乙ゲーの友人Aですが、放棄して自分の人生を謳歌します。
初投稿です。未熟者ですがよろしくお願いします。
ここは乙女ゲームの世界だ。
それに気がついたのは私が小学生に上がる前だった。両親とともにお昼ご飯を食べに車で出かけていれば、見慣れた風景に見慣れた学校、そして見慣れた学校名を目にした瞬間全ての記憶が頭の中で蠢きあった。
急な頭の痛みもだが、自分が転生者だと気づけば幼いながらにパニックになり泣き叫びそしてぶっ倒れた。
両親はいきなりのことでさぞ驚いただろう。それからというものはすごい過保護になったのだが、私自信諦めている。だって仕方がないだろう。子供がいきなり叫び、泣き、倒れるのだ。心配しない親のほうが珍しい。
しかし、転生者として自分を思い出せばすんなりと思考回路が通常運行し、結構気ままに人生を謳歌している。
この世界が乙女ゲームの世界だと気づいたからといってなにかをするわけでもなく、自分の人生を無駄にしないように必死で自分磨きに将来設計を頑張った。
そして、入学したのは前世で乙女ゲームの舞台となる『彩鏡学園』サイキョウって思うでしょ?私もただのウケ狙いだろと思うけど、名前の通り(漢字は違うけど)最強と呼ぶのに相応しいほどの学校なのだよ。
学問もスポーツもたくさんの特待生を集め、国内最大級のマンモス校なので、知らない人なんていないんじゃないの?って言うぐらい有名な高校なんだよ。卒業生は一流企業や有名大学も欲しがるほどの人気っぷり。この学校を出ているだけで勝ち組だと言える程の学校なんだよ。
そんな学校に入学したのさ、私は。
だって乙女ゲームの舞台だろうとなんだろうと、この学校に入れば人生安泰って言われているんだよ?入るでしょ、普通。
転生しているおかげで勉強はとくに困らなかったし、転生者と自覚してからはとくに勉強とか頑張ったしね。余裕で入れましたよ。中学の時生徒会にも所属してたから内申も良かったしね。
そして、クラス分けを見れば乙女ゲームのヒロイン神崎 優華と同じクラス。もちろん攻略キャラも一緒ですよ?解せぬ。
それでも、我関せずで自分のやりたい事を優先してやっていればいつのまにかヒロインとは友人になり、付きまとわれる羽目に。
よく考えたら私ヒロインの友人Aだったわ。
すっかり自分のことで忙しくて自分がゲームに出てくるキャラだって忘れていたけどね(笑)だって、乙女ゲームの友人Aとかってモブじゃん。
悩んでるヒロインの背中を押したり、攻略キャラにヒロインの居場所を教えたり、当て馬にされたりといいとこないでしょ?なにが楽しくてそんな時間の無駄を過ごさなくていけないんだ。と常々思いながらもヒロインの話をスルーしていたら、いつのまにか付きまとわなくなってきたのよ。
私はそれをこれ幸いと、ヒロインに気にせず自分の人生を謳歌していたらある日、ヒロインに呼ばれたのさ。
めんどくさいと思いながらも呼ばれたカフェに行ってみると、ヒロインの他に攻略対象者の男性陣がズラーーーーーって並んでいたわけよ。しかも、外テラスで。
近づきたくない、関わりたくないと思うでしょ?だって明らかに逆ハーなんだよ??他の人がチラチラ見てるんだよ?そんな中知り合いですって近づきたいか!?私は嫌だ。
ゲームに逆ハールートがあるのは知っていたが、実際に見るとは思わなかったし、リアルで見るとドン引きするわけですよ。
「あ!こっちよ!私の親友が見たいって言うから連れてきちゃった♪」
ヒロインの彼女が楽しそうに言うので私は小さくため息を吐く。いつから親友になったのだ。ここ数週間まともに会話もしてないはずだが。しかもこんな注目の前で呼ばないで欲しい・・。
「へーコレが。」
「優華の親友って割には地味だな。」
「こら、そんな風に言うもんじゃないですよ。」
「会長の言い分も分かるがな~。」
「・・・優華に釣り合ってない・・・。」
目の前には乙女ゲーム攻略対象者のテンプレである、生徒会の皆様にクラスメイト(ちなみに、上から俺様、腹黒、似非紳士、チャラ男、無口キャラ)、が一堂にこちらを好奇な目で見るが、私は気にせず頼んだコーヒーを飲む。
「みんな失礼だよ!!ごめんね」
ヒロインはすまなさそうに謝るが、目が笑ってる。つまり、これはヒロインの予想通りの展開だと。
いい性格してんじゃねーか・・。このクソビッチが。
「いいえ、お気になさらないで?」
腹の中で怒りを覚えるがそれを表に出すことなくニッコリと笑みを向ければ、ヒロインは面白くなさそうに顔を顰める。
「そうそう!今日はいいお知らせがあるの!!」
「いいお知らせ?」
「そう!あのね、明日合コンがあるの!でも、私はみんなに行くのダメだって言われちゃったから代わりにどうかなって思って!他校の生徒なんだけど、美紀ちゃん彼氏いないでしょ?だから代わりにどうかなって♪」
申し遅れました。私暁 美紀と申します。以後お見知りおきを。
さて、どうしたものか。合コンに誘うことで自分が周りのイケメン達にどれだけ愛されているかをアピールし、私には彼氏がいないと決めつけ、それを代わりに行かせることで優しい人アピールですか?
