毎日大変です!
「おい! シャーリー!」
三人で話し合っていると、カウンターから厳つい声が飛んできた。
声のした方向を見ると、そこには体格のいいレスラーみたいなおっちゃんが、腕を組んでこちらを睨んでいた。
「いつまで遊んでる! さっさと働け!」
「はひっ! す、すみませんー!!」
言うやいなや、脱兎の如くシャーリーはおっちゃんの所へ駆けていった。
「はは、シャーリーさんは賑やかな方ですね」
ムサシさんは声を上げて笑う。
「ええ、いたらいたで騒がしいですが、いなくなると寂しくなるんです」
おてんば設定は健在だった。
「それで、カペラの街から次の街へ行く期間ですが……」
三人で会議した結果、出発は一ヶ月後となった。
この一月、ムサシさんは僕に徹底的に剣術を仕込み、大抵の事じゃ死なないレベルにまで引き上げてくれるという。
その間、シャーリーは街で情報収集、必要な品を買い揃える。
シャーリーに関して言えば、魔法は中級クラスの物が使えるので、訓練をする必要はない。
「それから、なるべく自分たち三人以外とは関わりを持たないようにしましょう」
国王を討伐するということは、当然僕たちは反逆者になる。
これは避けようのないことなので想定しているけど、その時顔が割れていると行動できなくなる。
「そうですね。そのほうがいいかもしれません」
国民は反国王の人がほとんどなので、旅先で匿ってくれる可能性は高いけど、用心するに超したことはない。
「それじゃあ英太君。明日からみっちり仕込みますから、覚悟してくださいね」
「挑むところです!」
★★★
……挑むところだ! と、言ったはいいけど……。
ムサシさんの指導は凄く厳しかった。
普段が温厚なだけに、このギャップは驚きだった。
「痛てて……」
日が落ちてから2時間ほど経過した。
修行を開始してから3日、全身が痛いです。
普段室内で働いているだけに、この運動量は堪えるものがあるなあ。
おまけにシャーリーも張り切っちゃって、僕が怪我する度に回復魔法を使うせいで、ムサシさんも遠慮をしない。
「それじゃあ明日は実践です。外に出てみましょう」
1週間後の夜。稽古が終わった直後にムサシさんが突然言い出した。
「実践……ですか」
「ええ。と、言ってもそんなに強い魔物じゃないですよ」
ムサシさんはそう言ってるけど、大丈夫かなあ……。