七十一話 変わる妖怪、変わらぬ人間
更新遅れた~! 申し訳ねぇ……!!
「うえーい。神霊ばっかで、何にも面白いことがないんだぜ~」
時を同じくして、白黒の服装でホウキに跨る、いかにも『魔女』の格好をした少女が、退屈そうに墓場の上を飛んでいく。
時々、まとわりつくように妖精がやってきて、弾幕をバラまいていたが、彼女――霧雨魔理沙には通じない。軽く身をひねって撃ち返しながら、何事もなかったかのように奥地に歩を進める。
下を見ていても墓場ばかりで、ひどく退屈していた彼女の耳に、弾幕の喧騒が響く。遠くに視線をやると、空中にいくつも弾幕の花火が打ちあがっていた。
「……お? ドンパチやってるな?」
好奇心のままに、ふらふらとそちらに近寄る。異変の匂いにつられて奥地に行こうとすると――目の前を茄子色の物体が通り過ぎた。ちょうど弾幕ゴッコをしている方からである。
「む、お前は確か……」
「あ、あなたは……ねぇ、ご主人さまがどこにいるか知らない?」
急に飛び出してきた彼女は、魔理沙と目を合わせるとすぐ、余裕のない表情で訊ねてきた。もちろん魔理沙は、そんなことは知らない……と言うより、主人がいたこと自体初耳である。
「知らん」
「……グスン。そ、そんなこと言わずに、心あたりだけでも……」
「私は急いでるんだ。邪魔するなら退治していくZE☆」
いつもの調子で、魔理沙は弾幕ゴッコの準備に入るが、向こうは……多々良小傘はあまり乗り気ではないらしい。目に涙を浮かべて、魔理沙にすがってきたが、一顧だにしない。
唐傘妖怪相手に時間をとるのが面倒になった白黒魔法使いは、さくっと終わらせるために八卦炉を懐から取り出して叫ぶ。
「恋符『マスタースパーク』!!」
先手必勝と言わんばかりに、魔理沙は開戦と同時、にスペルカードを使用した。いきなり強襲されるとは思っていなかったのか、小傘は極太の光線を前に動けない。
「あ……」
ぼんやりと、小さく一言漏らして、彼女のいた場所が光条に包まれ――周辺をもろとも吹き飛ばしていった。更地になった周辺を、魔理沙は満足げに眺める。それは幾度もなく繰り返された、幻想郷での光景であり、障害が排除された後は見向きもしない。
「さーて、今度の異変はどんな奴が起こしたんだろな?」
荒々しく作られた道の上を、魔理沙はもう一度箒に跨って、さっきまで誰かが弾幕を放っていた方へと向かっていった。
***
「あ……」
私の視線は、魔理沙から放たれた光線に釘付けになった。
身体が竦むとか、そういうのじゃなくて……なんでそういうことになってるのか、今の私には、わからなかった。こうなることを、全然予測できなかった。
話し合って、何も知らなくて残念とか、意外な手掛かりとかが見つかって。
穏やかな時間が過ぎて――そんな風に平和に終わると思ってた。
幻想郷では変な話だよね? 妖怪を退治するのに、魔理沙は躊躇なんてしないのに……
(昔の私なら……普通に弾幕ゴッコしてたのかなぁ……?)
光に呑まれそうになってるのに、私はそんなことを考えて、諦めるように目を瞑る。正面から戦っても無理なのに、今から動いて避けれる訳ないもんね……
「小傘ちゃん……っ!!」
あはは……やっぱり怖いのかな? ご主人さまの声が、ずいぶんとはっきり聞こえるよ……どこ行ったのかなぁ……早く会いたいな……
「ッ!!」
どん! と何かにぶつかり、私の身体は空中に放り出されて……目を閉じてたから、ちょっとよくわからないけど、ごろごろとどこかに転がった……気がする。
あれ? 熱くない? 光線に焼かれたなら、もっと痛くて熱いはずだよね……?
それに、飛ばされたのも、マスタースパークの方向じゃないような……?
「良かった……! 無事でよかった……!!」
きゅ、とちょっと痛いぐらいの力で抱きしめられる。私も同じように、その人の首と腰に手をまわした。
それはすごく懐かしくて……私の生きてた時間だと、ちょっとのはずなのに変な話だけど、ほんとにすごく懐かしくて、
「ひっく……うえ……ぇぇぇ……」
いろいろな思いとか、考えとか、生まれては混ざって言葉にできない。
「ごめん……ごめんね小傘ちゃん……」
しばらく会えないと思ってた、大事な人がそこにいる――
それだけで私は、胸がいっぱいだった。
……なんだが、番外っぽい感じだなぁ……主人公視点がないし。最後に出てきてるし本筋のお話なので番外じゃあないですよ~
魔理沙も何気に初登場。しかしこの配役であるw