神極最終世界
道すがら、不意に口を開いたのはノワイエだ。
「京平さん。この世界は初めてという事なので、ギルドに着くまで軽く説明しようと思うんですが」
「出来ればお手柔らかに頼む」
この世界どころか他の異世界も行ったことないよ。
まぁ、無言のまま歩くというのは、存外辛いものだ。この街どころか見るもの全てが初めてな俺はどちらかといえば例外だけど、確かに空気が重いままは嫌だ。
「では、まずはこの神極最終世界の成り立ちからお話しましょう」
と、いう訳でノワイエ先生の屋外授業の始まりだ。
神極最終世界。
これは神王国デウスヘイナード、帝極国アルテインペリオという2つの大国と、様々な小国からなる世界の総称である。
2つの大国は古くから何度となく戦争を起こしていたが、十数年前に起こされた戦争を最後に和平を交わした。
永きに渡る戦争は、愛すべき民に深刻な被害を及ぼし続けるだけであると、現代の両国王は、それに終止符を打ったのだ。
以降、両国は手を取り合い。 英雄達と共に戦争の根源ともいうべき存在の象徴を討ち滅ぼし、誰もが来ないであろうと思っていた平和を実現させた。
「はい。ノワイエ先生質問です。戦争の根源ともいうべき存在の象徴とか抽象的ですけどなんなんでしょうか?」
まったく以て長ったらしい、魔王を見習え魔王を。たった二文字だぞ。大魔王なんて偉そうな肩書きですら謙虚に思えるわ。
「それを説明するのは構いませんが……お身体は大丈夫ですか?」
「このくらい大丈夫、でも今後生きる上で必要のない知識なら言わなくてもいい」
身構えて聴こうとすると返って過敏になる。天の邪鬼な体質には辟易しながらも、ベストアンサーで応える事が出来ました。思わぬ妙案には自分を誉めて上げたい。
「それでは……それは憎しみを産み、生物に住む。悠久を喰らい、弱さに潜む友であり敵。『不変不朽なる永久存在(パーフェクト = エターナル)』……はっ!!」
何かに気付いたらしいノワイエがこちらを振り返る。そこで彼女は見るだろう。
弱々しく膝を付く俺の姿を……
嘔吐までいかない吐き気、失神までいかないが朦朧とする意識、あと全身の痒み。酷いもんだ、話を聞いただけでこれだぜ?
「ノワイエ……とりあえず、そういうのは余裕でアウトだ」
「ごめんなさいっ!! つい、熱が籠もってしまって……大丈夫ですか?」
「大丈夫。ちょっと休めば治る」
「はい……」
まだ人通りがないのをいいことに、道端に座り深呼吸を繰り返す。まずは落ち着いて、心を無にするんだ。座禅でもするように――
「…………」
「……あの、さ」
目を閉じながらでも、不思議とノワイエが落ち込んでいるのが判るような気がした。
「は、はいっ!! なんですか!?」
「なんていうか……俺のこういうのは、あまり気にしないでくれると助かる」
立て板に水が如く出てくる言葉を、俺は半ば客観的に聞いていた。お手柔らかにと言っていた癖に、でも下手な慰めの言葉なんて考えても仕方ないし。
「変に気を使われても、お互いに疲れそうだしさ。そういうの、なんだろう……嫌なんだよ、もう……」
そして、言葉を紡ぎながらも脳裏を過ぎったのは……"アイツ"の事だった。
まったく、腐れ縁ってヤツは厄介だ。大体何を考えてるのか判ってしまう。嬉しい事、嫌な事、面白かった事、つまらなかった事……余計な気なんて使ったら、それこそ直ぐにバレてしまうというもんさ。
お互いに、大体はバレてるんだよな。鈴音。




