城内の者達とも積極的に打ち解けようとしていました。王様と一緒にいる仕事がないときは、城仕えの召使い達で大変なところを手伝ったり、休憩中の輪の中に入って楽しくおしゃべりをしていました。それにしても娘はずいぶん忙しそうしていましたよ。

 まあ結局。そんなわけで相談役としても娘の存在に何か不都合があったわけではなかったんですね。だからまるで反応しない王宮に失望した移り気な世間がすっかり鎮まっても、娘ときこりの父親はずっと王城にいました。




 ところがところが、そんな風にまずまず平和な城とは異なり、国の人々の王様への憎悪は深まるばかりでした。

 きこりの娘というせっかく見つけた鬱憤晴らしも失ってしまった人々は、新たなはけ口を求めてぐるぐるとさまよいました。

 その頃には実は王様のそういった事柄も少なくなっていたのですが、初めから見つけてやろうと睨みつける目には、真っ直ぐな像も歪んで映ります。王様の言動ひとつひとつがひどく誇張されて伝えられました。何気ない一言が、何気ない仕草が、悪い方へ悪い方へと解釈されて広まっていきました。

 王様の馬車の周囲を警護する御付きの乗った馬が、うっかりそこいらをのんきに歩いていた豚の足を踏んだだけでも大騒動。従者がもっと立派な豚を買える値段を持ち主に払ったことなど誰もが無視です。一言の謝罪もしなかった王様の憎たらしい様子ばかりが余計に誇張され捏造されて人々の間に流布しました。わざと大げさに悪く言った者ばかりに問題があるとは一概には言えません。だってそちらの方を望んで聞きたがったのは、結局多くの人々だったのですから。

 ちょうどその頃から、国の警備が厳しくなり、外に出ることへの制限が強くなって人々が窮屈さを感じるようになっていたのも一因かもしれません。他国での不穏な動きが見られるようになった、とちゃんと理由があったのですが、結果的に規制が激しくなったため商売がスムーズに行かなくなり、生活もパッとしなくなりました。

 やがて人々は王様の悪評をあげつらうばかりでは物足りなくなっていきました。だって結局自分達では王様をやりこめることはできないのですから。

 やはり芝居や人形劇の登場人物のようにぱっと華麗に現れて王様をやっつけてくれる明るい存在が好かれるようになりました。その考えが芝居や人形劇にも影響して、様々なヒーローが作られました。特に、とある旅の一座が始めたマックという主人公が人気を博しました。

 マックは長い手足と深い赤髪を持った細面の男で、少し目つきが鋭いものの、その鋭さをもってずばりと王様を一刀両断にやりこめてしまう鮮やかさで人気に火がつきました。それにマックはとてもよく笑いました。楽しそうに爽やかに。笑わない悪い王様とはまるで対照的でした。彼の子どもっぽさも大きな魅力でした。若いのに分別くさい老人のような王様に人々はうんざりしていましたから。

 大人たちはマックの姿絵を家の壁に貼り、子供達にはマック人形が人気を博すようになった頃、ふと三つ先の国の王様のことが人々の話に混じるようになっていました。

 それは赤毛の若い王様の話でした。少し目つきが鋭くて、けれどよく笑う王様の話です。やり手だとも評判でした。

 王様の悪評は相変わらず人気がありましたが、それとは別に赤毛の王様の話は勢いを増していきました。そうしてある地点から、二つの話はひとつになっていったのです。

 ひそひそと次第に声が大きくなっていきました。王様の馬車を見ても人々は今までようにあからさまに嫌悪を向けるのではなく、意味ありげな目つきで見送ってそれから潜めた声で何かを話し合うようになりました。その最後にほうっと何かを思い浮かべて憧れるようなため息をつくことも。

 娘ときこりが王様の部屋に呼び出されたのは、そんなある日のことでした。突然呼び出された二人に向かって、王様は素っ気無くもう家に戻るようにと言い渡しました。

「は、は、はい」

 きこりは戸惑いを浮かべながらもうなずきましたが、娘は黙ったまま王様をじっと見つめていました。いつもはいきいきと明るい娘の瞳に、今は複雑な悲しさと諦めが混じったような色がありました。でも娘は落ち着いた声で言いました。

