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二十四話 力の在り処

 ぐぬぬ……調子が戻らない……

 いつもより会話文多め、しかも説明回になってしまったのがマズかったか。見ていて退屈かもしれません……あとがきで、細かい補足説明をしますので、まずは軽く流して見ていってくださいな。

 早苗が飛び立った後、残された四人は少々困惑していたが……とりあえずは、神奈子は早苗の追跡、三人はそのまま神社にいることとなった。参真への説明を早めに済ませてしまいたいという、諏訪子の思惑である。こういうことは、勢いですましてしまいたい。


「それじゃあ参真くん……かなり時間をとるよ? 私が思っていた以上に、君の力は特殊で稀有で強力だ。おまけに、ちょくちょく質問を挟むことになると思う」

「はい、大丈夫です」


 期待半分、不安半分といったところだろうか? 参真はどことなくそわそわしている。隣に座っている小傘も、彼と同じように正座していた。諏訪子も姿勢を正し、改めて説明を始める。


「まず、いきなり矛盾するようだけど……君の使っている力は、君のものじゃない」

「それは、なんとなくわかっていました。辺りから力が集まってくるような……」


 諏訪子の言葉に、彼が頷く。自身の感覚に依存するモノだったらしく、このことは青年も分かっていたらしい。


「……で、力の出所なんだけど、君の近くにある自然……特に大地や土地から集まってきてるみたいだ


ね。ただ、集まってきている理由がわからないんだけど、参真くんは何か信仰していたりするのかな?」

 参真は首をひねりながらも、曖昧に答える。


「そこまで大げさなものではありませんが……自然には、ほぼ毎日感謝していました。山籠りしている中で、自然の恵みがなければ生きていけませんから……これも信仰でいいんですかね?」

「そうなるね。かなり広い範囲の信仰……『自然そのものへの信仰』とでも呼べるかな。実のところ、私たちも君から信仰心を貰ってるんだ。君が信仰している範囲が広すぎて、本当に微弱なものしか貰えてないけど……」


 彼と会った時、神奈子が信仰心を感じたように、諏訪子もまた彼からの信仰心を受け取っていた。最も、参拝しに来る人間と比べるまでもなく、お粗末なものだったが……


「わ、私には訳が分からない……」


 二人の話についていけず、頭にハテナを浮かべる小傘。諏訪子と参真が苦笑し、「休んでていいよ」と声をかけると、小傘はテクテクと、奥の部屋へと引いていった。

 彼女がいなくなった後、二人は向かい合い、話を続けた。


「さて、ちょっと話が飛ぶけど、参真くんは五年間山に籠ってたんだよね? 人とかかわったりはしていたかい?」

「いいえ……誰とも会うこともなく、一人暮らしでした。籠る前に準備はしておきましたから、特に補充をすることもありませんでしたね。作物の種を持ち込んで、自給自足していたんですが、素人なのに結構うまくいってました」

「あ~それは信仰している自然の側からのお返しだろうね。……こりゃ、本当に珍しい」


 参真も流石に首をかしげている。どういうことか、理解が追いついていないようだ。


「どうも、自覚していないみたいだねぇ……いや、自覚していないからこそ、ここまで好かれたのかな? スパッと言おうか。君のしていた行為は、私たちの業界でいう『修行』に近い効果をもたらしていたんだよ」

「修行……? 滝に打たれたりはしてませんが……」

「修行って言っても、色々あるんだよ。まあ、自然に感謝し、俗世を離れるだけだと、効果としては大したものじゃない。でもそれは、『修行する』という心構えでの話。参真くんは、別にそういうつもりで山に入ったんじゃないんだろう?」

「ええ……僕は絵を描くために山に入りましたから」


 ただただ困惑したまま、青年が答える。こういう事情には疎いようだ。


「君はね……『修行しているという自覚なしに修行していた』という、実に稀有な環境で育っていたんだ。本来、『修行する』という行為自体が、より高みへと行こうとする一種の欲から来ている物なんだけど、参真くんはこの欲求を持っていなかった。おかげで、自然に大層気に入られ、さらには君の自然への信仰が合わさって……『周辺の自然から力を借りる』なんて、一人の人間がするには、ふざけた芸当ができるようになったわけだ」


 さらりと……諏訪子はあっさりと核心を口にし、参真は呆然として……


「え……? えええええぇええぇえぇええぇええぇぇぇ!? ちょっと待ってください! そんな大仰なことしてたつもりは……」


 慌てて彼は謙遜し、腕をぶんぶんと振る。さすかに事態の大きさを理解できたらしい。混乱しているようだが、諏訪子は諭すように続けた。


「紛れもない事実だよ。君は霊力を地面に送ることで、自然の持ってるエネルギーを扱えるようになっている。最も、自然が無理をしない程度……生きていくためとは別に取ってある、余剰している分を借りているみたいだから、一つ一つを見れば微量なモノだけど……周辺から集めればそれなりの量にはなるし、自然に勢いがあれば、借りる量も増えるだろう。逆に自然の少ない場所……例えば人里みたいな場所だと、借りれる量が大きく落ちる。それと、これは君の過ごしていた環境の影響みたいだけど、地面に接触していないと、上手く力を引き出せないみたいだねぇ……」

「じゃあ……僕は飛べないんですか?」


 残念そうに、彼が呟く。……飛びたかったのだろうか? かなり落胆しているようだが……


「いや、ちょっと工夫がいるけど、飛べなくはない。ただ……飛んでるとさっき言った通り、上手く交信できなくなるから、弾幕ゴッコは厳しいだろうね……付いておいで。『君の飛び方』を教えてあげよう」


 励ますように、あるいは教師のように……洩矢 諏訪子は、外来人へ力の使い方を教えるべく、境内へと彼をつれて歩いて行った。


 彼の力は、原理としては「元O玉」に近いものととらえてもらえば分かりやすいかと。霊力を媒体に、地面を通して周辺の自然と交信、余っている力を霊力という形で参真くんに換算します。

 修行云々は独自設定。邪かどうかはおいといて、「修行する=強くなりたい≒強くなりたいという欲求がある」というのは、たぶんほとんどの人が持ち合わせている感覚だと思います。精神を高めたりする修行って、実は根本から矛盾してるんですよね。徳を積もうとせずに徳を積むのは難しく。無理に徳を積もうとしても、徳を積みたいという欲が出てしまう。普通はそうなるのですが、参真くんはそんな欲求ゼロで、偶然修行と同じ内容のことをしていたので霊力も上がったのですが、それと同時に『自然』という概念に気に入られ、さらに自然も信仰している……複雑な環境が絡み合って、偶発的に発現した力ですね。後天的に得たものになります。

 なお、以前に彼が固有に持っていた「自然か不自然かを見分ける程度の能力」とは別枠になります。この力に関しては、全く同じ内容のことができれば、別の人間でも発現する可能性があるからです。最も、このことを聞いてしまった時点で、修行ということを意識、認識してしまうので、使える人間はかなり少ないでしょうが……

 

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