幽霊?との出会いは男子トイレで。
涙香高校を合格した俺は。とりあえず今日から料理の勉強を始めることにした。今勉強してるのは調味料についてだ。こんなにあったとは全然知らなかった。できないなりにも料理科にはいるので、少しは勉強しておかないと。大変なことになるような気がする。
明日は入学式前の事前説明会がある。個人個人と先生が話をするそうなのでクラスの人たちとは会えないそうだ。
先生ってあの女の先生だよな?
……不安すぎる。
翌日
自宅から歩いて十五分。自転車でもいいのだが、初めての通学は歩きたいと思った。
十五分歩いて涙香高校についた。
この学校は普通科と特別科(料理科)の二つの科がある公立高校だ。
右側と左で校舎は繋がってるが学科が違う。
右の大きい方が普通科で左の小さい方が料理科だ。
まあ、明らかに人数は差があるので当たり前なのだけど。
玄関に入るとすぐに右と左に分かれている。
貼り紙で料理科生徒はこっちと書いてあった。
左の方へ進むと次々と貼り紙が貼ってあって。
調理室1と書かれたところで終わり、ここに入る、と書かれていた。
俺は少し緊張を持ちながらドアをノックした。
「はーい」
あの面接での先生の声がした。
不安もあるがとりあえず知っている人ということでの安心感もあった。
「失礼します。」
俺はゆっくりとドアを開けた。
「おお‼︎来たな問題児!」
女先生はすごく嬉しそうな顔で言った。
てかいきなり問題児扱いかよ…。
「こ、こんにちは。」
「今日はお前と会うことを楽しみにしていたんだぞ!」
「そうなんですか。」
「なんだよもっと嬉しそうな顔しろって。それにそんな緊張しなくていいからさ。敬語じゃなくてもいいし。」
女先生は一人で喋り続けているが、俺はどうしても聞いておかなければいけないことがあった。
「……質問があるんですが。」
「…ん?なんだ?」
「…なんで俺は合格できたんですか。」
「私が面接官だったから。」
即答して来た。
どういうこと?
「そんな困った顔するなよ。
だから今回は私が面接官だったからで違う人だと100%落ちてたな。」
「じゃあなんで……。」
「この学校は真面目なやつしかないんだよ。特にこっちの料理科の方は。」
そりゃあそうだ頭のいいやつや面接で受かったやつしか入れないんだから。
「でもなそれだけだと楽しくないと思わないか?だって料理するんだぞ。
だからお前を合格させた。」
「……は、はあ。」
「お前がクラスの雰囲気を変えてくれればいいさ。そして楽しく料理の勉強をすればいい。」
「ちなみに担任は私だから。」
ニッと笑って微笑む女先生。
ちくしょう可愛いじゃないか。
なんか泣きそうになって来たし。
「とまあそれはいいということで、今日来てもらったのは、入学する前に個人の料理レベルを見ておきたいということで、来てもらったということで、早速料理作ろうか。」
「あんまり下手くそだったら、楽しく料理作るどころか、初日から二人きりで補習な。
嬉しいだろう二人きりだぞ。」
嬉しいわけあるかよ。
さっそくこの先生には心の中で敬語を使うのはやめた。
てか…まずいな。
料理って何作らされるんだ?
得意料理は卵わり!と言ったものの何回か割ったことあるだけだし。
ひとまずいったん逃げよう。
「すいません。ちょっとトイレ行って来てもいいですか?」
「別にいいけど。逃げるなよ。」
この先生、察するの早すぎるだろ。
俺は苦笑いして調理室をでた。
in涙香高校トイレ
どうしよう初日から補習は絶対に嫌だ。
クラスで浮いてしまう。
でも料理したらすぐバレるし。
うーんうーんと便器に座って悩んでいた俺。
次の瞬間俺の目の前にぼーーとした何かが現れた。
俺は考えがついていかず。固まっていた。
え?何これ?
その何かはだんだんはっきりして来て正体もわかった。
女の子だ。
それも一応知っている女の子。
「今、あなたが何に困ってるのかはわかります。助けに来ました。」
「………ちょっと待って…。」
俺は頭に手を当てる。
「………まず君は誰だっけ?」
「忘れたんですか!病院であなたの財布を拾ったはずなのですが…。」
「…ごめんごめんそれははっきりと覚えてる。……えっと名前は?」
「神山 紫絵里(こうやま しえり )と言います。そういえば名前は言ってませんでしたね。」
背中ぐらいまである髪を揺らして彼女は微笑む。
すごく可愛い。
まあそれどころじゃないんだけどね。
「……あのさ……幽霊?なの?」
「これはですねとりあえず今の試験が終わったら説明します。」
「とにかく、私はあなたを助けに来たのです。早く戻らないと関係なしに補習になってしまいますよ。」
「それはそうだけど。助けるってどうやって?」
かわりに作ったりしてくれるとか?
まず物にさわれるのか?
俺意外にも見えるのか?
どんどん疑問が湧いてくる…………
当たり前か。
「さっきのやりとりは見ていました。
なのであなたに隣でアドバイスをしたいと思います。」
「…料理できるのか?」
とりあえず今はこの試験を合格するしかないと腹をくくった俺は彼女を頼ることにする。
「いえ、できませんが知識ならあります。なんせずっと病院にいたものですから、本などで。」
それってほとんど役に立たないじゃないか。
……でも知識があるだけ俺よりましか。
「先生に見られたらどうするんだ?」
「あなた意外には見えないと思います。」
「……そうなのか?」
どんどん疑問が増えるばかりだが流石にトイレにこもりすぎた。
このモヤモヤする気持ちをなんとか押さえつけて、彼女に、じゃあ任せたぞと伝えて、俺は調理室1に向かった。