「王様」

「なんだ」

「わたくしたちは、微力ながらも今までここで働いてきました。その報酬をいただきたいと思います」

 きこりはぎょっとしましたが、王様は表情を変えずにうなずきました。

「いくら欲しい?」

「お金はいりません。この城で私が一番大切に思っているものをいただきたく存じます。それを持ち帰ってもよろしいですか」

「……好きにするがいい」

 それだけ呟いてきびすを返す王様に向かって、娘は深々と頭を下げました。王様が去った後、きこりは頭を下げたままの娘を見ました。声をかけようとしたとき、娘が突然自分の腕に身を投げたので、きこりはびっくりしてかたまりました。

「どうしたんだ?」

 娘は答えるかわりにぎゅっと腕をつかみました。顔をあげたとき、きこりが目にした娘の顔には、それまでで一番強い光が宿っていました。




 王城が火の手をあげたのは、それからまもなくのことでした。突如として平原から現れた軍隊が、何故か開いていた門から街になんなく突入したのです。

 何故か城の門もすんなりと開いて、被害も大変少なく、怪我をした人間もほとんどいないと言った、実に不思議な侵略でした。

 軍を率いていたのは、三つ向こうの国にある王様でした。赤毛で少し目つきが鋭くて、この国の人々がしきりと話していたその人です。

 王様は瞬く間にこの国も城も制圧したのですが、ただ、不思議なことに、城の中にも国のどこにも前のあの、人々に大変嫌われていた王様の姿はありませんでした。家臣たちも知らないと口をそろえて言いましたので、ひとまず前の王様の捜索は打ち切られることになりました。

 慌しい一夜があけて、興奮のあまり眠れない人々が王城に押し寄せました。王城の門は大きく開かれていて、人々は歓声をあげながらそこになだれこみました。ひきりなしに口にされるのは新しい王様のことばかり。そしてこれからの日々の期待ばかりでした。それに十分に答えるように、大勢の人間が王城に招かれました。

 そんな居合わせた人々の前で、玉座についた新しい王様は周囲を見回しました。すっと背を伸ばしたその姿、実に凛々しい王様でした。同時に口元には笑みが浮かんで、ほがらかでした。多くの民衆が許されて謁見室の入り口でその様をわくわく見守っていました。こんなところまで許してくれるなんてなんて気さくな王様だったでしょう。

「人々の生活から不安の種を取り除き平和をもたらすために、反逆者の逮捕は私の名誉をかけて行う」

 人々はうっとりしました。あの王様なら放っておいても大丈夫じゃないか、とふと呟いた人は、急に後ろから誰かに強く引きずられて姿を消しました。

「来年にはこの国は、正式に我が国の庇護に入れよう。我が国は盟主国としてふさわしい国だ。この国の民もきっと満足するだろう」

 人々は変わらずうっとりしています。正直なところ新しい王様が何を言っても、ほとんどの人間がうっとりしていたでしょう。顔をしかめたのはほんの少しでした。でも次の言葉には全ての人々が困惑しました。

「新しい盟主を迎えた祝い金の金貨三枚を全国民は3日以内に献上するように。それと、これから国庫に収める税は今までの倍とする」

 王様のそばにいた、もともとこの国の古い王様の家臣であった人々が恐る恐る声をかけました。王様、素晴らしいご意見かと思いますが、国民や識者の意見も聞いてからではないと、と。すると王様は自信たっぷりに首を横にふりました。

「この国の民が私を選んだのだ。私の意志は国民の意思だ。何か間違ったことを言ったか?」

「し、しかし……」

 王様はにっこり笑いました。

「それ以上異を唱えるなら、首をはねる。それもまた、国民の意思なのだから」

 王様の浮かべた笑みは評判どおりのそれでした。楽しそうで爽やかな、子どもっぽい笑顔でした。でも人々の顔から、笑みは消えていました。



 それからその国には、王城だけではなく街角のあちらこちらに武器を持った兵士が闊歩するようになりました。

 初めの数日は人々は呆然としていましたが、やがて何かおかしいとより集まって話すようになりました。

 でも、それも長くは続きません。人々が話し始めてすぐに、その輪の中に兵士達がやってきて有無を言わさず、集まった人々を王城に連行していきました。抵抗したものは、兵士達に容赦なく殴られ連れていかれました。それを聞いた家族達が必死に返してくれるように頼んでも、王城に連れていかれてから帰ってきた者は一人としていません。

