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五十三話 意外な接点

 さぁ! 独自設定の時間だよ!!

「参真。はい、あ~ん……」

「お燐さん。これ、何のバツゲームですか……」

「ほ、本当にお兄さんには悪いことをしたと思ってるよ……だから、その、あたいなりのケジメというか……」


 地霊殿の客室、参真が横になっている部屋にて。

 食事を運びに来たさとりの従者――火焔猫 燐が、顔を真っ赤にして青年の口元に、お粥の入ったスプーンを持っていく。


「さとりさんに言われてですよね?」

「うぐ……やっぱりわかるよねぇ……でもこうしないと、後でさとり様に心を読まれてバレてしまうよ……お兄さんも男だろう? 腹を括ってくれ!」


 グイグイと押し込むようにスプーンを口へ。ここで食べてもらわないと、お燐はこれより恥ずかしいことをしなくてはならないからだ。

 強引な彼女の行動に、参真はしぶしぶ口を開けて、運ばれたそれを咀嚼した。


「この年で『あ~ん』は恥ずかしいですよ……」

「そ、それはあたいも同じだよ!! 原因はあたいが勘違いしたのがいけにゃいんだけど……」


 そうして、お燐が青年を見渡すと……さとりが見に来たときより、重症になった参真がいた。

 あの後、仕事を終えたお燐が地霊殿へと帰ってきたのだが……ちょうどその時、さとりが参真の部屋から出て行くタイミングだったのである。

 赤く泣きはらした瞳を見て「さとり様を泣かせた」と、お燐は激昂。ドア蹴破って、もともとぼろ雑巾のように弱っていた参真を、さらにズタボロにしたのであった。

 後に、これがお燐の早とちりだったことが発覚。幸いトドメをさす前に事は済んだが、参真は全身を弾幕に焼かれ瀕死に。罰としてお燐は「参真をつきっきりで看病すること」を命じられてしまったのである。しかも――


“彼が回復するまで、食事は『あ~ん』させること。どうしても食べないようなら口移ししてください。あと、添い寝を命じられたら、おとなしく従うように。手を出されそうになったら、柔らかく断ってくださいね☆“


 と、さとり様に笑顔で言われてしまい――自分に非がある負い目から断るわけにもいかず――そして、今に至る。


「これで僕が『添い寝してください』って言ってて、さとりさんが実行してたら、僕は死んでたかなぁ……」

「……え!? そそそそそ添い寝!?」


『添い寝』という単語に反応し、耳まで真っ赤にして、お燐は舞い上がる。


「あ、いや、さとりさんが……『添い寝しましょうか?』って言ってきたんだよ。たぶん僕のトラウマを見てたからこその、冗談だと思うけどね」

「にゃ、にゃんだぁ……てっきりあたいへの命令かと……ああ、『添い寝』の一節はさとり様にゃりの冗談か……苦手なの?」

「……うん。星さんに見つかってレーザーで焼かれたよ……僕は悪いことしていないのに……」


 なんとなく、責められたような気分になり、尻尾をしゅんとさせるお燐。今回のことに関しても、彼は

紛れもなく無罪である。


(お兄さん、怒ってはいないけど、気まずいにゃあ……ん? 星? 聞いたことあるような……)


 霞がかかった記憶だが、どこかで聞き覚えのある人物の名に、お燐は首を傾げた。だいぶ前のことらしく、印象にも残ってないのか、なかなか思い出せない。


「あれ? もしかして星さんを知ってるの?」

「わかんにゃい……他に誰かいた? 又聞きかもしれにゃい」


 お燐は『直接会った記憶はない』のだが、客人の誰かがよく話していたような気がする。青年は視線を外し、中空をぼんやりと見ている。どうやら思い出してくれているようだ。


「聖さんとか、ナズーリンとか、村紗さんとか……あとぬえちゃんと一輪さんかな? あそこで星さんと一緒にいたのは――」

「あ! 村紗と一輪はよく遊びに来てたよ!! ぬえはお困り者だったけどね……元気にしてた?」


 懐かしい面々の名前に、お燐は歓喜の声を上げた。ここ最近訪ねてきていなかったものだから、少し気にはなっていたのだが……


「みんな元気にしてましたよ。知り合い?」

「そうにゃるのかね? さとり様のお友達で、一緒によく話をしてたよ。村紗は力の強い幽霊だったから、あたいもよく覚えてる。できればあたいの配下にしたかったにゃぁ……」


 努力の末に、怨霊を操れるようになったお燐だが、極稀に自分の力だけでは、怨霊を制御しきれなくなることがある。

 その時は、自分に懐いている怨霊と共に鎮圧するのだが、村紗のように、力と意思の強い亡霊が補佐についてくれれば、制御が格段に楽になると思ったのだ。

 結局のところ、「聖にまだ恩返しをしていないから……」と断られてしまったのだが。


「そうだったんですか……地上に帰ったら、伝えておきますね」

「にゃにゃ!? そいつはありがたい! みんなを連れて遊びにおいでと言っといてくれ!! あの能力のせいで、さとり様は友達が少ないからにゃぁ……」

「難儀ですよね……いやなモノを散々見てしまうのでしょう?」


 沈痛な面持ちで、参真が顔を伏せるが――お燐は不敵に笑って見せた。


「そうだね。さとり様の悩みの種だけど……なら何で、第三の目をさとり様が閉じてにゃいかわかるかい?」

「……? 『覚という妖怪であるため』だからじゃないんですか?」

「ノンノン! それが違うのさ……確かに『負の感情』を直接見てしまうけど……同時に『正の感情』

……例えば感謝とか、優しさとか――そういったものが見れなくなるのが惜しいから、さとり様は心を閉じたりしないのさ。

 ほんとはすごく優しい方だからね、さとり様は。でにゃきゃ、あたい達はあの御方について行ってにゃいだろうし、封印された直後の村紗と一輪の心を読んで、その場で一緒に泣いてあげたりしにゃいからね……」


 しみじみと、お空が『なぜ第三の目を閉じないのか?』と聞いたときの事を、思い出す。あの時のさとり様は――表現するのが無粋なほど、綺麗だった。


「そっか……これは後で、さとりさんに謝らないといけないな……」

「うにゃ? 特に悪いことはしてないんじゃ?」


 なぜか青年は、深刻な表情を一層深くしてボソボソと呟く。


「……僕は、さとりさんの能力を聞いたとき、彼女に同情したんだけど……今の話を聞いて、わかったんだ。

 僕には――『さとりさんの気持ちが、絶対に理解できない』って。だから……同情なんてする資格は、なかったんだよ」


 彼から紡がれたその言葉は――まるで懺悔の様な響きだった。


 一輪&村紗と、地霊組は面識があるという設定です。

 心優しいさとりんは、二人の聖への想いに胸を痛めたというお話。イイハナシダナー


 そして、お燐に看病とか羨まし過ぎるだろパルパル! な、回にしようとしたのに、最後シリアス入っちゃった……イイハナシダッタノニナー

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