作戦会議
「で、どうする?」
勇者になると引き受けたはいいが、何をどうしようかさっぱりだ。
「英太さん作者なんですから、チート的な力とか使えないんですか?」
む、確かにそうだな。
「試しになんか派手な魔法を使ってみてください!」
派手、と言われてもねぇ……。じゃあ、
「顕現!!」
と右手を突き出し叫ぶと、その手には刃渡り五十センチほどの両刃剣が鞘ごと出てきて握られていた。
「おー! 凄いです! 流石です! 早速魔法が使えましたね!」
シャーリーは興奮した面持ちで、パチパチと拍手をくれた。
「顕現と言ったら大魔法師レベルじゃないと使えませんよ!」
試しに刃先で軽く親指の腹を切ると、血が出てきた。見た目だけじゃないみたいだな。
「じゃあ早速この魔法でミサイルでも創ってお城に打ち込めば「ダメだ」……え?」
顕現させた剣をテーブルに置き、立ち上がる。
「シャーリー、ダメだよそんな卑怯な手を使っちゃ。僕はこの物語を最後まで書きたいんだ。これは僕の我儘だけど、きちんとした終わりを書く旅、付き合ってくれないか?」
真剣な目で、シャーリーに語りかける。
するとなぜか、彼女はぼーっとした顔になり、若干頬も赤らんできた。
「あ……ごめん、苦しんでるのは君たちなのに勝手なこと言って」
「……嬉しいです」
ちょっと潤んできた瞳で、シャーリーはボソッと言った。
「私たち、作者さんにこんなに愛されて……ありがとうございます! 私、英太さんの期待に応えられるよう、精一杯頑張ります!」
彼女も席から立ち、すっと右手を差し出してきた。
「ああ、よろしくね」
僕はその手を、固く握り返すのであった。
★★★
「で、本題に戻るけど……」
今が、原作の何話までかによって何をすれば良いかだいぶ変わってくる。
「今は、レン君が私と最初に出会った街にいます」
てことは、ここは『カペラの街』か。
「うーん、この辺の出来事はイマイチ思い出せないけど……」
「レン君は毎回、ここで装備を調達してましたよ?」
そういえば、この街は小さいながらも物流が活発で、物価が高い分ある程度の物が手に入る設定だったっけ。
「じゃあとりあえず、装備を調達してから次の街に行こう」
「はい!」
そうなると、武器はさっき顕現させたばかりだからいいとして、まずは回復薬が必要になるな……。
と冒険にかかる費用を見積もっていると、背後からすみませんと声をかけられた。
「はい?」
しまった。国王討伐なんて話をしていたから目をつけられたか?
警戒しながら振り向くと、そこには袴を着た侍みたいな男性が立っていた。
黒い髪を後ろでに縛り、腰には長い日本刀を提げている。
「お主たち……まさか国王を討伐しに行くのか?」
侍の瞳が鋭く光る。
ゾクゾクするような殺気が背後から放たれる。
これは……いきなり戦闘か?
テーブルの上に置いておいた剣を手に取り、出方を窺う。
最初に動いたのは侍の方だった。
腰に差していた刀を鞘ごと床に置いてって……え?




