四十八話 能力に振り回される者たち
久々の一日二話投稿だぜヒャッハー!!
作者の脳内から……妄想が逆流する……!!
いつも通りのあいさつを終え、古明地さとりは、彼の心を観察していた。
以前はこの能力を隠して、人と接しようとした時期もあったが、能力がばれた時に糾弾されたことがあり、以降、初対面の人間でも、始めからカミングアウトすることにしたのだ。
そちらの方が後々面倒くさくないし、自分が嫌いならすぐに避けてくれる。人々の本音が渦巻き、それがすべて聞こえてくる中で、平然と表情を繕うのは流石に無理があった。
(さて……彼は何を考えているのでしょうか?)
多くの人間は、動揺し、混乱し、軽蔑し、恐怖する。少なくても、あまりいいこととは思えないはずだ。現に彼は動揺していたが……そこから先が違っていた。
……彼から流れ込んだのは、深い憐みの念だった。安っぽい同情ではない。それは、直接心を読めるさとりだからこそ、わかるものだ。
「そう……ですか。その能力は、オンオフを切り替えられますか?」
「いいえ、表層や記憶といった、読む範囲の深さなら変えられますが、心を見ることをやめることはできません。妹はいやになって、強引に第三の目を閉じてしまいましたが……」
「……いやにもなるでしょうね。僕の能力も、似たようなものですから」
こういう時、さとりの能力は便利だ。いちいち説明を求めなくとも、彼の記憶を読みとってしまえばいい。
「『自然か不自然かを見分ける程度の能力』ですか。なるほど……特別な訓練でもしていれば別ですが、人が嘘をつくときには、不自然な動作があるものです。
あなたはそれを見分けられてしまう。つまるところ私と同じように、本心でない人々の関わりが、理解できてしまうということですね」
「……」
返事はないが、彼の心は肯定している。口に出したくもないほど、そのことを語るのが嫌だったようだ。
「ずいぶんなトラウマのようですね。よほどつらい目に遭いましたか?」
「ええ……おかげで対人恐怖症です。妖怪の人たちと話す分には大丈夫みたいですが。あんな目に遭うまでは、特に気にせずにすんだのですが……」
あまり深く心を読んでいないにもかかわらず、恐怖がひしひしと伝わってくる。
(気になりますね、これは……ちょっと覗いてみましょうか)
彼のトラウマの内容が気になったさとりは、能力の範囲を拡大し、彼の記憶をだどっていく。
――この行動がいかに軽率だったことか――
そしてさとりは知ることになる。
彼が、幻想になった理由を――
次回から主人公の過去編開始! かなり長くなりそうです。
主人公の人間嫌いは、所々に伏線を仕込んでありましたが……一番の伏線は、やはり第一話からの話の展開ですね。
人里行きを断り、射命丸の申し出も辞退していますが、彼女の取材したいという下心があり、言動が「不自然」に見えたのでここでは断っています。宴会の時と同じですね。
その後の展開で人里を目指さないのは、人間を避けている傾向があるためです。話が進むにつれ、いくつかの場所を回り、幻想郷の文化レベルが低いのを理解しているのだから、彼にとっては人里の光景も「珍しいもの」に入ります。
にも関わらず、悉く「人里に行く」という選択肢が出なかったのは、違和感を感じた人もいるのではないのでしょうか? 幻想入りの拠点になりやすい場所故、分かりやすい伏線だったかもしれません。
何気に今まで接触していた人物も、早苗さんを除いて人間とは言えないのも、彼の人間嫌いを暗示しています。
早苗さんは、現人神である+早苗さんの裏表のない性格が幸いし、参真君もそこまで毛嫌いしていませんでしたが、初対面の所では早苗さんを警戒する動作があります。
長々と解説失礼致しました!!