五十九話 S.K.Q
年が明けましたね! 今年も宜しくお願いします!!
その翌日――参真はさとりに呼び止められ、こう言われた。
「参真。今さらですが、地上に出る方法が見つかりましたね。こいしに連れられて行けは、誰にも見つかることはないでしょうし、こいしも大した負担にはなってないでしょう?」
「「あ」」
指摘された事実に、全く気付いていなかった二人は間抜けな声を漏らす。素早く横から従者二人が、どこからともなく現れて……
「「さすがさと……」」
「「そのネタはもういいよ!!」」
以前と同じ事象が繰り返されそうになった時に、すかさず参真とこいしが言葉をカット。実の姉弟さながらの連携に、さとりはクスリと笑い、悪意たっぷりに続けた。
「ふふふ……気がついてなかったの? 手のかかる弟だこと……」
「い、言い返せない……」
長女の暴言に拳をわなわなと震わせるが、実際思い付いていなかったのだから仕方ない。おそらくそんな心情すら読まれてしまうだろうし、こんな安っぽい挑発に乗るほど、参真は子供では……
「全くだよねぇさとりお姉さま……本当に頭の片隅にもなかったの? ぐ・て・い♡」
と、彼が必死に堪えていた所に、いきなりお嬢様口調で、こいしが毒を吐いてきた。心に余裕のない青年は、振り向きざまに叫ぶ。
「こいしお姉ちゃんは気がついてなかったでしょ!?」
「あなたを試してあげたのよ?」
「嘘だっ!」
迫力のある大声を上げ、こいしの戯言を吹き飛ばす。面喰らったこいしは、慌てて次の言い訳を探した。
「えっと……無意識に気がついていて――」
「嘘だっ!!」
「実はちょっとした意地悪で――」
「嘘だっ!!!」
「……昨日は外に出れない日で――」
「嘘だっ!!!!」
あっさりとプライドを投げ捨てた参真は、全力でこいしを責め立てる。
「う、うわーん! さっぶーが反抗期だぁ!! お姉ちゃーん!!」
「仕方ないわよこいし……この年代の弟は気難しいのよ……」
すると、こいしもなりふり構ってなれなくなったのか、普段の口調に戻して姉に泣きついた。いつの間にか、彼が悪役にされている。
「うう、あんなにいい子だったさっぶーがぁ……『こいしお姉ちゃんと結婚したい』と言ってくれていたさっぶーがぁ……」
「夢見る少年ではなくなってしまったのよ……現実の厳しさに当てられたせいで……でも 今は暖かく、弟の成長を見守りましょう……」
「お姉ちゃん!!」
すべてのセリフを言い終わると同時に、がばぁ! と妹はさとりに抱きついた。このシーンだけ見れば、非常に微笑ましいものであるが、前フリのせいで参真にとっては台無しだ。突っ込みどころが多すぎて、もはや言葉をかける気も起らない。とりあえず――
「……黒子役、お疲れ様」
目立たないように動き回り、今も古明地姉妹のポケットに小道具を放り込むなど、地味なアシストを続ける、従者二人を労う弟だった。
今度は日常回の連打! メリハリは大事ですね!!
……ちなみに、タイトルは『それが古明地クオリティー』の略です。……スペルが間違っていないことを祈るばかりw