七十三話 主のために
久々に調子がよくなりました。連続投稿いっちゃうよー!
二人が例の光線が放たれた場所へとたどり着いた時には、既に犯人の姿はなかった。
その場には二名ほどうつ伏せで倒れていたものの、その二人はこの事件の犯人ではないと断言できる。
一人は、長い緑の髪を台無しにされた巫女服を着た少女で、こちらは参真にも見覚えがある。守矢神社で世話になった時にあった、早苗だろう。
そして、もう一人の方は……
「う、うおおおお……」
亡者のようなうめき声を上げながら、必死に手足をばたつかせている。あの光線をまともに受けで動けるとは……とんでもないタフさだ。
「だ、大丈夫~?」
「む、お前は誰だ?」
「忘れてるの!?」
この頭に奇妙な札を張られた少女が、小傘の言っていた手掛かりらしい。が、残念ながら記憶にないようだ。あのレーザーに焼かれたショックで、記憶の一部が飛んだのかもしれない。
「ちーかよーるなー! ここはお前たちのような者が近づいていい場所ではない!!」
それは折れた両手足をバタつかせて、鋭い口調で警告しているが、その気になればスルーできそうだ。しかし、もう少し小傘と話させてみたいし、自分も彼女と話してみたい。
「じゃあ誰ならいいんです?」
「誰? えっと……? 誰ならいいんだっけ?」
……それすらも記憶にないらしい。かなりの重症のようなので、放置して先に進むことも考え始めた方がよさそうだ。などと思い始めた矢先に、小傘が鋭い質問を投げかけた。
「自分のご主人さまとか?」
「! そ、そうだ……我が主なら問題ない。うん」
続けて参真も聞いてみた。
「……じゃあ、その人の命令でここを守っていたのかな?」
「おお、そうだそうだ。だんだん思い出して来たぞ」
一人納得したように、首をカクカクと縦に振る札付き少女。だが、彼女にとって、これは好ましくない状態と言える。なぜならば――
「まずいね、もう一人通しちゃってるよ」
ここに来る時には、既に二人は倒されていた。
例の光線には見覚えがあり、そして光線を放った人物は見当たらない。となれば、ここを突破したと考えるのが妥当だろう。
「な、なぬ!? ならば急いで主の元に行かねば!!」
焦った様子で身体を動かすが、やはり虚しく空を切るだけで、彼女は動けそうにない。札付きをどうしようかと、参真が悩んでいたところに、
「ねぇご主人さま。この人を主人さん? の所に連れて行ってあげない?」
なるほど小傘らしいと、青年は変わらぬ従者を嬉しく思う。それに、人助けは参真も嫌いじゃなし、こうして関わっておけば、何か異変調査にも役立つかもしれない。彼は一つ頷くと、「よいしょ」とその背に倒れた少女を背負う。
「お? お? 何をするのだ??」
急に背負われた彼女は、ただただ戸惑うばかりだ。身体を碌に動かせないまま、彼になすがままにされている。
「あなたの主の元へ連れていきます。この先にいるんですよね?」
「おう! たぶんいるぞ~」
「……小傘ちゃん。この先僕はきつそうだ。さっそくで悪いけど、護衛頼むよ!」
「うん!」
ずしりと背中にかかる体重が重いが、気合いと霊力で相殺して参真は進む。小傘を先頭に、三人は暗い穴倉の中へと降りた。
量が少ない? 今日の作者はこれが限界なんやな……