2)スピード再発
結石デビューから一年も経たない頃。私は一般企業に転職し、ごく普通のOLとして平穏な日々を送っていた。
右の側腹部に再び違和感が生じた時、はっとした。この痛みは、覚えがある。私は、この痛みを、知っている!…そうだった。尿路結石のことを忘れてはならない。アイツは80%前後の確率で再発すると言われている。この痛みは間違いない…アイツだ。
近所の総合病院の泌尿器科に行くと、ちょうど救急車で運ばれてきた男性がストレッチャーの上で痛みに苦しんでいた。泌尿器科で激痛。もしかしてこの人もお仲間かしら?と思いながら診察の順番を待っていると、中から聞こえる声で確信した。お仲間だ。そうそう、痛いんですよね。わかりますよ。
かくいう私もレントゲンにがっつり映り込むくらいの石が複数存在していた。前のものが出ていなかったのか、新たに生まれたものなのかはわからない。排石しやすくする内服薬を処方してもらって暫く通院で様子を見ることに。
常に座薬を持ち歩き、痛みが出たら入れる。友達とボウリングやビリヤードをしていても、ちょっとアクティブな活動をすると石が動いて痛むので、こっそりトイレに行きスマートに座薬を入れていた。
出先のトイレはなるべく和式を利用し、自分の尿を凝視する日々が続いた。待てど暮らせど石は出てこない。ついに主治医の先生が決断を下した。
「破砕手術をしましょう」。
そして私は、結石破砕の設備のある大学病院に転院することになった。
事情を説明すると、中高年真っ只中のおっさん上司は目を輝かせた。
「私も石持ちなんだよ!!!!」
「そ、そうなんですか…。」
やっぱりこういう年代の人がなるんだ。
「乗った?救急車。」
「いえ、歩いて病院行きました。」
「へぇ!強いねえ、やっぱ女の人はさ、子供産んだりするから痛みに強いんだなぁ。俺なんか痛くて救急車よ」
急に“俺”って。そして声がでかいです。
「若いのに珍しいねぇ、中年に多いんだけどね」
知ってます。
「酒飲みと小太りがなる病気らしいよ」
「はは…」
黙ってくれ。
決して悪い人ではない。結石予防と排石を促す漢方のお茶を教えてくれたり、自分が破砕手術をしたときの体験談などを聞かせてくれた。
「痛ぇ所をさ、物差しか何かでパチーン!っと打ち付ける感じなんだよ。これがまた痛ぇんだ」
…。
ただ、デリカシーがないだけ。きっと、彼に悪気はない。