 なぜこんな目にあわせられるのですか、と夫を捕らえられた妻の一人が泣いて訴えると、応対した異国の兵士は、心底馬鹿にしたような目つきを向けました。

「野蛮な国だ。不敬罪も知らないのか」

 ぽかんとした人々に向かって、兵士達は声をそろえて嘲笑いました。

「悪口を言われた王がそれを許し、放っておくとでも思ったのか」

 でも、兵士の言葉に反して、人々はずっとそう思っていました。どうしてかは、おわかりになられると思いますが。

 それからというもの、人々は常に王のスパイである兵士の目を気にしてびくびくと日々を送らねばならなくなりました。また、国の中のありとあらゆるものに重い税がかかるようになりました。新しい王様の本国へ収める貢物の負担も、人々の肩に重くのしかかりました。

 街の楽師は口を噤むか、ひたすらに王様へのおべんちゃらの歌を歌いました。いまやこの国でおおっぴらに歌えるものはそれしかなかったのです。でも、たいがいの楽師はそれも途中でやめてしまいました。誰も聞くものがありませんでしたし、一人で歌っていると自分自身だって途中で泣き出したくなるような惨めな気持ちにかられましたから。

 芝居小屋も軒並み閉鎖、街角の人形劇もいつの頃から現れなくなりました。

 人々はもうマック人形など見たくないと思いましたが、捨てるところを見られた人間が王城に連れていかれてからは、捨てることもできず、結局、何重にも縛った箱の中に閉じ込めて目の届かない場所においておくことしかできませんでした。

 街は少しずつ汚れていきました。ゴミは誰にも拾われずに道端に転がり、誰にも水がもらえず花も枯れて、街全体がすす汚れより惨めになっていくようでした。

 街を馬車で視察するのは、新しい王様も同じでした。窓から王様はいつもにっこりと笑顔を向けていました。それとは反対に人々の顔からは笑みは花が枯れるように消えていきました。




 さて、ここで話を終わらせてもいいのですが(冗談ですよ)ひとつ謎が残っています。

 そう、前のあの嫌われ者の王様はいったいどこに行ったのか? その答えを示すには、この暗い街角から出なければなりません。(これには私も正直ほっとします)

 その答えには――そうそう。いまちょうど、そこの道端にいて、王様の馬車が通り過ぎた後、ひらっときびすを返したあの頭巾の薪売り。あれが見えますね。その姿を追うことにしましょう。(え? 見えませんか? じゃあ想像してください)

 城壁門を抜けて街の外に出た頭巾の薪売りは、街道を少し行った後に横道にはずれ、木々生い茂る森に入っていきました。

 しばらく歩いた先。わずかに開いた木々の隙間に小さな丸木小屋が建っていました。

 小屋の脇で一人の若者が薪を割っています。その手つきは危なっかしい、とまでは言えませんが、生まれつきその仕事に携わっていた者の手つきではないのは瞭然でした。けれど若者は黙々と薪を割り続けています。薄茶色の粗末なローブを着た若者です。

 手馴れていようがいまいがまるで構わず、一つのことに淡々ととりくむ眼差し、あまり変化のない素っ気無い横顔、そう、そこにいた若者こそが前の王様でした。風体はずいぶん変わっていますが、間違いありません。ただ少し面立ちから不機嫌さは抜けて、本来の素朴な若さが頬に宿っているようにも見えました。

