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八話 残骸の中で

遅れてしまい、申し訳ありませぬ……

PVアクセス5000、ユニークアクセス800突破! 読者のみなさん! ありがとうございます!!

あと今回、独自設定が出てきます。詳しくはあとがきにて解説いたします!!

 命蓮寺の敷地内で起きた炎は、すでに沈静化していた。

 聖が出かけた直後、唐突に裏のほうから重低音が鳴り響き、寺にいたみんなで見に行くと……丸太で出来た小屋が出現していた。中に入ってみると寝具はなく、相当数の絵と、こっちでは見ない道具の類がいくつか置かれていた。どうしたものかと、ナズーリンが自分の主人に相談すると、「おそらく、幻想入りしたものですね。毘沙門天の加護と思って、使えそうなものはありがたく頂きましょう」と言ったので、貰えるものは貰うことにし、景観を損ねる小屋自体は撤去することにした。

 ナズーリンの能力を使い、中にあるものを探し当てていくと、その中に、カツオブシが大量にあったものだから、皆が喜んだ。幻想郷では魔法の森のキノコからとれる食材なのだが、あそこは瘴気が漂っているため危険極まりない。使い勝手のいい食材なのもあり、需要も高いので値段も高騰しやすいという品である。聖が帰ってきたら、この食材を使って宴会でもしようと思っていたのだが……


「本当に、申し訳ありませんでした!!」


 寅丸 星の謝罪と共に、聖以外の皆が頭を下げる。まさか、幻想入りした小屋の持ち主がこちらにきていて、しかも聖が連れてきてしまうとは……


「あ、あははははははは……仕方ないですよ……不幸な……事故ですって……アハハハハハハハ……はぁ」


 そうは言うものの、青年の瞳は虚ろで、笑い声は渇いている。自分の住んでいた家が、目の前で跡形もなくなってしまったショックは大きいのだろう。かと言って、元気を出してと彼を慰めることもできない。原因は間違いなくこちら側にあるのだから。


「こ、こんなことになるなんて……参真さん。お詫びと言ってはなんですが、しばらくの間、ここで寝泊まりしていってください」


 そこにすかさずフォローを入れるあたり、さすがは聖だ。この申し出は、彼にとってもありがたいものではあるだろう。自分たちにとっても、彼に対しての償いができるし、悪いことではない。


「はい、アリガトウゴザイマス……」


 一応受け答えは出来ているが、彼の表情が死んでいる。ここは、そっとしておいた方がいいと判断したのか、星は


「みなさん、行きましょう」


 一輪たちをつれ、奥の部屋へと引いていった。けれども、ナズーリンは立ち去ることができず、落ち込んでいる彼の元へ行き、こう言った。


「参真くん……その、本当にすまないことをしてしまった。謝っても取り戻せる訳ではないが……探し出すことぐらいなら、私にもできる。何か大事なものが保管されていたのなら、言ってみてくれ。可能性は絶望的かもしれないが……残ってさえいれば、私の能力で見つけ出せるだろうから」


 目の前に広がる残骸の山から、目的の物を探し当てるのは大変だろうが……これぐらいしないと気が済まない。青年もその言葉を聞いてピクリと反応し、ゆっくりとナズーリンの顔を見上げていた。彼の表情は、何かに縋る様な表情で……ナズーリンは胸が痛くなった。


(本当に……ごめんよ……)


胸の内で謝ることしか出来ないのが悔しい。時間を巻き戻せたらと、本気で思う。あと少し彼が来るのが早ければ、こうはならなかったかもしれないが……けれども、それを言い出したらキリがなくなる。まずやるべきは、今できることからだ。


「そうだね……とりあえず、あのガレキの中を探そうか……」


 相変わらず覇気のない声だが、それでも先ほどよりは幾分マシになった気がする。二人は焼け落ちた小屋の方へ、何か残っていないか探し始めた。


                      ***


 それから、時間が過ぎ、西日も傾き始めたころ――

 二人はまだ残骸をかき分けていたが、何も見つけられずにいた。

 お互いにススまみれになり、衣服も随分と汚れてしまっている。にもかかわらず、一向に成果が挙がらない。


「やっぱり、キツかったか……地上部はほぼ全焼だからね……」


 諦めることは辛かったが、こうも何もないと気が萎えてくる。ナズーリンも能力を何回か行使したものの、すべて空振りときていて、体力的にも厳しい状態だった。


「もういいですよ、ナズーリンさん……これだけしてくれれば十分です」


 参真がそっと、ナズーリンの頭を撫でる。その手は汚れてこそいたが、彼の温かさが手のひらを通して伝わってくる。


(あんたは優しすぎるよ……いっそ怒ってくれたほうが楽なのに)


 幻想入りしてきたものは、小さなものなら拾った者の物に、今回のような大型のものは、その土地を管理していた者の持ち物にしていいのが、幻想郷のルールだ。早い話が、「好きにしていい」物として扱われるのだが……外の世界の人間である彼は、当然そんなことは知らない。にもかかわらず、仕方ないと言って、自分を慰めてくれる彼は優しすぎるように思える。少なくても、命蓮寺を誰かに焼かれたりしたら、ナズーリンはそいつをタダでは済まさない。


「そう言われたってね……いや、そんなこと言われちゃ、ますます引き下がれないよ。うまいことガレキが折り重なって、下の方で無事なものが一つや二つあるだろうさ。さあ、探し物を言ってくれ!」


