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五十六話 過ぎたるはなんとやら

 ヘイ! お待ち!! 最新話だよ!!

 ちょっと就職活動で忙しくなりますので、更新ペースがさらに遅くなりそうな悪寒。


 申し訳ありませぬ……

 翌日――青年はかなりの早さで回復していた。

 まだ体力面は不十分と言わざるを得ないが、風邪の方は大分良くなっており、歩きまわることぐらいは出来るようになっていた。

 熱に関しても、一番つらい時期に比べればどうということはない。


「それが今朝……いいえ、お昼に起きた人の考えることですか?」

「うぐ……」


 さとりに思考を読まれ、胸を押さえる参真。

 昨晩はよく眠れず、おまけに病気で寝付いたらぐっすりで、目を覚ました時は皆、昼食時だったのだ。


「仕方にゃいよ。一歩間違ってたらアタイのコレクションになってたわけだし。それはそれでありだっけどね」

「かんべんして下さいよ……あ、お空ちゃん、醤油とって」


 遅く起きたので、もうほとんどおかずは残っておらず――あるのはこんがり焼けた食パンのみ。彼女は参真の手元と、醤油瓶を交互に見る。どうにも信じられない光景らしい。


「けっこうおいしいんだよ? 周りには理解されなかったけど……」

「うにゅ? そうなの? ……お腹壊さないでね?」


 ……微妙に気づかいの言葉が、胸に痛い。ちょっぴり空気が悪くなったような気がしたが、気を取り直して、黄金色(こがねいろ)の食パンにまんべんなく醤油をたらす。

色合いが茶色に近くなり、見てくれが悪くなったのを見て「うわぁ……」とお燐がつぶやく。お空も同じことを考えているのか、顔が渋い。さとりだけは興味津々と言ったところだ。


「え、えっと……そんなに見られると食べずらいですよ……」

「まぁまぁ、気にせずどうぞ」


 笑顔でさとりに促される。彼女だけは、このパンがまずくないことを読んでいるからだろう。困った人だなぁと思いつつ、もぐりと頬張る。……うん、うまい。

 そう言えば、こうしてパンを食べるのも随分と久々だ。一体どこで売っていたのだろう?


「幻想郷にもパン屋ぐらいありますよ。トースターとその電源? 電気は河童たちが作った核融合炉で賄っています。トースターは、向こうで旧型になったものが入ってきているようです」


 参真の疑問を読みとり、彼が尋ねる前にさとりは答える。こうして見ると、やはり自分たちは似てるけど、違うということを実感させられた。


「なるほど、核融合炉……と、とんでもないものがありますね……」


 ぼんやりと反復した単語の中に、オーバーテクノロジーが含まれていたことに気がつく。忘れ去られるどころか、まだ実現できているかも怪しいシロモノであり、幻想入りなど考えられない。


「ああ、お空のおかげですね。お空は核融合を操れますから」

「うにゅ!」


 誇らしく胸をはる彼女とは裏腹に、大層な能力だなぁ……と純粋に感心しつつ、ここに来た時の会話を思い出していた。


(もしあの時『温めて』って言ってたら、黒こげだったのかな……?)


 風邪の参真を気遣って言ってくれたことだったが、核エネルギーで焼かれたら骨まで消し飛びかねない。そのことを想像すると、背筋に冷たい汗が流れた。本人は全く悪気がないだけに、これは参真の能力では察知できない。


「……後でお空に言っておきますね」

「そうしてください。誰かが犠牲になる前に」

「「???」」


 従者(ペット)二人をよそに、会話を成立させるさとり参真。彼は部外者だからまだいいが、もしこれをさとりやお燐に実行してしまったら、悲劇を通り越して喜劇になり得る。


「見事な爆発オチと感心しますが、どこもおかしくはありませんね」

「そんなんで地霊殿を破滅させないでください……止められるのは、主人であるさとりさんだけですよ!?」

「あら? このネタを知らない……? わざわざ外来の人に教えてもらった前振りだったのだけれど」

「……僕が興味を持ってなかっただけだと思います」


 心を読まれながらも、彼女と平然と話を続ける。会話の外に弾かれたお燐とお空だったが、その表情は明るかった。


「さとり様、楽しそうだにゃあ……」

「うにゅ。参真はいい人! 忘れない……たぶん」


 こうして普通に会話できる相手が、さとりにはどれだけ貴重なことかを、この二人は知っている。きっと彼なら……こいし様とも仲良くしてくれるだろう。


「……クスクス」

「え!? あれ!? 僕変なことを考えてましたっけ!?」

「さぁ? なんのことでしょう?」


 急に笑ったさとりに、焦る参真。おそらくお空たちの心情を読んだでの反応なのだろうが、残念ながら彼にそれを見分けることは出来ない。


「やっぱりその能力ずるいですよ! 僕のと交換してください!!」

「だが断る……というより、出来ないわ」

「そのネタは流石に知ってますよ!?」


 ……こんな感じのやりとりがしばらく続き、いつの間にか夕方になっていて、怠っていた仕事を大慌てですることになったのであった。

 何もすることのない参真は一人、壁の隅っこにて、床に指をなぞらせていたとさ。


 日常……っぽい回投下。

 さとりはよく突っ込み役に回っていることが多いイメージがあったので、あえてボケ役機用。読心能力で会話のペースをつかみながら、相手を翻弄します。……ものすごくタチ悪いですね……


 それと、前半の食パンにしょうゆですが……なんで誰もこの食べ方しないのでしょう? 家族にまでどん引きされましたが、普通に旨いですよ? これ。

 バターライスと同じ組み合わせですもの。ご飯でやることをパンでやって何が悪いっ……!!

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