 薪売りが頭巾をとり、王様に手をふりました。頭巾の下から現れたのは、王様と知恵比べをしたあのきこりの娘でした。

「ご苦労様です」

 駆け寄った娘に、斧をおろした王様は軽くうなずきました。

「ずいぶん、うまくなりましたね」

「お父上の足元にも及ばない」

 首にかけた手ぬぐいで汗をふきながらそう言った後、王様は娘にじっと目を向けました。

「街で危ないことは?」

「私はただ薪を売っているだけですもの。危険なんてありませんわ」

 言葉だけではなく、娘をよくよく眺めてから判断したように王様はうなずいて、そうして問いかけました。

「王都の様子は?」

「……相変わらずです」

 王様は娘を見下ろしてから、そうか、と呟きました。

 そこで家の扉がひらいてきこりが顔を出し、王様に休憩にしましょう、と声をかけました。言ってから娘に気づいたきこりは戻っていたのか、と言いかけて、その顔に浮かぶ固い表情に気づいたように口を閉じました。




 暗い森の中にぽっとひとつだけ宿った明かり。それは小さな丸木小屋の暖炉の明かりです。手狭で街からも離れた不便な貧しい小屋です。でもここには温かさがあります。食べ物もあります。なによりも自由と安全がありました。ここでは街と違ってどんな話でも声をひそめることなく話すことができました。

 暖炉が照らし出す小さな部屋の中で、娘はぽつりぽつりと見聞きした街の様子を語りました。薪を売りがてら、毎日のように娘は街に行って街の様子をつぶさに見て、それを王様に報告していました。進んでそうしていたわけではありません。そうしなければ危険も顧みず王様が行ってしまうので、娘がそうするしかなかったのです。

 きこりは話のあちこちで顔をしかめたり「そりゃひどい」と相槌をうちましたが、王様は娘の話をじっと黙って聞いていました。そうして全ての話を聞き終えた後、しばらく考え込むようにうつむいていました。

 暖炉の薪がはぜる音だけが狭い小屋の中に響いています。

 やがてゆっくりと王様が立ち上がりました。暖炉の炎に照らされた王様の影は、とても大きい人のそれのよう天井まで届きました。

「あなた方には世話になった。礼を言う」

 王様? と面食らったように見上げるきこりの前で、娘がすっくと立ち上がりました。決然とした顔をしていましたが、炎に照らされてもその頬が青ざめているのが見てとれました。

「行かないでください」

「このまま放っておけば、そう遠くないうちに城に囚われた人々は処刑されてしまう」

 娘が初めて上ずった声をあげました。

「あなたは、殺されてしまいます」

「あなたに問おう。もしどちらも死ぬことになっているなら、国と王、どちらが先に殺されなければならないか」

 答えられない娘に向かう、王様の瞳は静かでした。

「国が殺されるよりも前に、王が殺されなければならない。王がなくても国はあれるが、国のない王などいないのだから」

「その問いがおかしいのです! どちらかが殺されるのを前提にしなければならない」

「こんな事態に陥ったのは私に非があったのだ」

「あなたにどんな非があったというのですか!」

「私は人々に自分を信じさせなければならなかった。理解させなければならなかった。その努力をしなかった。私は独りよがりだった。それに」

 そこで王様は少し目を伏せました。

「少しだけ、思ってしまったのだ。こうまで人々が望むなら、そうしてもいいのではないかと。望む王を迎えさせてやればいいのではないかと。私は逃げたのだ。背負うことからも、嫌われることからも」

 暖炉の太い薪がくずれ、ひときわ大きくはぜる音が響きました。

「駄目です」

 娘の声が震えました。

「駄目です。行かせません。だって、あなたは――私の物です」

「……」

「下さると言ったではないですか。だからいただいてきたんです。あの城で一番大切なものを。あなたは私のものです。勝手に奪わせません」

 こんなに温かな部屋の中にいるのに、娘の身体はぶるぶると震えていました。それも気づかぬように必死に食い入るような視線を受けて、王様は少しだけ眉をしかめましたが、ひくことはありませんでした。

「約束はたがうことになる。すまない」

 娘は気丈な娘でした。少なくとも、気丈にならなければいけないときは見事にそう振舞えるような。でもそのときばかりは駄目でした。娘の膝から力が抜けその場に崩れかけました。震える足を叱咤して、娘はきびすを返しました。

