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作戦会議 Ⅱ

「お願いします!」

そして床に膝づき、頭を下げた。


「ちょ、何ですかいきなり」


「自分を、貴方の旅のお供にさせてください!」

ん?


「自分は、この街で剣術を教えているムサシという者です」

頭を下げたまま自己紹介をするムサシさん。


「実は先日、国王の派遣した軍によって、自分の大切な弟子が全員連れ去られたのです」


「ッ!」

恐らく、軍の増設に向けての人員確保のためだろう。


「それだけではありません。自分はもともと『ケートス村』出身なのですが、その故郷も王によって潰されたのです……それも、奴の気分によって!」

言った途端、テーブルをおもいっきり叩いた。

悔しさや悲しさが混ざりあった、切ない音が酒場に響く……が、その音も周囲の声に溶けて、この場にいる三人にしか伝わらなかった。


モブキャラのはずだったが、こんなにも惨い過去があったなんて。

創作といえども、みんなこの物語の中で生きているのに変わりはないんだな。


「ですからお願いです。王への復讐と、弟子を取り戻すため、自分を仲間に加えてください!」

そのお願いに僕は、


「もちろんです! ムサシさんみたいな剣士がいたら、このパーティーは百人力です!」

と、ムサシさんの肩に手を添えサムズアップする。


「ちょ、ちょっと待ってください!」

そこに割って入ってきたのはシャーリー。どうしたと言うんだろう。


「英太さん本気ですか?! ムサシさんはシナリオには出てこない、イレギュラーな存在ですよ!」

僕の耳を引っ張り、店の奥へつれて行く。意外と力が強い! 痛い!


「ほ、本気に決まってるよ! 僕は剣なんて握ったことがないし、君だって戦闘では後方支援がメインでしょ?」


「う……それは……」


「それにムサシさんは人に剣術を教えられるんだよ? 戦い方を覚えないとこの先やっていけない。あの人は僕たちにとって重要な登場人物(キャラクター)だよ」

今のまま旅に出たら、間違いなく即死する。

シャーリーも同じような事を考えたのか、少し悩み、


「……しょうがないですね。ムサシさんも仲間にしましょう」

心なしか、シャーリーの声のトーンが落ちた。多分、ムサシさんをあまり信用していないのだろう。


無理もない。ムサシさんが加わった時点ですでにシナリオは書き換えられているんだ。

今のシャーリーは、アドリブで演劇をするような状態と思えばいいのかな?


「それでは改めて、よろしくお願いします!」

僕、シャーリー、ムサシさんで席を囲み、再び会議に戻る。


★★★

「なるほど、お二人は幼馴染みで」

簡単な自己紹介を済ませ、これからの方針を練ることになった。


ムサシさんには申し訳ないが、僕が異世界からやって来て、しかもこの世界を創ったことは伏せておいた。


変わりに、僕とシャーリーは幼馴染みで、国王の圧政によって殺された、もう一人の幼馴染みの仇をとりに行くため、旅に出る……という設定にした。

設定に設定を重ねるって……違和感あるなあ。


「でも恥ずかしながら、剣術の心得が無くてどうしようかと思っていたんです」


「ははあ、それで自分を」


「いえ、決して利用するために仲間に加えたとか、そういうのではないんです」


「お気になさらず。力を求めるには当然のことです。では、討伐に向かう前に、英太君には一通りの剣術を教えましょう」


「ありがとうございます!」


「こちらこそ、ありがとうですよ」


「? どうしてです」


「弟子を失ってから、自分の心には穴が空いたような気分になってまして……こうしてまた教えられるのが、何よりも嬉しいんです」


「……必ず、あなたの教え子を全員連れて帰りましょう」


「ッ! ……はい!」

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