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近接戦では剣士タイプの方が強いですよ?(仮)&(真)  作者: 墨人
(仮)第三章 学園祭~クラス対抗戦~
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対抗戦終了

 委員長が生み出した三つの球体は風に流される風船のような動きで黒間先輩の方に漂って行った。


「一発逆転の砲撃でもしてくるのかと思ったけど……また妙な物を出してきたわね」


 怪訝そうに球体を見やる黒間先輩。

 妙な物、とは私も思った。失血のリスクを冒してまで魔力の回復を待ち、そこから出してきた術にしては見た目が頼りないこと甚だしい。


「委員長、あれって何?」

「それを説明してたら実行する前に失血死しそう」

「ごめん、私のことは気にせず続けて」

「そうさせてもらうわ。『打て』」


 攻撃のための一言呪文。黒間先輩が反射的に身構えたのは当然委員長に向けてだった。

 でも光弾が発射されたのは宙を漂う光球からだった。

 黒間先輩がこれに対応できたのは、正体不明の術として注意を払っていたからだろう。


 初撃を防がれた委員長は続けざまに『打て』を連続詠唱する。そして術の発射は三つの光球のいずれからか行われる。黒間先輩にとっては三人の魔術使いを相手にしてるのも同じ状況だった。


「魔力の供給とかどうやってるのか気になるところだけど……」


 黒間先輩にはまだ余裕がある。的確に障壁を展開して委員長の連撃を防ぎつつ、冷静に観察までしている。攻撃の起点が三箇所に増えたくらいでは黒間先輩の対応力は超えていなかった。


「人のことを非常識と言っておいて三条さんも大概ね。オリジナル呪文作るのが得意なのは知っていたけど術で発動体を作ってマルチアタックなんて」

「でもこれくらいでは先輩には通用しませんね」


 そもそも黒間先輩は数人かがりの攻撃を完全にシャットアウトするだけの技量がある。攻撃の起点を三箇所に増やしたとしても、それだけで打ち破れるわけがない。

 委員長もそれは承知していた。


「慣らしはここまで……『打ちまくれ』!」

「なっ!? 全部!?」


 三つの光球――発動体から同時に『打て』が発動した。三十近い光弾がいっせいに黒間先輩に襲いかかり、障壁と激突して派手なエフェクトを散らす。


『打て』を三つの発動体から同時に発動させる『打ちまくれ』(この安直なネーミングは正直どうかと思った)をさらに連続で撃ち続ける委員長。防ぎきれなかった光弾の直撃を受けて時折先輩の体が揺れる。さすがの黒間先輩も委員長の連射速度に対応力の限界を超えたみたいだった。


 でもこの勝負、このままでは委員長に分が悪い。

 経験者として言わせてもらえれば、光弾は一発あたりの攻撃力が低い。格闘技経験の無い素人に殴られた程度、と私は位置づけているくらいで、数発当てたところでそれほど深刻なダメージを与えられない。このまま続ければ時間こそかかっても先輩を倒すことはできるだろうけど、今の委員長にはその時間が無い。失血はそろそろ限界を超えようとしている。


「委員長、このままじゃあ……」

「次で決めるわ」


 思わずかけてしまった声に、委員長は短く答えた。失血で視界が怪しくなったのか、かなり目つきを悪くして先輩を見据えている。そして委員長は右腕の切断面を圧迫止血している障壁を解除した。再び出血エフェクトが激しくなるけど、防御に専念している先輩は気付かない。


「『打ちまくれ』……そして『貫け』」


 たぶん意図的に着弾点を密集させた『打ちまくれ』で委員長と先輩の間にエフェクト光の壁が生まれていた。その壁に向けて光の槍が突進する。


 黒間先輩がその槍に気付いたのは、もう手遅れなタイミングだった。数枚の障壁を咄嗟に展開したのはさすがの手際といえるけど、貫通力に特化した形状の『貫け』はその全てを貫き、先輩の腹部に突き刺さっていた。


「やった! 委員……長?」


 委員長に賞賛の言葉を送ろうとしたら、そこにはもう委員長の姿は無かった。最後の一撃を放った直後、失血死判定を受けたのだ。


「エフェクトをブラインドにして本人が攻撃、か。やられたわね」


 先輩はがっくりと地に膝を着いている。制服のお腹の辺りから激しい出血を示すダメージエフェクトが出ているけど、実際には内臓にも酷い損傷があるはずだ。即死はしなくても、間違いなく致命的なダメージを受けている。


「はあ、負けたわ……でもせめて二位にはなっておこうかしら……」


 先輩が小さく手を振る。

 後ろの方のどこかで「うわあ!」と小さく悲鳴が聞こえた。


「何を?」

「もう一人残っていたでしょ? あっちの方で漁夫の利っぽく様子見てたから片付けておいたわ。そんなわけでおめでとう。私はもうすぐ死に戻りするから天音さんが一位よ」

「……私、途中から何もしてないんですが」

「何もしてないわけじゃないでしょう? 観客の目を一番楽しませていたのは間違いなく天音さんなんだし」

「そ、そういうことではなくて!」


 敢えて忘れるようにしていた自分の状況を思い出させられて、反射的に動きそうになる体を無理やり押さえつける。


「これでも動かないか……」


 残念そうに呟いた黒間先輩。その声が消えるのと同時にアバターも消滅した。

 途端に体がすうっと軽くなるような感覚があった。

 動かないでいる、というのは意外と体に負担がかかる。蓄積してきた疲労度が試合終了に伴ってリセットされたのだ。同じように足のダメージも抜けて普通に動くようになった。


 即座に立ち上がって衣服を正す。

 いったい何分間ぱんつを衆目に晒していたのか。しかも扇情的なポーズまで付けて。

 今もスクリーンに映っているだろうから表面上は平静を装っているけど、頭を抱えて転げまわりたい気分だ。もっともこの格好で転げまわったらまたぱんつが見えてしまうからできないけれど。