うん。ぶっちゃけ性格悪すぎて関わるのも嫌になります。しかも、目が『あんたみたいなダサ子が合コンとかウケる~』とか聞こえそうです。え?被害妄想?実際この人は私を馬鹿にした目で見てきてますけど??たぶん被害妄想ではないですね。
「ゴメンなさい、合コンは遠慮しときますね。」
少しだけ申し訳なさそうに言うのがミソだ。
「なんで!?もしかしたらカッコイイ人いるかもしれないよ?!」
この食いつき方なにか企んでるのか?
「そうだぜ!せっかく優華が誘ってやってるんだぞ!」
「優華の代わりを務めるのは役不足だが、優華を合コンに行かせるわけには行かねぇんだ、さっさと引き受けろ。」
「無理を承知でお願いしているのですが。」
「そうそう、素敵な男子とお近づきになるチャンスだよ~俺らには劣るだろうけど~」
「・・・行ってきて。」
こいつらは、どれだけヒロインに夢中なんだ。人の意見無視してヒロインのわがままを実行しようとするなんて馬鹿か、馬鹿なのか!!
「せっかくですが「美紀?」」
一応生徒会で先輩方もいらっしゃるので失礼の無いようにやんわりとお断りしようとすれば自分を呼ぶ聴き慣れた声が。
「圭吾さん。」
自分に声をかけてきたのは大人の爽やかなイケメンさんで、高級なスーツを身に付け醸し出す雰囲気に周りの女性の視線が痛い。
「こんなところで会うなんて奇遇だね?寄り道かい?」
「えぇ、クラスメイトとそのクラスメイトのボーイフレンド達です。」
ボーイフレンドって言い方古いが、彼氏たちですとも言いづらい。むしろ彼氏かどうかもわからんし、無難な言葉を選んでみた。
「そうか。もう遅いから帰ろうか。送っていくよ。」
圭吾さんは爽やかに微笑み私の手と荷物を手に取りスマートに私をそばに引きつけた。
「美紀ちゃん!!このイケmじゃない!!この素敵な男性はどちら様!?」
今イケメンって言おうとしたろ。しかも、目がハートになってるし。とことん見境ねーな。
「この方、三島 圭吾さん。私の婚約者です。」
私の言葉に唖然とするヒロインに少し優越感を抱きながらもそのことは決して表に出さない。
「三島って・・あの三島グループの!?」
攻略対象者の一人が驚愕の表情をするのでニッコリと微笑んでおいた。
圭吾さんは国内の有名グループの一つ三島の跡取り息子だ。不動産から始まり、飲食店、アパレル関係と幅広く取り扱っており、最近ではショッピングモールなども検討中らしい。
圭吾さんのおじい様が会長を、お父様が社長を務め、圭吾さんは専務として後継者として勉強中だ。
「・・なんで、そんな人がこんな女を・・ヒロインは私なのに・・。」
ヒロインの言葉に圭吾さんは少しピクリと反応するがヒロインは気づかない。
むしろ、私のことを下に見てるってその発言で断定できましたよ。しかも、予想通りこのヒロインも転生者か。まー予想は出来ていた。だってイベントの遭遇率半端ないもの。
普通あそこまで遭遇するか?ってくらい遭遇してた。取りこぼしなんてないぐらいに。
「彼女とはパーティーで知り合いまして、そこで一目惚れしたんですよ。話してみればとても頭の回転も早く知性的でとても気が合いましてね。彼女をなんとかモノに出来たので、渋る彼女をなんとか説き伏せ、逃げられないようにと早々に婚約させていただいたんです。」
圭吾さんの言葉に周りは唖然。まぁそうだろうね、この見た目で一目惚れするとかどんだけ趣味悪いんだと思われているのだろう。
「パーティー?知性的?一目惚れ?なにそれ・・。」
圭吾さんのいう意味が分からないと言わんばかりに呟かれるが、圭吾さんはイタズラをする子供のような顔をする。
「美紀は彩鏡学園を入試トップで入学してますし、毎回テストは1位のはずですよ?それに美紀はウチのグループと並ぶほどの大手IT企業のご令嬢だ。外見だって、その辺りのモデルよりも全然美人だしね。」