 父親が呼びかけましたがとまりません。寝室代わりの小部屋に飛び込み、父親が作った小さなベッドに顔を強く押し付けました。

 娘ときこりが、城内で作り上げた幾人かの協力者の手をかりて、王様を城から連れ出したのは城が制圧されるわずか一日前のことでした。

 脱出を迫る彼らを前に、王様は抵抗しませんでした。この小屋での、それまでとはまったく違う環境での暮らしにも、不平ひとつ漏らしたことはありませんでした。

 一時は王様は王様であることなど忘れたようにも見えました。自分から言い出してきこりの仕事を手伝うようにもなりました。言葉遣いも柔らかくなり、ふとした拍子に少しだけ気さくな表情が掠めることもありました。娘は幸せでした。とても言い表せないほどに。

 でも、街の様子が不穏になっていくと、王様の心に変化が訪れました。王様は娘の他の話にたびたびうわの空になるようになりました。それでいて街の話だけは恐ろしいほど真剣に耳を傾けました。娘は嫌々ながら街のことを話すしかありませんでした。

 娘の目には、残酷なほどはっきりと事実がうつっていました。街の話をひとつも漏らさぬよう聞く目の前の王様は、安全な森の小屋にいながらその心は片時も城や街の人々から離れることはなく、どころかますます引き寄せられていくのだと。

 娘の食いしばった歯から、小さな嗚咽が漏れました。王様が小屋に溶け込んでいく姿に、その姿が日常になっていく日々に、かすかな期待を膨らませました。でも王様は、娘のものではないのです。なってはくれないのです。彼はいつも王としての立場を選んで娘の元から去るでしょう。そして娘は、王様を返してあげなければならないのです。

 娘はわかっていました。

 でも。どんなに賢い人間だって、わかりたくないものというのがこの世にはあるのです。




 まだ夜も完全にあけきっていない薄暗い中、丸木小屋の前で王様は身支度を整えていました。そこに外套を持ったきこりが近寄ってきました。

 王様に娘の様子を問われてきこりは言葉を濁しました。

「娘がとんだ無礼を」

「いいのだ。私が悪いのだから。念のため、あなたも娘御もしばらくは街に行かぬように。あなた方には感謝している。あなた方が城から連れ出してくれなければ、私はとうに処刑されていただろう」

「……王様。どうか、もう少し、もう少しだけ、お待ちになってください。ご存知でしょう、私達だけでは城からあなた様を連れ出せなかった。あなた様に味方する者もいるのです。今は水面下で数を増しています」

「間に合わない」

「あなた様がいなくなっては、この国の先は真っ暗です」

「いいや。図らずとも自分自身で証明しているのだ。国は民のものだ。民が望めばどうとでも転がる。あなた方は気づいていないだけだ。自分達の力に。あなた方は強くなれる。自分達で変えられる。あなた方の力を私は信じている」

 王様、と呟いてきこりは身を震わせましたが、やがて意を決した顔で膝をつきました。

「王様、どうか。私もご一緒させてください」

「それはできない」

 即答する王様にきこりは断固として首を横にふりました。

「あなた様一人ではいかせられません。それに、私にも罪があります。あなた様のことをずっと誤解していました。ひどいと申しながら、私の心もずっと街の人々と同じでした。娘が私に教えてくれるまで。私が食べ物を与えてくれた人々が優しいと言うと、本当に優しいのは茹でた卵をくれた王様だと。他の人はそれまで何もしてくれなかったと。でも王様は人々に親切を行わせることまで考えてそうしてくれたのだと。薪もそうだと。王城に私達を留めたのも下世話な世間の好奇から私達を守るためだと。いつでも王様はご自分が泥を被っても平気なのだと。本当にそのとおりでした。王様、本当に、申し訳ありませんでした……っ!」

 王様は頭を垂れて肩を震わせるきこりをじっと見下ろしていました。その瞳には悲しみが宿っていました。きこりも娘も誰も自分を責めません。それでもこんな事態に陥ったのは、自分が力足らずであったのだと賢い彼にはわかっていました。王様はその両肩に手をおきました。

