五十七・五話 多々良小傘の憂鬱な一日
久々に小傘のターン! 前回の番外の続きだよ!!
「う、うーん……」
どれぐらい私は眠っていたんだろう? とにかく、私が目を覚ますのは久しぶりだった。上手く動いてくれない身体が、そのことを教えてくれる。
いつの間にか入ってた布団に潜ったまま、ゆっくりと瞼を開けてみる。
……あれ? ここ、ご主人さまに拾われた部屋の隣だ……
どういうこと? 私たちはもう、命蓮寺を出たと思ってたのに……もしかして、今までのは全部夢だったの?
「ああ、目を覚ましたんだね。小傘くん。久しぶり」
「……」
むくり、と身体を起こして隣にいた小さな妖怪に……ナズーリンだっけ? その子の方へと私は向き直った。そのまま無言で、私は首を動かしてご主人様の姿を探す。
「まぁまぁ、落ち着いて。今はどういう状況か、私たちもわかっていないんだ。君はぼろぼろになって、この寺の前で倒れてたのだけど、覚えているかい? 参真くんも見当たらないし――」
「う……うぅ……うわああぁあぁぁぁぁあああぁん!!」
ご主人さまの名前が出てきて、
そしてご主人さまが近くにいないと知って、
あれは夢じゃなかったってわからされて――私はつい、ちっちゃい彼女の胸で泣き崩れた。
聡い彼女は、ちょっとだけ驚いたけど、やさしく私の背中をさすってくれて、
それがまた、ご主人さまみたいで余計悲しくて、
とにかく私は、泣くことしかできなかった。
***
「や、八雲紫に参真くんがさらわれて……」
「地底に叩きこまれたの!? 最悪じゃん! あそこは人間を良く思ってない妖怪がうようよいる!!
さとりのとこに逃げ込めればいいけど、そうでなかったら……!」
「村紗、こうしてはいられません! 急いで地底に行きましょう!! 雲山も準備しておいてください!」
私が三人に事情を話すと、すぐに村紗と一輪は地底に行こうと言ってくれた。
「わ、私も……!」
ご主人さまの元へ早く行きたくて、傷だらけの身体を起こす。
けれども、霧状の妖怪にもう一回寝かしつけられ、船幽霊の彼女に止められた。
「無茶言わないで! 妖怪の賢者と正面からぶつかって、無事だったのが奇跡なのよ!? 身体も心も疲れきっているのに、あんな危険地帯に連れていけないわ!!」
「村紗の言うとおりだ。眠りっぱなしで食事もとってない、参真を失って心は疲弊し、八雲紫と戦って身体はボロボロ……とてもじゃないが、ここから出ていけるとは思えないな」
「でも……っ」
必死に食い下がるけど……本当はもうわかってる。こんなんじゃ、私はとても弾幕ゴッコの一つも出来そうにないことに。
うなだれたまま無言でいると、ドタバタと誰かが廊下を走ってきた。
「どーしたのさ騒がしい……って小傘じゃん! おっひさー!! 参真は?」
私に気がついた、私の目みたいな翼の色の彼女は、元気いっぱいに私たちに声をかける。そういう空気じゃなかったんだけどな……
しぶしぶ彼女にも説明すると……
「小傘っ……よくゆかりんと正面から戦ったね……!! そのガッツを人を驚かすことに使おう? 命蓮寺の墓場で人を驚かして、まずはお腹いっぱいにならないとね!! やり方は私が指導してあげる! さぁ小傘よ! あの妖怪の星を目指すのだ……!!」
「ぬえ先輩っ!!」
熱く私を抱きしめ、宙に浮いていた何かを指さしている。
言ってることはよくわからないけど、とにかく私のことを心配してくれているのだけはわかった。
そのまま彼女につれられて、しばらくの間私は、変な幽霊っぽいものが漂う墓場で人を驚かしまくることになる。
もう一度、ご主人さまに会える日を信じて――
ぬえは熱い先輩キャラ属性、そして本編で立てた誰得設定のおかげで、無事救出フラグ成立。キャプテン・ムラサと一輪&雲山ペアの出番も確保できました。
それと、大事なお知らせを。たぶんあと十話以内に神霊廟編行きます。もう三カ月経ちましたし、いいですよね! ……ね!