十六・五話 追想という名の悪夢
一見、訳のわからない話です。
が、ここで入れておくべきだろうと考えたので入れました
それと、今回あとがきは無しです。余韻は大事ですからね
唐突に訪れた、深く不快な闇の中に青年は立たされた。
ここにくる直前に、何か強い衝撃を受けた気がするがよく思い出せない。
不意に嗤い声が聞こえる。
それは誰だったか、彼は無理やり思い出させられた。
その声は教師だ。才能があるといってくれた。
その声は評論家だ。若くして素晴らしいと語っていた
その声は友人だ。スゲェとただほめちぎっていた。
その声が、その声が、その声が、その声が――
自分の絵を、責め立てる。
僕は始めから知っていた、その声が――称賛の声が――「不自然」だったことに。
僕は知っていた――この人たちは、「絵」を見てくれていないことに。
だから、僕を世界から引き摺り下ろした。
違う、違う! 違う!! 違う!!!
僕はただ描きたかっただけだ。
勝手に評価してきたのはお前たちだ。
勝手に被害者になったのもお前たちだ!
何で僕の世界の邪魔をする!?
何で自分の持っている世界を他人に押し付ける!?!?
怒り――間違いなくこの感情は怒り――
その怒りを「絵」という形で表現し、それを外のやつらが批判する。
気がつけば自分は、ただ部屋の中で絵を描くだけの機械になっていた。
でも――それも限界。
視える世界、感じられる世界には限界がある。
精神の内側も、目に映る世界も、もうすべて視つくした。
もう描けるモノなど存在しない。
生きている意味を見失い――自殺を思いつく。
――不意に、扉が叩かれる。
扉の外から誰か女性の声がする……だが、それはおかしい。
母は離婚して、家族に女性はいない。
だから、聞こえるはずがない声に違和感を覚える。
そっと僕は――その扉を開けた――