六十七話 ゴーストリード
色々と原作要素をつぎ込もうとして難儀してました。
タイトルは、せっかくなので原作BGM名で。
聞きながら読んでくれてもいいんじゃよ(チラッ
「――本当なんですね? 今回の異変解決に動けば……」
「ええ、私が直接紫に掛け合って、あなたの大事な従者の居場所を聞いてあげる。その前に、ちょっと新作スペルカードの練習相手になってもらうけれど」
にこりと、あどけなく笑う彼女だが、気を抜くことはできない。実際の所、これが試験のようなモノだろう。
「準備はいいかしら? 未調整……いえ、スペルカードをわざと暴発させる形で使うから、私にもどうなるかはわからないの」
「それで構いません。早く始めましょう」
少女より先に空へと浮かび上がり、参真は幽々子を急かす。全く迷いのない動作に、幽々子はそっと目を細めた。
「……余裕なさそうね。そんなに彼女が――」
「――大事ですよ。離れ離れになって、ようやくそれを知ったんです。何か悪いことが起こる前に彼女に会いたい。もう大事な誰かを見ないまま失うのは……ゴメンです」
眼の裏に、亡くした兄の影がよぎる。
お互いがお互いに、全く歩み寄ろうともしなかったが、あの時の会話は、参真を思っての言葉だったと思う。
翌日、長男は亡くなり、こんな思いはもうしたくないと……確かにそう感じたのに、また繰り返した。
自分を思ってくれる誰かを見つめずに、自分の世界に閉じこもって。
気がついた時にはもう、手の届かない場所に行ってしまっている。
けれどもし、落ちた宝石を拾い直せるというのなら。
傷が入ってしまっても、それを取り戻せるというのなら――
「――その為なら、無茶だろうが無謀だろうがやってやりますよ」
ほとんど外部からの力がないのに、参真は強く出る。否……今の彼にとっては、力の有無など些細なことだ。
彼女の試練を乗り越え、異変を解決し、小傘との再会を果たす。
それ以外に成すべき事など、ない。
「そ、そんなにムキにならなくてもいいのよ? ほんとにただの練習だから」
「でもやり過ごせれば、それに越したことはないですよね?」
その意思は鉄か鋼か、揺らぐ気配も見せない。むしろ幽々子の方が押され気味だった。
「ええ、そうね。その通りよ……おしゃべりはこれぐらいにして――行くわよ」
穏やかな口調から、背筋に冷たいモノが奔る様な口調へ。
ぞぞぞ、と、冷たい風が、桜の花弁を散らし、
「桜符『桜吹雪地獄』」
スペルの宣言。瞬間、暴走した桜の弾幕が迫る。
緊張していた彼の身体は、僅かに初動が遅れた。刹那、突風に押された桜吹雪が、頬を掠め傷を作る。
(早いし、濃い!?)
右へ、左へ、大きく煽られながら、桃色の旋風が参真を包み込む。
暴発させると宣言しているだけあって、乱雑に弾幕が襲ってきた。
規則性が薄く、参真の能力でも解析は難しい。それでいて無茶苦茶に力を使っているのだから、量も数も一級品ときている。
「ぐぐ……」
いくつもの弾幕が身体に撃ちこまれていく。
濃厚な花びらは、いつの間にか亡霊の姿を覆い隠し、青年に狙いを絞らせてくれない。時間と共に体に痣が刻まれ、意識も揺られたが――彼は気合いで耐えた。耐え続けた。
「ちょっと強すぎたかし……あ、あら?」
「……えっ?」
指先辺りがマヒしてきたころ、急に弾幕が止んだ。幽々子も呆然としていたが、
「無理に使ったから、早く限界がきたみたいね……あなたの勝ちよ」
と、やれやれと首を振っていた。
「……そう、ですか」
釈然としないが、少女から負けを認めてるのだから、否定する気はない。このまま戦っても、勝てる見込みは無いだろう。それより、小傘を探すことの方が先決だ。
「……もう行きます。時間がもったいないですから――」
「って、ちょっとちょっと! 今回の異変がどういうのかわかっているのかしら?」
「……全然」
今にも駆けだしそうな彼を引きとめ、ざっくらばんに説明する。かなり細かい部分は省いたが、そうでもしないと、すぐに飛び出してしまいそうだった。
, 亡霊説明中……
「で、ヒントをあげると、お寺のお墓が怪し……」
「わかりました。行ってきます!」
参真はそういうと、じゃ、と片手を上げてボロボロのまま飛んでいく。
……結局彼は、最後まで話を聞かずに出て行ってしまったのだった。
スペルは一枚だけですが、よりにもよってオーバードライブスペル。
暴走スペルという設定のようですので、小説で採用するには、難しそうだったので、ゆゆ様に使ってもらうことにしました。
これ以降の小説内では難易度ノーマルです。ルナだったら参真君死んじゃうw