七十・五話 騒がしい墓場
ハイ、大変お待たせいたしました。文章がまとまらなかったのデス……しかも短くて外伝扱い……申し訳ねぇorz
そのころ命蓮寺の墓場では、妖怪同士が激しく弾幕をぶつけ合っていた。
既に戦いは長引き、ドロドロの持久戦になっている。
「神霊……かゆ……うま……」
「な、なんで倒れないのよう……!」
……向かい合う二人の妖怪は、全く真逆の状態で、片方は肩で息をしているが、もう一方はまるで堪えていない様子で、始めとのころと動きが変わっていない。
「あっ……」
と、紫の傘をさした妖怪が、疲労で足をもつらせて地に落ちる。すかさず、もう一人が上から彼女に覆いかぶさり、そのまま組み伏せてしまった。
必死に抵抗する彼女だが、マウントをとられている上、相手は疲労も痛みも感じている様子がないのだ。勝ち目などあるはずがない。そのまま上にいる妖怪は大きく口を開き、少女の首筋に迫る。
「い……いやぁ……」
「ふふふ……さぁ、お前も我々の仲間になるのだ~!」
「いやあああぁあ! ご主人さまぁ~~!!」
「……? ご主人……?? ……お前、ご主人いるのか?」
と、今にも襲いかかりそうだった妖怪は、急にそのまま動かなくなる。下の彼女は余裕がないので気が付いていないようだが、その表情からは、すっかり毒気が抜けていた。
「え……? い、いたよ……はぐれちゃったけど……」
「はぐれた……ご主人と…………そうか……………なら、どうしてお前はここにいる?」
急に穏やかな口調に変えて、顔色の悪い妖怪は問う。
突然の様変わりに動揺しているようだが、襲われる様子でなくなったのに安心したのか、素直に答えた。
「ホントはすぐご主人様の所に行きたかったよう……でも、ほかのみんながここで待っててって……」
「なるほど、じゃあ霊廟に入る気はないのだな?」
「?? なにそれ???」
……質問を終えたキョンシーが、不器用に体をよじって立ち上がる。手をだらしなく前に伸ばし、その妖怪に告げた。
「……お前のことは、よくわかった。我々とは別の妖怪のようだが――同朋に近いのは理解した。私のいる場所に近寄らないのなら、墓場にいることを許そう……」
「え……?」
キョンシーが出した答えは、同情の念が多分に含まれていた。先ほどまでの戦闘が嘘のように、その妖怪は静かにたたずむ。
「私に与えられた命令は『ここに外敵を入れるな』だけで、お前を倒すことではない。わかったらここには寄るな……それに、ちょうど『侵入者』も来た。巻き込まれる前に離れろ」
そうして、門番になっている妖怪は、解放された妖怪の背後の影を睨む。かなり遠目ではあるが、視線の先には、緑髪の巫女が迫っていた。しかし……
「なんで急に親切にするの……?」
突然の態度の切り返しに、彼女は全くついていけない。戸惑う彼女に返答せず、そのキョンシーはすっ、と前に出で、巫女を迎撃する構えをとった。そして最後に一言――
「……お前のご主人、見つかるといいな」
ぼそ、と、木々のざわめきに消されそうなほどの小さい呟きを残して、キョンシーは唐傘妖怪をその場に取り残す。――この戦いに巻き込むまいと。
「あ……!」
察した時はもう遅く、影は遥か遠くに飛び去っていた。礼の一つも言えぬまま――彼女はその場で、二人の弾幕ゴッコを眺めた。
さてまぁ、名前出てないけど誰かはわかりますよね~? ここの彼女はイケメンゾンビになる予定です。カッコイイ「くさったしたい」を目指します!