7)術後のもやもや
衝撃波による破砕の後は腎臓が腫れるので無理をしてはいけない。というのは数年前の破砕手術の時に痛い目みたので、入院中と言えどいつあの痛みが来るかドキドキしていた。
とはいえ日帰りで手術する病院もあるくらいなので翌日から普通に食事も摂れるしシャワーも浴びて良い。
この病院は談話室で食事を摂るシステムだった。決められた席に座ると、同じテーブルのおばさま達は全員糖尿病で食事制限のある人たち。私と比べると品数も量も明らかに少ない。
私のお皿を覗いては「それ何?」「いいわねぇ」と口々に言われ、正直食べにくい。いっそ分けてあげたいくらいの圧力。
一人のおばさまが、「前に買い物行った帰りにね、低血糖おこしたことがあって」と話し始めた。低血糖をおこした時は、ブドウ糖や飴玉を食べる等して血糖値をコントロールするのだが、その人は何も持っていなかったらしい。そして「どうしたらいいかわからなくて、ちくわを開けて食べたの」と続けた。
…ちくわは持ってたんだ。
ちくわの不意打ちに何故か笑いそうになったが、おばさまは明らかに私に意見を求めている。糖尿病って大変でしょう、という話なのだと思う。「だ、大丈夫だったんですか」と心配する私は半笑いだったかも知れない。
気まずいから部屋で一人で食べたいと切に思った。
シャワーは予約制で、一人三十分。安全のため、脱衣所も浴室も鍵を掛けてはいけない事になっていた。入浴中に気分が悪くなって中で倒れる人も少なくないらしい。
私は大丈夫だからと鍵を掛けたかったが、もし何かあった時にまずいので小心者の私はルールを守った。
しかしである。“使用中”のふだだけが頼りだったのに、ふだも見ずに入ってくる輩がいた。背中を向けていたので相手の姿は確認できなかったが、きっと次に予約していた人なのだと思う。水音がしない→誰もいない?→ラッキー早めに入ろう、とでも思ったのだろう。
だから、こういう事のないように、ちゃんと予約の時間になってからって書いてあるだろうが!!そもそも予約ボードに私の名前が書いてあったのに。ぶつぶつ。
そんなこんなで入院自体は二泊三日で、予定より早く家に帰る事ができた。
仕事に復帰した私は同じ部署のおっさんに質問攻撃を受けた。前回の手術の時とは違う部署に異動になっていたので、ここのおっさんは結石未経験者。
「お腹の調子、どう?」「石ってでかいの?」「どんな手術したの?」「もうないの?出た?」
彼もまた結石適齢期のおっさんである。いつ自分に降りかかってくるかわからない災難を危惧して色々聞いてきたのかも知れない。しかし、業務中に正面の席から何度も話しかけられ、周りの人もそれとなく会話を聞いているであろう雰囲気は居心地が悪かった。
復帰後しばらく毎日のように石の様子を聞かれ、マタニティハラスメントってこんな感じか、と的外れにうんざりしていた。