四十九話 彼が幻想になった理由Ⅰ
さて……ついにこの時がやってまいりました。
分割しながら進めていきますね。
彼の記憶、その奥底まで潜り、幼少期まで遡る。
……六才ぐらいに差し掛かると、記憶が曖昧になっている箇所が、多くみられるようになったので、それ以上昔のことを見るのはやめることにした。
改めて、青年が何をしてきたのかを探るが――存外あっさりと、彼が何をしているかはわかった。
(……ほぼ毎日絵を描いていますね。ほとんど破り捨てているようですが、出来は十分……ああ、そういうことですか)
幼いなりに、それなりの絵を描いていたが「気に入らない!」と投げ捨てていた。さとりは始め、もったいないと思っていたが……彼の視点で見ることで合点がいった。
その絵は、被写体になったものと比べて「不自然」だったのである。どうやら参真の能力は、生まれつきのものだったようだ。
なんでそこまで「絵を描くこと」に執着しているのか、きっかけを探ってみるも、青年の心情としては「楽しいから」としか感じられない。
描き始めたのも、誰かに言われたのではなく、部屋に転がっていた六角形の棒……「鉛筆」という道具で描き始めたら、楽しくなって続けていたようだ。
(家族とはほとんど会いませんね。兄二人は双子ですか……また喧嘩してますね)
顔がそっくりな二人の人物が、取っ組み合うシーンはこれ以降も何度もあり、うち何回かは参真が仲裁している。母親がおらず、父親も働き詰めでほとんど家にいないようなので、二人の喧嘩を止めるのは、参真の役目だったようだ。
といっても、参真が絵を描いている時は、兄弟のことよりも、絵のほうを優先したらしい。おかげであまり兄弟で遊んだ記憶もなく、辛うじて彼が記憶しているのは、まつぼっくりを投げ合って遊んでいることぐらいか。
(家庭では苦労していたようですね。本人はあまり気にしてはいないようでしたが……つっ!?)
そして、父親が帰ってきた箇所で、さとりは絶句することになる。
(な、なんなんですかこの人間……!?)
参真の父親……「西本 平家」には、ありとあらゆる「表情」がなかった。いや、それどころか――感情があるかどうかすら怪しい人物だった。
青年の記憶にある父の記憶のどこを探しても、笑顔も怒鳴り声もない。叱ったり褒めたりはするのだが……声色に抑揚が一切感じられなかった。
表情も一切変化がなく、その心情を全く図ることができない。さらにおかしなことに――参真の瞳には、この人物の状態が「自然」に見えていた。
……これが事実なら、彼の父親は「表情がないのが自然体」という、歯車のずれた人間ということになる。彼の能力についての記憶を探るも、このころはまだ「見え方」まで変えることはできず、「自然体か否か?」しかわからなかったらしい。
(どういうことですかこれ……? 何をどう見ても異常ですよ?)
……彼の記憶によると、母親は参真が三才の時に離婚したそうだが……原因は父親なのではないだろうか? 表情がないのが当たり前の人間と、一緒に住みたいとは思わない。
無茶苦茶な家庭環境にも関わらず、彼にとってトラウマとなるような出来事は見つからなかった。自由に絵を描けていれば、それでよかったらしい。
(それはそれで、どうなんでしょうね……)
当時の参真の心情にも首をかしげつつ……さとりは、過去を見る範囲を変えるため、彼の幼少時代の過去から立ち去った。
さとりん視点で、参真君の過去を追想していきます。これは幼いころの記憶。彼のいた環境についてですね。
過去の見え方についてですが……パネルディスカッションのように見ていると考えてもらえればわかりやすいかと。それ+当時の心情や、画像、音声なども見れるような感じです。印象深い出来事を、断片的に覗くような感じになっています。
感想にも書かれていましたが、まつぼっくり合戦は、彼の過去から生まれたスペルカードということになっています。感想くれた方、返信できずにすいませんでした!
過去の見え方を、もっとわかりやすく説明してくれ? この表現だとちょっと危ない感じですが……「パワーなんとか」というソフトで、出来事をまとめてみているような感じです。本編にもこう書こうかとか、ディスカッションと表現しようか迷いましたが、さとりが知ってるわけないのでボツになりました。
……うん? こんな時間に誰だろう?