四十四話 リアル鬼ごっこⅠ
更新遅くなったけど、ようやく話は……あんまり進んでねー!
ゲーセン通いした結果がこれだ。アハハハハハハハハハ!!(水没)
わけもわからず、参真は逃げ回っていた。
追いかけられる理由はよくわからないが、捕まったら何をされるかわからない。普段はのんきな彼も、さすがにこれは、生命の危機だと判断できた。
「ふぅ……」
狭い路地裏に身を潜め、大通りの様子をうかがう。
どこか駆けこめないかと、人間を探してもみたが……どんなに人の容姿に近くても、人間として視ると「不自然」な人物ばかり。ここは妖怪の町らしい。
(余裕があれば、絵を描きたいけど……どうしたものか……)
とりあえずは自分の能力を駆使し、あの二人が「不自然」に視えるように指定する。これで妖怪だらけでも、追っ手が来ればすぐわかるはずだ。
「よぉ! 珍しいじゃないか! 人間が旧都に来るなんて!!」
「うわぁ!?」
正面に気を取られていたところに、後ろから豪快に話しかけられた。思わず尻もちをつきながら、参真が後ろを振り向くと……
「おお? そこまで驚かなくたっていいじゃないか。肝っ玉の小さい男だねぇ……」
そこには立派な一本角を生やした、金髪の女性の鬼がいた。
手には杯、上半身は昔の体操服に似たものをを着用していて、本来ならアンバランスに感じられそうな格好だが……妙に様になっている。
「おーい? 大丈夫かー? 今度はボーッとして……まさか一目惚れかい?」
「えっと……その一歩手前でした。こんな状況じゃなきゃ、すぐ絵に描き下ろしたいぐらいですよ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないの! この色男~!」
少々酒臭いのが気になるところではあるが……話が通じることから、この場で焼いて食われることはなさそうだ。
「で? なんでここにいるんだい? 昔の地獄なんざ、観光できても面白くもないだろうに」
彼女が質問してきたが、参真は返答に詰まった。彼自身も、今の状況をよく理解できていない。が、鬼なら何か知っている可能性もあると思い、正直に話してみることにした。
「目玉だらけの空間に落とされて、ようやく抜け出せたと思ったら、ここにいたんですよ……信じがたい話でしょうけど」
「そりゃスキマだねぇ……なるほど、それならスジは通る。その感じだと、ここがどこかわかってないってわけか」
「ええ、全く……さっきまで迷いの竹林にいたんですが……」
予想は当たったらしいが、スキマとは何だろう? どこかで聞いたことはあるような気がするのだが……思い出せない。
「ここは昔、地獄だった場所だよ。今は地上から見放されたり見放したりした、鬼やら妖怪やらが集まって、毎日どんちゃんやってるところさ。
まぁ、人間をよく思ってない奴らも結構いるから、早めに地霊殿に駆けこむなり、地上に戻った方がいいよ。見たところ、霊力も雀の涙ほどしか持ってないようだし……ん?」
「げ! すいません、ちょっと隠れます……!」
彼女の後ろから、「不自然」に視える妖怪が一人現れ、慌てて参真は身を隠す。
その妖怪はしばらく参真を探していたが、結局見つけることもなくその場を去った。
「……あんた、何やらかしたんだい?」
「目の前にいたら、勝手に鬼ごっこの逃げる役にされました……酒の何かで揉めていたみたいですが……詳しくはわかりません」
頭を抱えながら、青年は答える。いきなり巻き込まれて逃げ回る羽目になり、しかも命の危険にさらされるという……幻想郷に来てからというもの、どうにも不幸な出来事ばかりのような気がした。
「よくわからんが、そりゃまずいね。鬼は勝負事にゃ、うるさい種族さ。逃げきるのは難しいだろうし、できればアンタがのしちまうのが、一番後腐れがないんだが……」
「そのことなんですが……ここで自然のある場所を知りませんか? 僕が力を使うのには、近くに自然が必要なんです」
なんとか反撃の糸口を見つけたくて、彼女に質問をぶつけてみたが、その表情は芳しくない。
「そう言われてもねぇ……ここは人工の都市だ。洞窟とかならあるかもしれないが……はっきり『自然』と言い切れるものは、私にゃ思い当たらないな」
「ですよね……とりあえず地霊殿の人に聞いてみます。……辿りつけられればですけど」
「そっか。んじゃ、これ持っていきな。ちなみに、現在地はここ」
ヌッと差し出されたそれは、ここいら一帯の地図のようだ。
「いいんですか?」
「ああ、ここいら一帯なんて庭みたいなもんだから。いくらでも予備なんてあるし、何よりアンタ、ここがどんなところかわかってないだろ?」
「助かります。えっと……」
礼を言おうとして、参真は彼女の名前を知らないことに気がついた。こちらも名乗っていないので、当然といえばそうなのだが。
「あたしかい? あたしは勇儀。『星熊 勇儀』さ。あんたは?」
「西本参真と申します。勇儀さん。ありがとうございました……それじゃ、ちょっと逃げてきます!」
「ま、頑張ることだね。生きてまた会えたら、一緒に酒でも飲もう」
クッと杯を上げ、彼女は参真を見送る。
……後に、彼女が「鬼の四天王」ということを知り、ここで絵を描き損ねたことを、全力で後悔した参真なのであった。
まさかの地底編に突入したことが、ようやく明らかになりました。
あそこは都市+地下なので、植物はほとんどないという設定です。力の強さが「自然」という外部環境依存の参真君は、この場所は人里以上に最悪のコンディションです。はたして、二人の鬼から逃げ切り、地霊殿に辿りつくことはできるのか!?