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八十話 降り立つは尸解仙

 今回は文章多めだよ! 

「く……!」


 疲れの溜まった身体に鞭打って、参真は幽霊から距離をとる。

 まさか、こうも早く新手が来てしまうとは思ってもいなかった。小傘は相変わらず固まったままで、とてもじゃないが一緒に戦えそうにない。

 彼女を抱えて逃げるのも考えたが、この広い空間ならまだしも、ほぼ確実に洞窟で追いつかれてしまう。一人で戦う以外に、選択肢は無いように思えた。ところが――


「おや? 屠自古、気づいておらんのか? こ奴は我らの同朋ぞ? と言っても、まだまだ未熟者のようじゃし、それぐらいは大目に見てやろうではないか」

「な、何を言っている!? それっぽい雰囲気はしていたが……」


 布都。と呼ばれた彼女の対応は、屠自古という亡霊よりずっと寛大なものだった。……いや、先ほどの天女のような女性同様、自分のことを仲間だと勘違いしているらしい。

 だが、次の言葉は、参真が聞き流せない内容だった。


「こ奴の術を見たであろう? 水気を束ね、扱う術……あれは紛れもなく風水術じゃ。最もこ奴は、霊廟に仕込んだ式を利用せねば、碌に力を扱えぬようじゃがな。だから利用しようと着地した、そうであろう?」

「な!? どうしてそれを……!?」


 風水術かどうかは知らないが、彼女の言葉は真実だ。参真はこの霊廟という物に触れていなければ、力を大きく制限されてしまう。

 けれども屠自古という幽霊にも、この布都という人物にも、ここで会ったのが初めてで、そもそも力の詳細は、守矢の神様たちと小傘、地霊殿の住民しか詳細は知らないはずだ。

 動揺している青年の様子に気がつかないまま、彼女は続ける。


「尸解仙である我、『物部 布都』にかかれば見抜くことなどたやすいぞ。おぬしも仙人……だな?」

「えっ……? それは……」


 始めは、ただの絵描きですとも答えるつもりだったが、さすがに的外れだろうと思い、やめた。やんわり否定するのも考えたが、彼女の言ってることはすべて外れている訳でもない。結果――


「……わかりません」


 彼が口にできたのは、曖昧な返答のみ。今までは絵さえ書ければよかったので、自分が何者かなど気にしたこともない。もしかしたら山籠りしている内に、いつの間にか仙人になってしまった可能性もある。


「えっ……? わからない? じゃあなぜおぬしは風水術を使えるの?」

「風水術と思って、この力を使ったことはありませんよ」

「訳わからん。勝手に使えるようになったとでも?」


 ゆっくりと身体を起こしながら、幽霊も口をはさむ。


「……近いですね。ちゃんとした使い方は山の神様に聞きましたが、そうでなくても一応扱うこと自体はできてましたから」


 ありのままを告げると、屠自古と布都は顔を見合わせ、青年に背を向けてこそこそと話し始めた。


「……屠自古、どういうことじゃ? 術を学ばずに仙人になるなど出来るのか?」

「なり損ねた私に聞くな。だか、こいつが妙な奴なのは確かだな」

「うむむ、となれば太子様に見抜いてもらうのが最も手っとり早いかの」

「こいつを太子様に会わせるのか? もし刃向ってきたらどうする」


 何やら二人で話しこんでしまい、参真には声が届かない。

 少々時間がかかりそうなのを察した彼は、尸解仙と幽霊に背を向けて、電撃を受けてしまった少女……小傘の元へと歩み寄った。


「ご、ご主人さまぁ……私びっくりしたよ!? あんな危ないことして! 雷に当たっちゃった時は、どうしようと思ったんだから!!」


 すぐそばまで来てかがみこむと、早速参真は怒られてしまった。ポカポカと胸を叩いて訴えてくる。傍から見ていた彼女にしてみれば、あの光景は不安以外の何物でもなかったのだろう。


「ごめんごめん。でもああする以外、手が浮かばなくて……」

「二度とこういうことしないでよ!? 破ったら絵描き道具全部取り上げるから!!」

「それはやだなぁ……今度から気をつけるよ」


 本気で心配してくれる彼女に感謝をこめて、参真は小傘の頭を撫でた。


「は、はぅ……」


 するとどうだろう? 先ほどで怒っていた彼女は急に縮こまり、顔を赤くして視線を逸らした。


(あ、あれ……? どうしたのかな……?)


 これまでとは異なる反応に、面食らいながらも撫で続ける。見ているこっちも、妙に気恥かしいくなってしまう表情だ。鼓動が速くなるのを感じながらも、しばらく二人はそのままでいたのだが、


「「……ゴホン」」


 時間がそれなりに経っていたのだろう。布都と屠自古は相談を終えたらしく、彼らに割って入るように一つ咳払いをした。小傘と参真びっくりして、その場からとび跳ねるように互いに離れる。一拍置いて、呆れならが屠自古は訊ねた。


「……お前ら、デキてるのか?」

「ち、違いますっ! 僕と小傘ちゃんは……ええっと……!!」


『大事な従者だ!』と続けるつもりだったが、これはこれで誤解を与えかねない。上手い言い回しはないものかと、その場で思考を巡らせたが……いい表現が浮かばない。


「ふふふ……そこも含めて太子様に見てもらうのがよかろう」


 ……完全に勘違いされてしまっている。こうなるともう、幻想郷の住人はこっちの話を聞いちゃくれない。


「さて、お主らの処遇じゃが、この霊廟の内部に入り、太子様と会って貰おう。太子様ならお主らが何者で、どんな目的かもすべて知ることができるであろうしな。それと、決して粗相のないようにな。未熟者のお主では、逆立ちしても勝てぬ御方である。さあ、こちらへ」

「太子様……? 会っただけで判る……?」


 ずいぶん昔に聞いたことがある様な気がしたが、参真はついに、それが誰だったか思いだすことはなかった。布都の言動は謎だらけだが、幻想郷なら仕方ない。すべてを見とおすとなると、さとりのような能力者なのだろうか……?

 どうにも釈然としないまま、小傘と参真は霊廟内へと足を運んだ。


 彼の力は、風水術に極めて似ています。

 が、当然ながら微妙に違い、屠自古はそこの判断が出来ないまま、参真が霊廟を足場にしているのを目撃してしまったので、戦闘になりました。

 で、布都は彼が力を使用したところと、その際、霊廟に触れていなければ力を使えないところまで見ているので戦闘にはなりませんでした。


 主人公が何者か? は、あまり言及していませんでしたが、神霊廟シナリオ追加に辺り、細かく詰めいて行きました。ただ、ちょっと伏線を撒くのが遅れましたね。思いっきり独自解釈入りますが、その辺はお察し下さい。

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