二十八話 守矢一家 大暴走
ここから、参真、小傘の表記について注意。
二人の名前が出てきたら、彼らの「精神」に呼びかけています。
小傘って呼んでたら、参真 の体に入っている小傘のことを、
参真と言ってたら、小傘の身体に入っている参真のことを指します。
ややこしいですが……OK?
「「「「「いただきまーす!!」」」」」
そうして五人は、ようやく夕飯へとたどり着いた。
暴走する神奈子と早苗をなだめる作業は、相当に時間がかかり、他にも来客用の用意などなど……とにかく大変だった。あまり思い出したくはない。しかも――
「どうだい小傘? 美味しいかい?」
ニヨニヨしながら問う神奈子に、以前のような威厳は感じられない……結局のところ、彼女を以前の神奈子に戻すことは出来なかった。
「こんなに人の食事がいいものなんて……私感激っ……!!」
「そうかそうか……ほれ、どんどん食べな!!」
涙を流しながら食べる小傘に、満足そうに頷く神奈子。一見大げさそうに見えるが……小傘の視点でみると実に当然の反応なのである。
今まで小傘の食事は、人を驚かせた時の感情エネルギーと、道具として使われた時に発生する感謝の念を食べてきた。おかげで、普通の食事は嗜好品でしかなく、口から何かを食べた所で腹は膨れなかった。ところが、参真の身体に入っているおかげで、普通の食事の感覚を、初めて得ることができるようになっていたのだ。
「うう……食べても満腹にならないなんて、小傘ちゃんの身体は不便だなぁ……」
別の意味で涙を流しながら、箸をすすめる参真。彼は逆に、食事をしても空腹のままという苦痛を味わっているようだ。ご愁傷さまとしか言いようがない。
「神奈子様! 神奈子様! 参真くんを見てください……何か感じませんか?」
「なんだい早苗? 別に何も……」
「甘いっ! 甘いですよ神奈子様! 急に真面目なその態度……それもまたギャップなのです!! 本当に……何も感じられないのですか……?」
いつもより三割増しで荒らぶる風祝は、神奈子を暴走させた張本人でもある。もし彼女が変なことを言いださなければ、今頃は元の威厳ある軍神へと戻せたかもしれない。
「その発想はなかったよ。なるほど、そういう視点で見れば……ぐぶっ」
早苗に言われたあと、神奈子は熱い眼差しを参真に向け、勝手に鼻血をポタリと垂らし始める。
「もうやだこの神さま……どうしてこうなったんですか……」
リスペクト値をきりもみ回転で急降下させ続ける神奈子に、うんざりと呟く参真。ある意味原因は参真たちにもあるのだが、事故だし仕方ない。
「ところでお二人とも……お風呂はどうするのですかねぇ……? まさか、異性の全裸を見る訳にはいかないですよねぇ……」
「唐突ですね……確かにそうですけど……」
ブレーキを投げ捨てた巫女も、ニヨニヨと笑っている。彼女だけが、この状況を楽しんでいるようだ。
「ならば……私たちが身体を洗いましょう!! もちろん……参真さんと小傘さんは目隠しをしてですがね……ふふふふふ……」
「そうだな早苗……早苗は男性の身体を見るのはまずいから、私がそっちを担当しようかねぇ……ぐふふふふふ……」
どことなく犯罪者の香りを漂わせて、迫る二人。さすがにこれには、小傘と参真もドン引きだ。ジリジリと距離をつめてくるダメ神と巫女、ゆっくりと後ずさりする小傘&参真。いやらしい笑みに恐怖を覚える。その魔手が二人を捉えそうになった、その時……!
いくつかの弾幕が、ダメ神たちと客人たちの間を遮った。一斉に視線をそちらに向けると……
「いやぁ、私も久々にドタマにきちゃったよ……神奈子、いくらなんでも腑抜け過ぎ。早苗、私はそんな子に育てた覚えはないんだけどなぁ……二人とも、ちょっと根性叩きなおしてあげる。これから……たっぷりと、ね……」
祟り神オーラMAXの諏訪子様がそこにいて……ばっちり守矢組を睨んでいた。とたんにすくみあがってしまう二人。蛙に睨まれる蛇とはこれいかに。
「……ちょっと見せられないようなことするから、二人でゆっくりお風呂に入っているといい……大丈夫、こっちで二人は抑えておくから」
「え、えっと……」
「ゆっくり入っていってね?」
反論しようとした参真だが、有無を言わせぬ口調で諏訪子様に止められた……触らぬ神に祟りなし。空気を読んだ二人は、そそくさと風呂場へと退避していった……
「さ、二人とも……覚悟してね?」
「おおお落ち着いて下さい諏訪子さま! 私は神奈子さまに教えてあげただけでして……!!」
「そうだそうだ! ちょっとくらい、いいじゃないか別に! 私だってちょっと……」
「……だまって☆」
「「ひいいぃぃぃぃぃ!!」」
彼らが風呂場に行く途中で、二人の女性の悲鳴が、守矢神社にこだまする……
「ご、ご主人さま……ははは早く行きましょう!」
「そ、そうだね小傘ちゃん……一時間ぐらいかけて入ろうか……」
諏訪子様は、絶対に怒らせないようにしよう……入れ替わった従者と主は、そう心に刻みつけ、ゆっくりと進んでいった。
なんだろう、最近調子があまりよろしくない……
小説の投稿スピードも戻せないし、ゲームのスコアアタックやっても軒並み下回る……どうしてこうなった……