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五十七話 西本 参真の慌ただしい一日

 も う 何 も 怖 く な い !

(訳:軽いノリだよ! 就活? 何のことだ?)

「そぉい!!」

「ウボァー!?」


 奇妙奇天烈な悲鳴と共に、参真は本日27度目の敗戦を喫した。

 彼の体調が回復したので、地霊殿の住民に誘われ、弾幕ゴッコをすることとなったのだが……力を使えないのをすっかり忘れていた参真は、それはそれは無様な戦いっぷりだった。


「……スペルカード使う前に終わっちゃったね。一回も勝ててないよ~お兄ちゃん♪」


 ニコニコと笑顔を振りまきながら、さとりの妹、古明地 こいし は彼をからかう。参真はがっくりとうなだれたままで、反論する気力もないようだ。


「お兄さん……よく地底で無事――じゃにゃかったから、川に浮いてたのか。お空に拾われて運が良かったね」

「うにゅ?」


 お空は訳もわからず首を傾げるが、全くもってその通りだと青年は思う。下手したら――否、下手をしなくとも、死んでしまっていた公算が強い。こうして呑気に弾幕ゴッコをすることは出来なかっただろう。


「そうですね。今頃お燐に使われる怨霊の一つになっていたでしょう。力にも制限がかかっているようですし」

「ええ……でもよりにもよって、調子のいい時の僕のスペカを使わないでくださいよ……何の当てつけですか……」


 地霊殿の住民全員と総当たりし、現在見事に27連敗。何せ今の彼は、地上にいてもスペルカードを使

用できず、空は一分と飛んでいられない。放てる弾幕の量は雀の涙、質はスカスカで、当たってもダメージにならなかった。

 そんな状態でさとりと戦い、彼女は参真のスペルを使ってきたのだ。ものの見事に心をへし折らたのは、言うまでもない。


「うにゅう……あのレーザーとか、いろんなとこから飛んでくるのいやだったよう……」


 その後、ベストコンディションの参真の弾幕を再現したさとりと、お空で戦ったのだがこちらも惨敗。彼のスペルカードを、正面から火力で押し切られてしまっていた。本調子だったとしても、参真はこの人たちに勝てる気がしない。


「落ち込まないでよお兄ちゃん! 私たちに勝てる人間の方が少ないよ?」


 見た目年下のこいしが、ポンポンと彼の頭をなでる。……実際そうなのだろうが、やはい一勝ぐらいはしたい。が、


「やめたおいた方がいいでしょうね。すでにボロボロですし」

「く……くそぅ……」


 泣きの一回でこいしと対戦したものの、結果はスペルカードを使われる前にこちらが被弾。あっさりと幕切れと相成った。最高記録は二枚目のとこまで行っているだけに、消耗しているのは明らかである。


「ふふふ……それじゃあお兄ちゃん! 私の言うことを聞いてもらうよ~!!」


 負けたらひとつ言うことを聞くという条件で、最後の一回を引き出したのを思い出し――こいしはニンマリし、参真は顔を青ざめながら次の言葉を待った。 


「これからは、『こいしお姉ちゃん』と私のことをよびなさーい!!」

「「「「……ええええぇぇぇええぇぇええ!?」」」」


 思いもよらぬ命令に、参真はおろか、お空も、お燐も、さとりも驚く。


「こ、こいし様!? 何をおっしゃっているんですかにゃ!? つまり彼を『弟』にすると!?」

「ん~そうなってもいいかな~いつも『お姉ちゃん』って呼んでばっかりだったから、呼ばれる側になってみたいなぁ……ってね☆」

「え!? じゃあこれからは参真のこと、『弟様』って呼ぶの!?」


 混乱する従者二人に、悪ノリ全開なこいし。そこにさとりの追加攻撃が入った。


「じゃあ私は、『さとり姉さん』でお願いしますね」

「うにゅ!? ええぇぇええと。なんで!? なんで!?」


 ただでさえ混乱しているお空は、うまく頭を働かせることができずに、視線をさまよわせる。ショート寸前な彼女に、お燐は助け舟を出した。


「こいし様の弟ににゃる訳だかにゃ、さとり様の弟にもにゃる訳よ。これで大丈夫?」

「う……うん!」


 なんとかこちら側にお空を連れ戻し、改めて青年を皆で見つめる。


「……い、言わなきゃ……ダメ?」


 まさかの要求にたじろぐ参真だが、古明地姉妹はそっくりな笑顔で、無言で参真を促した。


「う、うぅ……さとり姉さん、こいしお姉ちゃん……」


 羞恥に顔を真っ赤にさせて、蚊の鳴くような声で絞り出す。年としては間違っていないのだろうが、彼女たちを『姉』と呼ぶには抵抗が大きすぎる。


「人の感覚だとそうでしょうね。妖怪(わたしたち)の間では普通ですよ」

「見た目が逆なんてよくあるよ? 私もお姉ちゃんと……百歳ぐらい離れてたっけ?」

「ええっ!? それが普通なんですか!?」


 本日何度目かの大声を上げ、弟(仮)は目を見開く。


「どんな妖怪かにもよりますが……地底の妖怪だと、五十歳くらいが年の差の平均のようです。外の妖怪も、大体同じだと思います」

「? なんでそんなこと知ってるの? お姉ちゃん」


 いつの間に調べたのか、青年が気になっていたところに、こいしが尋ねる。すると、さとりは堂々と胸を張って、顔を引き締めてビシリ! と言った。


「地底の住民の管理は、私の仕事の一つですから」

「「さすがさとり様! そこに痺れる憧れるぅ!!」」

「それほどでもないわ」


 すばやくはやし立てる従者(ペット)二人に、涼しげに答えるさとり。本人たちはご満悦だが、こいしと参真はおいてけぼりを喰らっていた。再びこいしが口を開く。


「お姉ちゃん……お燐……お空……何やってるの……」

「ふふ、驚いた? お燐とお空をちょっと躾けて、私のネタについてこれるようにしたのよ。すごいでしょ?」

「もうやだこの人……」


 疲れたように……実際疲れているのだが、ますます疲労をため込んだかのように、溜息混じりに参真はぼやく。しかし、さとりはそんな彼にも容赦などしない。


「呼び方だけですけど、一応あなたの『姉さん』ですよ? もう少し言いようというものが――」

「さぁさぁお兄ちゃん! ちょっと散歩しよ!!」


 さとりが話し終える前に、こいしは強引に参真の手を引いて、そのまま飛び去っていく。


「あ! こいし!! 妹なのか姉なのかはっきりさせなさい!! それと、ちゃんと夕飯までには帰ってくるのよ!!」

「いやいやいや! 言う順番逆でしょう!?」

「お兄ちゃ――さっぶー、お姉ちゃんにいちいち付き合っていると疲れるよ?」

「何気に気にしてる!? そして何そのあだ名!?」


 鋭く突っ込みながら、彼らは空へと飛んでいく。

 結局彼が地霊殿を去るまでの間、参真は二人を、『姉』と呼び続けることとなった。


 まさかのこいしが姉属性獲得。さらにネタキャラ化するさとり! どうしてこうなった……

 ようやっとこいしを出せました。なお、参真君の戦闘描写をいれようか迷いましたが、見どころがないので全面カット。キンググリムゾン!!

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