六十四話 立ち向かった彼女 立ち向かう彼
いかん。更新ペースが落ちてきとる。
本当なら冬休み終わる前に、こっちは終わらしておきたかったのに……orz
「まだやるのかしら? 根性だけは、認めてあげても良いけど」
戦闘開始からわずか十分。既に優劣は明らかで、青年は体中に痣を作り、呼吸も酷く荒く、力は衰弱しきっていた。
紫としては、命までとるつもりはない。彼の力も、目的も、幻想郷にあって問題のないものだと判断でき、こちらが勘違いしてトラブルに巻き込んだ、詫びの代わりである。
「っぐ……! ぎぃっ……!!」
声色を軋ませて、縺れ、何度も這いつくばりながらも、それでも――参真は立ちあがろうとする。が、それでも倒れ、立てないと考えたのか……彼は四つん這いになりながらも、妖怪の賢者を強く睨む。
怯えも、恐怖も、そこにはない。あるのはただ一つ。明確な敵対の意思のみだ。
「まるでケモノね……しょうがないわ。ちょっと寝てなさい」
軽く細腕を振るい、適当に弾幕をばら撒く。弱り切った彼には、防ぐことも避けること不可能だった。
瞬間、彼の身体が宙に浮き、すぐさま地面に叩きつけられる。少々強く痛めつけ過ぎだろうが、紫の能力は万能だ。健康と不健康の境界でも操って、心身共に回復してしまえばよい。放っておけば、死に至る様な傷だろうが、齢1000を超える賢者は、即死しないようには加減していた。
これでチェックメイト。ゆっくりと歩みより、青年の容体を確認しようとした。その時
「…が………………ゃん……!」
小さく彼が、誰かの名を呼ぶ。そして……あろうことか……
「まだ……だ…よ……や…も…………り…!!」
ノイズのかかった、まるで怨嗟に満ちた亡霊のようなうめき声。それと共に彼はもう一度、両の足で立ち上がったではないか。
まるで幽鬼のように……いや、実際幽霊に近い気配と、膨大な……分類するには難しい何らかの『力』を携えて、再び紫に迫る。
「っつ!?『幻巣 飛光虫ネスト』!」
背筋に悪寒が走り、とっさに初めてスペルを発動。無数の弾幕が、マヨヒガの庭を彩ったが、あろうことか――〈すべての弾幕が、参真の身体をすり抜けた〉
「!?」
「うあああぁぁあぁぁぁああ!!」
叫び、突撃しながら、並みのスペルカードに匹敵する弾幕を張りながら、紫に肉薄する。不測に不測が重なり、彼の猛攻をかわせない。いくつか被弾を被り――そして、彼が急に倒れた。
「えっ……?」
糸の切れた人形のように、完全に倒れ込んで動かない。呼吸も浅く、今度こそ力を使い果たしたように見えた。恐る恐る様子を窺うが、しかし何も起こらなかった。
(何だったのかしら……今のは……?)
余力を残していて、不意をついたようには思えない。あんな……弾幕を無効にしつつ、一方的に攻撃を続ける術があるのなら、自身があそこまで傷つく必要はないはずである。何かヒントがあるとすれば、彼は生きているはずなのに、あの状態は霊の気配を漂わせていたことぐらいか。
(じゃあ……行くところは一つね。こういう時、持つべきものは友達ね♪)
ぐったりとした外来人を抱えて、賢者は一人、スキマの中へと潜った。
「ちぇえええええん! ちぇええええええええええぇぇぇぇえええん!!」
「藍しゃまぁあああああああ!!!」
……その間二人っきりで、式二人は戯れていましたとさ。
橙と藍はほとんど出番なし。ごめんね!!
そして再び参真が覚醒。しかしその正体はゆかりんにも不明。次回で明らかになりまする。
……読み返してみると、参真と小傘似てるなぁ……勝ち目無くても喧嘩売ってるし、ちょっと覚醒して紫をびっくりさせてるし。