冒険者
冒険者。
それは最終神極世界(ラグナレク=エンド)に住む人々に対するひとつの線引きである。とかず姉は口火を切った。
生活に必要な金額を得る為に働く労働者や一般人とするならば、冒険者は職人、研究者など様々な形で仕事をする人々を指す。
例を挙げるならノワイエなら『裁縫師』、ブリッツなら『鋼鉄技師』と言った形で職人という部類のクラス名が入る。
かず姉の『案内人』は前者だが、彼女自身は冒険者としても生活していた時期があったそうだ。
次に、ランクだ。これをクラス名と組み合わせるのがその人のステータスとなるようだ。
上から順にS、A3~1、B5~1、C5~1、D5~1。アルファベットの5段階に加えて数字の段階を加えた19段階評価が世界基準として普及している。
これはギルドに対する功績が関係しており、アルファベット毎に昇級試験が行われる。
これを当てはめて考えると、かず姉は『案内人B5』19段階評価中、上から5番目。何気に高い。マジかよと言ったら拳骨いただきました。いてぇ。
次点で知るブリッツは『鋼鉄技師C2』19段階評価中、上から13番目。結構離れてるな。
そして、ノワイエに至っては『裁縫師D5』19段階評価中、上から15番目。まさかの最下位である、誠に以て遺憾であり抗議すべきだ。
ついでに、かず姉が調べてきた人物には俺も興味があった。
佐居 臥威『絶対者』ランクが無いのは、規格外との事。聞いた直後に昏倒した。なにしてんだコイツ。本当になにしてんだ。
佐居 夏姫『炎獄帝(プロミネンス=エンプレス)S』なにこの夫婦、怖いんだけど。馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの?
ヴァイス ウィスタル『国王直轄近衛聖騎士(パラディン=ロード)C5』 あのオッサンも冒険者だった時期があるらしく、騎士となる以前のランク自体は固定されたままクラスが上がったとのこと。
ここでまでで判ったのは、クラスは職業名や肩書き、二つ名が付く事。ランク自体はあくまでもギルド貢献値であり、ギルドを介さなければ上がらない為に戦力の明確な差にはならないという事。
親父が母さんだけでなく、灯衣菜に泣かされてる辺り、俺の中での最強は母さんか灯衣菜となった。なにそれ怖い。
こうなると気になるのはランクの平均値である。しかし、俺の世代は厨二精神溢れる多感な年頃な為にランクに幅が出ているらしい。なんだよ、厨二精神溢れる多感な年頃って、ただ厨二病拗らせてるだけだろ。かゆっ。俺は違うんだからね。
「まぁ、大体はその歳の子ってCランクの壁にぶつかる時期なのよね」
「はぁ、そうなんですか……」
そんな年寄りみたいな風に言わなくても、いかん、睨まれたぞ。別に何も考えてませんよ?
「はぁ、じゃないわよ? ましてや君達って世界的に注目株でもあるんだし、それを気負いなさいってわけでもないけど……ついでに言うなら、キョウ君。君は一番の注目株よ? 少なくともAランクオーバーはしないとダメね」
「うへぇ……」
脳裏を過ぎるのは有名人の子供、いわゆる二世タレントって奴だ。来訪者ってだけで充分なのに、勘弁してくれよ本当に……って、うん?
「なんで俺なんです? そりゃ、あんなんでも『創世者達(フロンティア=フォーティーン)』のメンバーらしいですけど」
「え? そこまで知ってて判らないの?」
なんでアホの子を見るような目をされるのか。確かにアレはアホだが、俺は違うぞ?
「オジサン、貴方のお父さんが『創世者達(フロンティア=フォーティーン)』のリーダーよ?」
「……ふぅ」
視界が一気に暗くなり、俺は二度目の昏倒。受付カウンターに頭を強打する事になった。