《闘技場への自動転送が実行されます》


 内心の葛藤など関係なく、闘技場に転送された。

 物凄い歓声に包まれる。開会式の時にも見たカメラアイコンが漂ってきて、頭上の巨大なスクリーンに私の姿を映し出していた。

 このカメラアイコン、開会式では不審な動きでローアングルからの撮影を狙ってきた。また何かやらかすんじゃないかと注意しておく。


 *******************************


 表彰式は恙無く終了した。

 警戒していたカメラアイコンも今回は不審な動きはしなかった。


「まずはお疲れ様ってところで」

「お疲れ様。でも最後は委員長しか戦ってなかったし、三位の彼を倒したのも黒間先輩だし、私の一位ってどうなのかなあ……」


 ようやくゆっくりと話せる状況になって、正直なところを委員長に吐露する。

 時田先輩を倒したところまでは良いのだけど、その後私がやっていたのは例のポーズでじっとしていただけだ。バトルロイヤルという形式上、最後まで生き残っていた私が一位になるのは順当だけど、それと心情的な部分は別だ。

 そんな私ににやにや笑いながら沙織が言ってくる。


「そこは気にしなくても良いんじゃないの。黒間先輩も言っていたけど、会場を一番湧かせたのは間違いなく桜なんだしね」

「……それは言わないで欲しいんだけど」

「ふふふ、ちょっとこれ見てよ」


 ちょいちょいと指を動かして一枚のウィンドウを開く沙織。裏返して示してきた画面には沙織命名『セクハラメイドからエロメイドへのクラスチェンジ』の動画が再生されていた。

 森上君の矢が私の背中をかすめて斬撃エフェクトを散らし、そして破壊光とともに胸当てとサラシが壊れる。零れ出た二つの膨らみが抑圧から解放されたのを喜ぶかのごとく盛大に揺れていた。


「こ、これほどだとは!」

「これを実現した森上君がヒーローになったのも頷けるでしょ? こんなのもあるわよ」


 次に示されたのは静止画。

 グラウンドで、ぱんつも丸出しにポーズを取る私。


「姫木さん、私もこんなのを見つけたんだけど」

「「げっ!」」


 二人して絶句してしまう。

 委員長が出してきたのは私が沙織の胸を揉……もとい、隠すために両手で押さえている画像だった。

 あの時意図したとおり、完全に隠したことでモザイクは消えていて、そのせいで普通に一枚の画像として完成してしまっていて、なんだか怪しい戯れに興じる女子の図になってしまっている。


「はい、委員長、それ削除!」


 佐織と二人で委員長を説得して画像は削除してもらう。苦笑しながらも素直に削除操作をしていた委員長が「これだけ消しても無駄だと思うけど」と呟いていた。


 *******************************


 ログアウトした私と委員長はクラス展示の様子を見てみようと学食棟に向かった。仮想宇美月学園では森上君との戦闘の舞台に場所に出店しているメイド喫茶は大入りの満員になっていた。


 テーブルの間を忙しく動き回っていた成美がいち早く私たちに気付く。


「桜ー! 委員長ー! 二人のおかげで大繁盛だよー!」


 猛然とダッシュしてきた成美が普通に抱きついてきた。大きな声に店内に居たお客さんの視線が集中する。


「本物だ」

「実物が来たぞ!」


 注目されてたじたじだけど成美が抱きついているので逃げることもできない。

 ふと店内を見回すと、何箇所かに設置された大型モニターが大会のダイジェスト映像を流していた。


 揺れる、揺れる、見える、揺れる。


「いやー、やっぱり桜の活躍してるシーンが人気あって。委員長には悪いんだけど桜メインで編集しちゃった」

「ううん、桐嶋さん。それでいいのよ。お客さんのニーズは的確に掴まないとね」


 申し訳なさそうな成美に委員長は良い笑顔で応えている。明らかに自分の受ける被害が少ない事に安堵している様子。

 一方の直撃を受けまくっている私はいたたまれない気分だ。自分の羞恥映像を大勢が見ている現場に同席しなくちゃならないとか、いったい何の罰ゲームなのかと問いたい。


 なんとかこの場を逃げ出したい私に天の福音のごとく校内放送が聞こえてきた。

 放送は私、委員長、黒間先輩を呼び出すもので、至急接続室に来るように言っている。


 これ幸いとメイド喫茶を抜け出すことにする。

 接続室に急ぐ間にも周囲からの視線を感じる。


「うう……またもや不本意な形で知名度が上がってしまった気がする」

「それも今さらだと思うけど」


 私の嘆きは委員長に軽く流されてしまった。

話の区切り的にここで第三章終了です。

次章はいわゆる修行編のような内容になる予定です。

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