「あなたを連れてはいけない」

 ばっと顔をあげて食い下がろうとしたきこりを、王様の瞳の中に宿ったとても深い光が留めました。

「王ではなく一人の人間として言おう。わたしのいちばん大切なものから、父親であるあなたを奪えない」

 きこりが硬直しました。やがて顔を覆った手の隙間から嗚咽を漏らす彼の肩をそっと叩きながら王様は言いました。そのとき、王様の瞳は遠くまだ明けきらない空を眺めていました。

「私は本当に、伝えなければならなかった。私はわかっていなかった。誰かに大切だといわれることが。これほど人の心を救うものだということを」

 そのとき。丸木小屋の影で何かが動きました。




 街に朝がきました。清々しい白い光に照らされながら、街のいたるところにはぴりぴりした空気がありました。誰もが眠れませんでした。新しい王様が明日に告げる、と言われた報が頭にこびりついて離れなかったからです。

 薄々と答えがわかっているからこそ。誰もがそれに思考がちらつくと生唾を飲み込みました。心はいつまでもどくどくと鳴っていました。

 だから広場の鐘ががらがらと鳴らされたとき、誰もが飛び起きました。どんな街果ての家でも眠りこけていたものなどおりませんでした。鳴り続ける鐘の音に、寝起きの足が家の敷居を慌しくくぐりました。

 街の広場の中央には、国の聖堂があります。その入り口の壇上に一人の娘が立っていました。人々は意外そうな顔をしましたが、娘に目をやると誰もが口を閉じました。娘はみすぼらしく、どうということはない風体をしていました。でも、屹然としたその姿は、誰をも圧倒させる気迫に満ち満ちていました。

「みなさん。私を覚えていますか。私は前の王様と問答をした娘です。私の問いに前の王様は答えることはありませんでした」

 娘が張り上げた声は高らかで遠くまでよく届きました。それを聞いて人々は娘のことを思い出し、互いに顔を見合わせました。

「今度は私がみなさんに問いかけます。私の問いは誰もが答えられるものです。だから答えてください。――この国が、誰に脅かされることも奪われることもなく日々を送っていた頃、王冠をかぶっていたのは誰でしたか」

 ざわり、と人々の中からざわめきが生まれました。それと同時に瞳には恐怖が舞い降りました。朝の早い時間でしたから兵士の姿はまだ見えませんでしたが、聞かれればまず間違いなく逮捕される類のことでした。ざわざわと怯えのざわめきは広がっていきましたが、娘はそれに被せるように鋭く次の問いを放ちました。

「この国が、どんな相手への批判も気兼ねなく、決して罰せられることも投獄されることもなく、好き放題に言い合えていたときに、それを許していたのは誰ですか」

 怯えたようにそらされる視線をひとつも許しはしないように、娘の視線は突き刺さりました。

「私達が幸福だった頃に、この国の王だったのは、誰でしたか!」

 それはまさに錐のように尖り、ふさがれた厚い壁に風穴をあける問いでした。けれど受け止めるのは沈黙でした。海の底のように、重い沈黙でした。

 不意に娘の瞳から涙が溢れ出しました。でも、娘はとまりません。小さな身体は燃えていました。万の沈黙に向かって娘は叫びました。

「あなた方は知っているはずです! ずっと知っていたはずです! 誰でしたか! 誰でしたか! 答えて! 誰でしたか!!」

 娘の絶叫が、人形のように立ち尽くす人々を打ちました。顔を振った拍子に透明な涙が散らばって、光の中できらきらと輝きました。なおも娘は声をはりあげようとしましたが、その肩がぐい、とつかまれました。娘はそれを振りほどこうとしましたが、そこに立っているのが誰かわかって動きを止めました。

 そこに立っていたのは王様でした。被ったフードも肩におろした王様が、静かな瞳で娘を眺めて言いました。

「もうやめなさい」

「だって…」

「もう、いい。私は多くの民に理解してもらうことができなかった。王としては失格だ。でも。一人の人間としては……これで十分だ。十分すぎる」

 そうして王様は力をなくした娘の腕から手をはなし、かわりに娘の身体をそっと抱きよせて「ありがとう」と言いました。それを聞いた娘の身体がより一層深い嗚咽に震えました。

「なにをしている!」

 鋭い声が響き、王宮の兵士が角から姿を見せました。兵士達は目をつりあげて、壇上に行こうと群衆を乱暴にかきわけはじめました。王様は娘を背中に隠しそちらに向き直りました。

