七十五話 どうあがいても……
タイトルの続きはお察し下さい。わからないネタだったらゴメンネ!
さて、そのころ動く死体の主はというと――
「く、手ごわいわね……!」
「いやぁ、褒めてもマスタースパークしかでないぜ?」
小傘たちより先に侵入していた、白黒の魔法使いを相手にしていた。
芳香に来るよう命令も出したのだが、ダメージが大きいらしく、まだ自分の所には辿りつけてはいない。徐々に彼女の気配は近付いては来ているので、もう少し粘れば、二対一で戦えるのだが。
「せっかくだ、遠慮せずに食らってくといいんだZE☆」
先ほどと同じ――魔法使いは「マスタースパーク」と呼んでいた――を撃つための動作に入る。対抗するように彼女も、邪符「ヤンシャオグイ」を発動させた。
すると光の玉が、魔法使いの光線を阻むように配置され――直後、着弾。
キーンと高い耳鳴りと、極光が視界を焼く。膨大な情報で脳がパンクしそうになり、意識が朦朧としてきた。
ふらりと危うい動作で中空を浮きながら、彼女の出した結論は……
(ま、まともに相手にしてらんないわ!)
正面衝突では、圧倒的に不利と判断。芳香に盾になってもらわないと、手の打ちようがなさそうだ。奥の門前まで引き寄せ、彼女の到着を待つしかない。
「よ、芳香ぁ~ 早く来てぇ~!」
我ながら情けないと思いながらも、つい悲鳴を上げながら、自慢の仙術を用いて、その場から少女は姿を消した。
***
「あーあ、逃げられたか……そろそろ当たりが出そうなんだが……」
青い羽衣の女性に逃げられ、しょんぼりとしながら魔理沙はぼやいた。
ここに来る前、早苗がキョンシーに覆いかぶさられていた所を、仲良く吹き飛ばして奥地へと侵入。からかさ妖怪も綺麗に吹き飛ばし、あの青い人間? も撃退できて、今日の魔理沙は絶好調だった。
「念入りに調整してきた甲斐があったな」
手持ちのミニ八卦炉を見つめて、スス汚れがあったので布でふき取る。大事な魔理沙の相棒は、きらりと鈍く光って少女に答えた。
「うむ。これでよし――っとお客さんか!」
手入れが終わると同時に、洞窟の両サイドから大量の妖精が湧いて出てきた。さっき逃げた奴のしわざだろう。よっぽど入られたくないらしいが、隠せば隠すほど、中身を見たくなるのが魔理沙である。
「オラオラ! 今日の私は一味違うぜ!! 一回休みになりたくなけりゃ、道をあけな!!」
弾幕を放ちながら、魔理沙は強引に洞窟の奥の方へ突入していく。妖精の弾は、経験則でほとんど避け、ちょっと見誤ったのもグレイズで済んでいる。そして――
「おお、こんなところに扉が……入らざるを得ないぜ」
深部に到達すると、荘厳な空気と神霊を漂わせている巨大な扉があった。異変調査ついでに、掘り出し物がないか中に入ろうとすると、
「あらあらまぁまぁ、さっきはどうも」
先ほど撃退した羽衣が、ニンマリ笑みを浮かべてこちらを見ていた。「自分を倒してから行け――」ということなのだろうか?
「ああ、またお前か。そんなにこんがり焼かれたいのか? 入口のゾンビみたいに」
「あらそう……芳香をやったのもあなただったの……たっぷり可愛がってくれたのかしら?」
「肌色が悪かったからな。全身くまなく色黒コースだ」
魔理沙が悪びれもせず答えると、少女とは反対に、笑みのまま深い影が差したような気がする。しかし、魔理沙は全く気にしない。けろっとしたまま、もう一回マスタースパークをかまそうとした、その時だった。
「うおー! せーがー!」
「!! 芳香!!」
背後からの大声に魔理沙は振り向き、そして戦闘態勢だった彼女の隣を羽衣が通り過ぎていく。彼女が向かう先には、倒したはずの死体と、倒したはずの唐傘妖怪。そして、人里の男性だろうか? 青い作務衣を身に付けた青年がいる。
「誰だあいつ? 命知らずか?」
能力も何もないただの村人が、異変に首を突っ込むなど、「食べてください」と妖怪に言っているようなものだが、しかし魔理沙に助ける義務はない。
「ま、今の内に中に入らせてもら――!?」
扉を開けて、コソ泥よろしく入ろうとした時だった。急に身体を支えていた浮力が消えかかり、慌てて魔理沙は着地する。
「オイ、ここに来て不調か? 急にどうしたんだよ……」
愚痴をこぼしていた所に、さらに不運は続いた。そうして時間をかけている間に、話がまとまってしまったらしく――
「さて……芳香も来たところですし、たっぷりお礼をしないとね♪」
「うおー! いくぞー!!」
「魔理沙ー! いきなりマスパなんてひどいよ!! 私だって怒るんだから!!」
「……小傘ちゃんが大けがするところだったんだ。ちょっと痛い目にあって貰うよ?」
先ほどの四人は意気投合して、自分と戦うつもりらしい。……残念ながら、この数相手に戦える自信は、魔理沙にはない。
逃げようにも何故か空は飛べず、陸路は四人が立ちふさがっている。とても奥の扉を開いて逃げる余裕はなかった。
「な、なぁ話し合おう。まずは自己紹介から――」
「「「「問答無用!!」」」」
時間を稼いで、その隙に乗じて逃走を図るもあえなく失敗。ジリジリと追い詰められ、最後のあがきにとミニ八卦炉を構えるが……
「げっ! 連発しすぎた!?」
プスプスと黒い煙を立てて、ミニ八卦炉は虚しく魔理沙に絶望を告げる。顔を真っ青にして、イヤイヤと首を振っても、ゾンビは止まらず、羽衣は黒く微笑み、唐傘妖怪は頬を膨らませ、青年はむすっと不機嫌そうな表情のままだ。
「わ、私が何をしたんだぜーっ!?」
「「「「自分に聞けーっ!!」」」」
それを合図に、魔理沙は四人にボッコボコにされてしまいましたとさ。
ピチューン
と、いうことで魔理沙フルボッコ回。邪仙と参真君の会話内容は、後々書きますので次回をお待ちを~