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二十九話 望郷 されど……

 PV……10万突破……だと……!?

 こんなに伸びるとは……ありがとうございます!!

 ほんとにそれしか言えませぬ。感謝の……極みっ……!

(勢いできちゃったけど……どうしよう!?)


 守矢神社には、備え付けの風呂場があり、参真と小傘の二人は脱衣所まで来てしまっていた。

 諏訪湖様から逃げるようにここまで来たのはいいものの、体が入れ替わっているとはいえ、異性と一緒の風呂に入るというのは、やはりはずかしい。


「? ご主人様~どうしたの~?」


 そんな青年の心情を無視するかのように、小傘はいつの間にか全裸になっていた。初対面の時といい、小傘にはもう少し羞恥心というものを持ってもらいたいものだ……


「い、いや小傘ちゃん……もう少し僕の視線とか気にしようよ……」

「ふぇ? どうして?」

「もういいや……」


 一応忠言はしておいたが、何の事だかさっぱりの様子。今日だけでずいぶんと精神力を消耗していた彼は、ついに細かいことに突っ込むことを放棄した。青年もヤケクソ気味に衣服を脱ぎ棄てていく。


「おじゃましまーす!」

「うう……やっぱり恥ずかしい……」


 女性の体つきに違和感を感じながらも、全身にタオルを巻いて風呂場に入る参真、一方の小傘は、前をハンドタオルで隠してはいるものの、すぐにでも入りたくて仕方がないらしい。


「イィィィィィイイヤッフオオオオオオオォォォォオオッ!!!」

「ちょ!? 身体流してから……うわ~!?」


 我慢できずに、風呂へ飛びこむ小傘。衝撃と共に風呂釜から熱湯があふれ出し、参真に熱い津波が襲いかかった。たまらず彼は顔を覆う。


「うーん! 最高!」


 背筋をピンと伸ばして、身体をほぐす小傘。まるで悩みから無縁のような振る舞いは、参真には少し羨ましく見える。今の状態を思い悩んでいる自分が、なんだかバカバカしく思えてきた。


「……ええい、ままよ!」


 意を決して、彼も風呂場へと足を踏み入れる。こうなればヤケだ。なるようにしかならないと腹を括り、風呂の中へと入る。存外に風呂釜は大きく、二人で入っても余裕があるように見えた。これなら、三、四人ぐらいならゆとりをもって入れるだろう。


「……やっぱりお風呂はいいね」

「私、久しぶりで感激です! もしかしてご主人さまも?」

「そうだね。ドラム缶風呂ばっかり入ってたから、こういう風呂に入るのは久々かな?」


 命蓮寺には備え付けの風呂などなかったため、水浴びするか、身体を拭くのみだった。こうして湯船に身体を沈めるのは、ずいぶんと久々な気がする。


「どらむかん?」

「えっと……向こうの世界のもので、危ない液体を入れて運ぶためのものかな。これに水を入れて、下から薪で温めると……いい感じに風呂になる。失敗すると、下の方だけ熱くなりすぎて悲惨なことになるけどね……慣れるまで大変だったよ……」


 その時のことを思い出しながら、しみじみと呟く。ドラム缶は廃棄されていたものを拝借し、適当にブロックを拾ってきたまでは良かったが……火の勢いを強くし過ぎ、底だけ熱されてしまい、「上はぬるま湯、足元地獄」と呼ぶにふさわしい風呂が出来上がった……あれにはもう、二度と入りたくないと参真は思っている。その意識のおかげか、窯の温度調節は完璧になっていた。


「そーなんだー じゃあ、こうやって誰かとお風呂に入るのは初めて? 小傘が裸の付き合いデビュー!?」

「ううん。よく兄さんと入ってたよ。大分前の話だけどね……元気にやってるかな……真次兄さん……」


 遥か遠い……距離では表せないほど遠い地にいる、兄を思う。二男である真次には、参真が家を出るときに、顔を合わせることができなかった。この時兄は18だったが……アメリカの医学を学ぶために、海外留学していたせいて、連絡の一つも入れることができずに、参真は旅立つはめになっている。長男には……もう二度と会うことはないだろう。


「……やっぱり、元の世界に帰りたい?」


 参真の思考を遮り、小傘が声を発した。どことなく、不満で不安げな……細い声。


「……大丈夫。もしそうなっても、小傘ちゃんを置いて行ったりしないから安心して?」


『また捨てられる』と、思ってしまったんだろう。微かに震えていた声色を、青年は聞き逃さなかった。そっと頭の撫でてやり、彼女に微笑みかける。


「約束だよ!? もし置いていこうとしても、次元の果てまで追っかけてやるんだから!」

「それは困るよ……主にこっち側の管理者の人が」


 ……上手く、誤魔化せた。参真の返答に安心した様子の彼女は、身体を洗いに湯船から出ていく。もう、この話題を振ってきたりはしないだろう。


(帰りたい……か……)


 射命丸と名乗った鴉天狗記者にも、似たような質問をされたことを思い出す。普通ならきっと『帰りたい』と願うのが、普通の外来人なのだろう。けれども……


(珍しいものもある。自然もずっと綺麗だし、妖怪や弾幕ゴッコはこっちでしか見れない……でも、そんなのはきっと、後つけの理由でしかないよね。そうでしょ? 真也兄さん……)


 青年の本心は、ゆらりと湯気のように霧散していく。結局小傘が、青年の想いを知ったのは……もっと時間がたってからのお話……


 ほのぼの書いていたつもりなのに、最後にちょっとシリアス入った……

 入れ替わっているの、途中で忘れかけたのはナイショですww

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