 でも王様の瞳はすぐに兵士ではなく、自分を呆然と見上げる人々に移りました。人々の顔は、わずかな間にやつれ労苦の影を濃く刻んでいました。王様の顔が苦しげに歪みました。ひとつその喉が震え、躊躇いの後に、悔恨は口をついて出ました。

「すまなかった。私はいちばん大切なあなた方を苦しめた。弱い王だった」

 人々の目が見開きました。兵士達が群衆の波を半ばまでかきわけています。彼らがあげる罵声だけが、沈黙の中をヒステリックに叩いています。

 そのときのことです。

 最前列にいた、まだ十ぐらいの小さな男の子が口を開いてぽつりと言いました。

 おうさまだ、と。

 それは黙する群衆の中に、小さな一滴の雫のように落ちました。そして波紋になりました。おうさまだ、おうさまだ、おうさまだ、おうさまだ、おうさまだ、おうさまだ。

 次々と蕾開く赤い花のように、人々の口が開いていました。視線は壇上に縫いとめられたように動かぬまま。おうさまだ、おうさまだ、と人々は小さな声で、中には口の形だけで、呟いていました。それには気づかぬ兵士達が壇上手前にたどりつき、壇の上の王様につかみかかろうとした瞬間。

 背後から伸びた無数の手が彼らをあっという間に下にひきずりおろしました。それは周囲の人々の手でした。でも、近くにはいなかった人々もみな空に手を伸ばしていました。王様に向かって飛び掛ろうとした兵士を引き摺り下ろそうとして。

 そして奇妙な静けさの中で、人々は爆発しました。

「王様だっ!」

 その言葉が合図でした。家という家の戸が開きました。足という足がそこから飛び出してきました。街角に人々の数は瞬く間に膨れ上がりました。人々は足を踏み鳴らし手に思い思いの物を持って集団は駆け出しました。行く先は王城でした。

 城壁の兵士達は真っ黒な人々の群れを目にして、初めは何がなんだかわからないように目をぱちぱちさせていましたが、理解した瞬間真っ青になって「反乱だあっ!」と叫びました。

 むろん兵士達は慌てて正門を閉めようとしましたが、次の瞬間、城壁の外からあがっている叫びが、背後からもわきあがっているのに気づきました。

 城の地下の台所から、小間使いの部屋から、城で働いているたくさんの人々が、ぞくぞくと湧き出てくるのです。彼らが叫んでいるのも城壁の外にいる人々とまったく同じ言葉でした。

 正門だけではありません。全ての門という門。使用人の裏門、荷を運びこむ通用口すべてにいたるまで、開け放たれました。そこに人々は押し寄せていきました。後から後から押し寄せていきました。

 王城は外から見ても凄まじい騒ぎです。王様と娘がいる壇上からでもそれが聞こえるほどです。王様だ王様だ王様だ、と人々があげるその声は、歌のように轟きのように唸り混ざっていまや国全体を揺るがしているようです。

 喧騒の中で、誰もの中心でいるようでありながら、けれどその実、誰もに置き去りにされたような不思議な隙間の中で、王様と娘は二人きりでそこにいました。やがて娘が目元をぬぐい、ぐず、と鼻を鳴らした後に王様に向かって言いました。

「誰にも見えぬけれど、確かにこの国にあり、大空のよう無限に広がって、いつもこの国を包み守っているもの。それはなんですか」

 王様は答えられませんでした。だから娘がはっきりと答えました。

「あなたの愛です」

「……」

「あなたほどこの国を、民を、愛している方は他にいません。私達、ぎりぎりのところでようやく気づけました。もう一度、私達の王様になってください。今度は私達も間違えないよう、がんばりますから」

 王様は少しうつむきました。彼は自分自身の間違いを知っていましたから、軽々と受け入れるわけにはいきませんでした。

 ――え? 何度も何度も賢いと言っているが、王様は間違った、間違っているじゃないかと? そうですね。王様は間違いました。でも、どんな賢者でも間違わない人間はいません。だから。