 ポケットからダウジングロッドを取り出し、正面で構える。あとは彼の指示を待つだけだが、参真は急に黙り込んでしまっていた。


「ナズーリン。今のとこもう一回言って」

「? 『探し物を言ってくれ』?」

「それの一つ前!」

「えっと確か……『うまいことガレキが折り重なって、下の方で無事なものがあるさ』だっけかな? それがどうしたんだい?」

「何で忘れてたんだ……! ナズーリンさん。『扉』を探してください!!」


 何か思い当たるものがあるのだろう。今まで勢いがなかったのに、急に張り切っているが……『扉』を探すなど、無駄なような気もする。


「はぁ、じゃあやってみるよ……」


 あまり乗り気はしなかったが、彼の頼みだし断れない。範囲を広げ過ぎると命蓮寺の扉に反応してしまうため、調べる空間は少なめに設定し、能力を発動する。すると……ロッドが反応した。方面はガレキの下あたりからだ。


「!? なんで反応が!?」


 鉄の棒が示す場所へ、二人は歩いていく。残骸が積もっている場所で、扉など見えはしないが……ここで間違いない。参真が残骸を退かし始め、つられてナズーリンもそれを手伝う。作業が終わるころには、夕暮れが敷地を包み込んでいたが、苦労した甲斐はあった。彼女らの前には、人一人がやっと通れそうなぐらいの大きさの扉が出現していた。


「参真くん、これは?」

「地下室の扉だよ。床の一部がはがれるようになってて、その下にこの扉があったんだ。ナズーリンたちが入った時には、気がついてなかったんだろうね」

「地下室か……なら中の物は無事かな?」

「うん……扉も特に傷んでいる様子もないし、多分大丈夫。ここまで付き合ってくれてありがとう。ナズーリン」


 そう言って、もう一度彼は頭を撫でてきた。……なんだか照れくさいが、こうしてナデナデされるのも悪くない。もう少しだけ堪能しようとぼーっとしていると……


「参真さん……ナズーリンは渡しませんよ?」

「「うわっ!?」」


 唐突に後ろから低い声が、二人に突き刺さる。怯えるネズミのごとく、ビクゥ!! と震え、そっと振り返ると……怒れる猛禽類のオーラを纏った、自分の主人が立っていた。


「ご、ご主人!? 誤解してる! 参真とそういう関係じゃないですから!!」

「ほほぅ……普通こんな遅くまで、しかもそこまで汚れてまで探し物をしますかねぇ……」


 ますます気配がドス黒くなったような気がする。迫力たっぷりな主は、嘘をつこうものなら、一瞬で消し炭にされかれないほどの気迫で迫ってくる。なんとか話題を変えようと、ナズーリンは知恵を絞り……


「と、ところでご主人。どうしてここに来たんですか」

「……それは、暗に二人っきりになりたいということですね?」


 話題を逸らそうとして、見事に失敗。ああ、ラストジャッジメントはすぐそこに――


「あの、ナズーリンさんは悪いことは何もしてません。ちょっと洗い物が増えちゃったかもしれないですが、探し物を手伝ってくれただけでして……なんでそんなに怒ってるんですか……?」


 正直もう終わったかと思ったが、参真が抜けた発言をしたせいで、一気に空気が弛緩した。……彼はどうやら、男女の仲に疎いらしい。おかげで助かった。ため息交じりに、主は本来の用件を告げる。


「……はぁ。なんだ、心配をして損しました。宴会の準備ができたので呼びにきたのです」

「宴会? 急に何を……」

「あなたの歓迎とお詫びを兼ねてです。幻想郷の住民は宴会好きですから、ついでに顔と名前を覚えておくとよいでしょう。騒ぎになれば、きっと勝手に集まってきますから」


 呆れ半分に金髪の少女が参真に告げる。しかし、彼女の従者は首を傾げて問う。


「ご主人、聖か許可を出したのかい? 彼女は、仏の教えにうるさかったはずだが……」


 以前の集まりの際でも、禁酒を貫いた聖が寺で宴会とは考えずらい。普段はこっそりと飲酒をしているナズーリンにとって、この寺で酒が飲める機会はないと思っていたのだが。


「村紗とぬえが押し通しました。まぁ、今回は特例だと思います」

「……なんだかすいませんね。何も用意できなく……あ……!」


 途中で何かを思い出したのか、参真は先ほどの地下室へと向かっていく。


「どうしたんですか? あなたが主賓なので、早めに来てほしいのですが……」

「その主賓が手ぶらじゃまずいでしょ? この際、派手に振舞うとしますかね!」


 ニヤリとその顔に笑みを浮かべた後……彼は地下室の中へと降りていったのであった。


独自設定は、

「幻想入りした物の所有権について」と、

「一部の食材は、魔法の森に代用品がある」ですね。本文にもある通り、危険な場所ですので高級品扱いになります。

 何? 「前者はともかく、後者はいらない」と?

 むしろ「代用品あったらつまんねーよ!!」と……ほほぅ……

 いいでしょう! そうお思いなら、いいでしょう!!

 あなたが、海の食材がないということがどういうことか! それが日本食にとって、どれだけ致命的なことか理解できているかを、テストしてみることにしましょう!! 上記のカッコ内のようなことを思ったあなた!! 拒否権はありませんからね!?


問題!

今日、晩御飯に以下のようなものが出されました

 茶碗一杯のご飯

 焼しゃけ

 ヒジキ

 味噌汁

 ホウレンソウのおひたし

 大根の煮物


 上記の物で、「海の食材」がないと作れないもの、なんか物足りなくなるもの、風味、味に影響が出てしまうであろうものを答えなさい。


解答は次回投稿時に行います! 感想の所に書いても返せないよ!? そこは間違えないでくださいね!!

では、次回をお楽しみに~

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