僕、勇者になります!
書けそうな気がして新しく書き始めます。
同時進行でやろうと思います。
ライターってこういう職業かなーと思って書きました。もし、ライターさんに詳しい方がいらっしゃいましたらご教授願います。作品作りに活かしたいと思います。
「はろはろ、英太さん」
「ん?」
おかしい。さっきまで自分の部屋にいたはずなのに、今はどこかの酒場らしき場所にいる。
「こんにちは」
そして僕の目の前にいるのは小柄な美少女、しかも巨乳。
「あ、あの……ここはどこで?」
じっくり周りを見回すと、ここは昔、よく遊んだゲームの集会所に酷似していた。
「あれ? まだ気付かないんですか?」
目の前の少女は長い赤髪を揺らしながらずい、と近づいてきた。
「ほら、あなたが昔書いた小説の一つにあったじゃないですか、ここ」
……へ?
さっきから何言ってんだこの娘は。
「ごめん、ちょっと話が飲み込めないんだけど」
「だから、あなたがこの世界を創ったんですよ」
え、ええええええええ!?
★★★
僕はフリーのシナリオライターをやっている。
仕事もたまーにきているが、消費者に知られているというほどではない。
主な仕事と言ったら、まあ美少女ゲームの個別ルートだったり。
後は、ライトノベルが書きたくて、ちょくちょくプロットを練っては本編書いて、出版社に持って行っては落選しての毎日だった。
「思い出しました?」
「うん、まあ少しね……」
僕が現在いるのは、学生の頃最初に書いてみた作品、『アスタリスク』の中だった。
内容は王道のファンタジーで、小さな村で育った主人公が、民衆を苦しめる王を倒すべく冒険の旅をする。
途中、主人公は目の前にいるメインヒロインの子……シャーリーと出会い恋に落ちる。というベタな展開だ。
「懐かしいなあ。あれを書いたのはもう五年も前のことだよ」
あの頃は純粋に物を書くのが楽しくて、ひたすら机に向かってた。
「はい。英太さん、本当に楽しそうでしたよ」
シャーリーはにこにこしながら僕の話に賛同する。
「けどあの原稿、途中で無くしちゃったんだよねえ」
学校から帰って早速書くぞっと意気込んでいたら、いつも置いていた場所に原稿がすっぽり抜けていた。
「また一から書き直すほど殊勝じゃなくてね……結局最後まで書けなかったんだ」
ごめんね、とこの五年間言えなかった事を口にする。
「いえいえ、お気になさらず。今からその物語を完成させるんですから!」
え?
「いやー、英太さんが途中で物語放棄したせいでずっと大変な目に合ってるんですよ」
あー、そういうことか。
「私たちは物語の中で生きています。だから、基本的に歳をとらないし死ぬことも無いんです。王様の圧政にずーっと苦しめられるのはもう嫌なんですよぉ!」
シャーリーもストレスが溜まっているのか、テーブルをバンバンと叩きながら訴えてくる。
「だったら、主人公と一緒に倒しに行けばいいじゃん」
「何度もしましたよぉ……けど、英太さんが書くのを止めたとこまで行くと、意識を失って最初からになってるんです。三回目辺りからレン君も嫌になって実家に帰っちゃったし……」
まあ普通そうなるよね。
「で、シャーリーは今は酒場の看板娘として生計を立ててるワケか」
「はい。でですね、さっきもう嫌だ! と強く想ったら、目の前に英太さんが現れたんです!!」
んなアホな……と言いたいところだが、現に僕がここにいるんだから否定できない。
「で、王を討伐しに行こう、と」
「そうですそうです!!」
「けど、今まで何度も失敗してきたんでしょ? なら僕が出ても変わらないんじゃないかな?」
「舐めないでください」
ちっちっちと、シャーリーは右手の人差し指を左右に振った。
「英太さんは作者です。なら作者の行動がこの物語に刻まれるはずです!」
んー、まあそうかも(?)しれないけど。
「お願いです。私を……私たちを救ってください!」
その言葉で僕ははっとした。
確かにこの世界は作り物だ。けど、ここにいる全ての者たちを苦しめているのは他でもない僕自身だ。僕には責任を取る義務がある。そして何より、
元 の 世 界 に 帰 り た い。
「わかった。僕が勇者になる!」
シャーリーが、なかまにくわわった。