 娘の言葉にうつむいていた王様は、自らの名で揺れている街全体を見回し、娘に視線を戻しました。そして今度はしっかりと瞳を向けて、彼はうなずきました。

「その想いに値するように、もう一度、努力してみよう」

 本当の賢さとは、間違いを正そうと、もう一度立ち上がれる者こそが持つものです。



 そうして、まあ事は収まるところに収まりました。新しい王様は命からがら自国に逃げ帰りました。城の牢屋の鎖につながれていた人々はただちに無罪放免として釈放されました。人々は窓という窓を開け放って嬉しそうにマック人形を窓の外に放り投げました。

 焦がれ続けた日常はたちまち戻ってきました。まるで何もかも悪い夢であったかのように。

 でも、前とは同じでないところもちゃんとありました。

 王様の馬車が見えると、前と同じように人々はじっと目をやりました。こそこそともついていきました。前と違ったのはその顔に浮かぶのが探るような猜疑ではなく笑顔で、また王様に面と向かっておおっぴらに声をかける者も多くなったことでしょう。

 しかし、やはり人がなかなか変われないのも一面の真理であって、人々にそうされても王様はすぐには愛想良く笑顔をかえしたり、気さくに返事をしたりはできなさそうでした。けれど、人々はまったく気にしませんでした。もしかしたら、にっこり笑いかえされた方が昔日の悪夢を思い出してぶるりとしたかもしれません。

 王様なりに努力はしていましたので、もう睨んで終わりということは少なくなっていきました。でも、過剰に褒められたり戻ってきてくれたことを感謝されると、やっぱり苦手そうに黙り込んでしまいました。

 困らせてしまったかな、と人々が気を使う目を向けると、王様はそこでふと別の考えが浮かんだように、こうぼそりと言いました。

「私のことは、そんなに慕わなくていい。ただ……その分を、私の妃にまわしてくれないだろうか」

 その返事に人々はびっくりしましたが、誰の頭にもすぐにお相手の姿が浮かびました。だからすぐににっこりして問いかけました。

「おめでとうございます。もうお返事をいただいたのですか?」

「……いや、まだ申し込んでいない」

 それを聞いた人々はすぐさまこのやりとりから始まった顛末を歌や劇にしました。人形達はいきいきと動きましたし、芝居小屋の役者は王様の仕草をそっくり真似て演じました。吟遊詩人が街角ではりあげる歌は特に見事なもので、人々は繰り返し繰り返しそれを聞きました。そして聞く方も歌う方もけたけたと笑いました。――まあ、結局、どう転んでもこの人たちはそういう風にしかできないのですから仕方ありません。

 その歌が国中に響く中、結婚式は行われました。それはそれは盛大なものでした。

 着飾った白馬がひく花馬車は、教会の前でとまりました。わきあがる歓声の中で、花嫁と花婿が馬車から降りたち、明け放たれた教会に向かって歩いていきます。

 でも途中で、ふと花嫁は足を止めてくるりと後ろを向きました。きょとんとする人々に向かって、花嫁は声をはり上げました。

「みなさんに問いかけます。この国にとっていちばん大切なものは、なんですか」

 人々は一瞬顔を見合わせました。そして、あの思い出深い壇上にいる二人を見上げました。やがて人々は笑いながら口々に答えを叫び始めました。その場に居合わせたほとんどの人が叫んでいたと思います。でも全ての答えは同じでした。

 満面の笑みを浮かべた花嫁は、花婿に顔を戻しました。不機嫌顔な花婿の手にくすくす笑いながら手を重ねて、そして若い二人はお互いにいちばん大切なものを手に入れました。



 だから話はおしまいです。




 <いちばん大切なもの>完


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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に素敵なお話をありがとうございました! 最近のお話は心がきちんと書けていないものが多く、読むのが苦痛な物ばかりでした。 異世界とかチートとか最強とかどうでもいいんです。 童話のようなのに…
[良い点] 良かったね!王様良かったね!!! 号泣でした。
[良い点] 私的には構成やテンポもよく、読みやすくて、さらっと読めてよかったです。 とりあえず、うるっときました。 次回作があるのであれば、期待しています。
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