そう言いながら、圭吾さんは私の地味さを醸し出している、お下げ髪とメガネを奪いとる。
うん。言いたいことは分かるよ。なんで学年トップを知らないんだってことでしょ?ウチの学校は元々人気のある人や実力がある人を学園が入学する前に生徒会に勧誘するんですよ。それにより、新入生挨拶なんてものはその生徒会の人から選ばれるんですよ。そして、テストの結果も一般の学校みたいに順位が発表されるわけでもなく、自分の成績表に順位が書かれているぐらいで、特に誰が一番かとか分からないようになってるんですよ。
もちろん、私も生徒会の推薦はありましたよ?お断りしましたが。1ヶ月も粘られましたが、なんとか諦めてくださいました。ヒロインにより腑抜けになってしまってからは先生方に泣きつかれましたが私は知りません。
私もお嬢様だったのでお偉いさんのパーティーには出席しますよ?マナー?ちゃんと完璧にしております。伊達に転生者しておりませんから。
学問だけでなく、教養やマナー、習い事にスキンケアなどに全力は尽くしております。おかげで、どこに出ても恥ずかしくないほどのご令嬢であると自負しておりますし、枝毛?ニキビ?なにそれ?ってぐらいにお肌もツルツルのツヤツヤです。髪の毛だってキューティクルですよ?天使の輪?常識です。
そんなハイスペックな自分を隠しながら学園を通うには訳があります。
私は高校生に興味はありません。
前世でそれなりに年齢を重ねたせいか、自分と同年代なんて恋愛する気にもなりません。自分を隠さず学園に通うとモテてしまうでしょ?え?自惚れ??でも、ストーカーの被害が30件超えた時点で私は自分を隠して生活することを決めました。
社交界に出るときだけ思いっきりお洒落します。鬱憤とか晴らすためではないですよ?
なので、8つも上ですが話も合うし圭吾さんとお付き合いするのはとても勉強になりますし、楽です。
私の素顔をみて唖然としているヒロイン、攻略対象者たちにほほ笑みかければ真っ赤な顔をされました。が、そのすぐに圭吾さんに抱きとめられました。
「美紀、あんまり微笑まないで。」
圭吾さんの言葉に独占欲を感じますが、この状況を作ったのは圭吾さんだと理解してますか?
圭吾さんに腰を抱かれエスコートするかのように優雅にその場をあとにし、圭吾さんの愛車の助手席に押し込まれました。
「明日から送り迎えをするから。」
「圭吾さんはお仕事忙しいでしょ?一人で大丈夫ですよ。」
「ダメだ。美紀の素顔をみたんだアイツ等もストーカーになるに違いない。」
「・・・・私の素顔をみれば全員がストーカーになるなんてありえませんよ。それに、素顔を晒けさせたのは圭吾さんですよ?」
「あいつら美紀のこと馬鹿にしてた・・。ムカつく。」
圭吾さんの子供のような言葉に呆れながらも嬉しさがこみ上げてくる。
「ありがとうございます。でも、私の大事な人が私を知って下されば結構ですから。」
そう言いながら微笑めば圭吾さんはハンドルに沈み込んだ。
「早く結婚してぇ、美紀と一緒に暮らしてぇ、美紀を俺のものにしてぇ・・。」
圭吾さんの言葉にクスクスと笑いが込み上げてくる。
「高校卒業まで待ってくださいね。浮気しない限りは私はあなたのものですから。」
「美紀以外興味ねぇよ・・。」
「ふふ、信じてますよ。」
圭吾さんの拗ねた声に笑顔で返し幸せだと感じていた。
翌朝、圭吾さんをなんとか説得し一人学校に通うと、攻略対象の皆様が私を校門で待ち受けており、一堂に挨拶をされその後しつこく追いかけられた。
圭吾さんの言った通りになったのは言うまでもない。なぜだ。
お読みいただきありがとうございました。




