七十七話 眼前に広がる非常識
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狭く薄暗い洞窟を抜け、参真と小傘を出迎えたのは、今までと違い大きく開けた場所だった。相変わらず暗いと思いきや、時々遠くで雷が落ちて周囲を照らしだし、何故か桜の花びらまで舞っている。
もうこっちの環境やノリについていける。自信をもって馴染んだと言えるはずだった参真は、自らの認識の甘さを見せつけられるさまとなった。
「どうなってるのさ、幻想郷って……」
頭を抱え、訳がわからないと首を振る。一方の小傘は雷に驚きこそすれ、平静を保っていた。やはり自分は外来人なのだと、改めて思う。
「えっと……不思議なことが当たり前のように起こるとこ!」
「……にしたって、常識外れにもほどがあるよ……これは……」
ここは間違いなく洞窟の中で、自分たちはそれを確認して進んだはずである。ところが奥にあった扉をくぐれば、いきなり中空に放り出され、危うく参真は地べたまだ一直線の所だった。小傘が助けてくれなければ、死にはしないまでも大けがぐらいはしていただろう。
「それはそうとご主人さま……弾幕は撃てそう? 飛べてはいるけど……」
「難しいかな。不思議と洞窟よりは調子がいいみたいだけど、元々着地しないと安定しないからね……」
この開けた空間は、どう考えても人工物のはずだが、自然と交信する分には不便はない。これで着地できれば申し分なかったのだが。
「う~ん……地面とは違うけど、あそこ行ってみる?」
「ん?」
少女が指さしたのは……広大な空間にポツリと一つ立てられた木製の小屋のようなものだった。変色した材木は月日を感じさせるには十分だったが、その割に損傷は少なくそうだ。入ってすぐ目に映らなかったのは、神霊がそこに集まっていて、ちょうどモヤのようになっているからだろう。
……異変の元凶が、あの中にいる確信があった。証拠はないが、神霊を追っていけばいいので、外れてはいないだろう。
「いかにもって感じだね……また誰か出てくるかもしれない。気をつけて降りよう」
小傘に警戒を促し、慎重に建物へと二人は降下していく。
途中、何度か鳴り響いた雷に驚きながらも、彼らは建物の屋根らしき部分に着陸すると、ミシミシと古木が軋む音がする。抜けたりしないだろうかと不安になり、参真はかがんで材木に触れてみた。
(ん……これは……?)
接触と同時に、参真は自然との通信がクリアになっていくのを感じた。術か何かで補強しているのかは不明だか……とにかく、この建物に触れていれば、自分は力を上手く使えそうだ。などと、一人感心していると――
「ご、ご主人さま、あれ……!」
焦った小傘が上擦った声を出す。彼女の前には……両足が煙のようになっている女性が、鋭くこちらを睨みつけていた……
さて、参真君が力を使える理由ですが、これは後々解説していきたいと思います。なのでとりあえず今は、「霊廟の上に立っている時は、地上と同じように使える」「空中での制限は同じ」と考えてもらえればOKです。