十五話 命蓮寺の珍事 青年の喜劇?
小傘ファンの皆さま! お許しくださいっ!!
翌日――命蓮寺の一室にて――
夜遅くまで作業を行っていた青年は、未だまどろみの中に意識を置いていた。
しかし、そのまどろみが妙に心地いい。外にいたころは、寝袋で寝るのが日課だっただけに、とっとと起きてしまいたいという気持ちが強かったのだが、命蓮寺の布団があまりに良いもので、布団で寝るのがこれほど気持ちいいものだったかと、実感させられることとなった。そして今も、自分はその心地よい場所にいるのだが……
(ふとん……敷いたっけ……?)
まだ意識がはっきりしないが、確か昨日はあのまま眠ってしまったような気がする。おまけに、布団だけにしては妙に温かいし、柔らかい感触と甘い匂いもする。まだ眠りたいという欲求を抑え、寝ぼけ眼を擦りながら開くと――
「すー……すー……」
目の前に女性が――見ず知らずの女性が――同じ布団で寝ていて、しかも自分に抱きついているではないか。
「……ゑ?」
たっぷり三秒、参真は硬直した。夢を見ているのではないかと現実逃避しようとしたが、彼女の健やかな吐息が、嫌でも現実であることを認識させる。健康的なうなじがのぞき、赤い唇は熟れたリンゴのよう。それと対照的な涼しげな水色の髪を持ち、肌つやも非常に良い……思わずゴクリと、生唾を飲み込む。
(ちょ……! 色々まずいって……!!)
実のところ、参真は女性への免疫は皆無だ。幼いころに母が離婚し、さらに絵を描くことに夢中だったせいで、「被写体」として女性を見ることはできても、『女』として女性を見たことなど一度もない。おそらく、『鈍い』部類に入ると自覚はしているものの――さすがにこれは、意識せざるを得なかった。
「ん……」
「!!?!!!!???!?!?」
理性に追い打ちをかけるように、彼女が強く参真を抱きしめる。男性にはない膨らみが押しつけられ、年頃の娘の持つ香りが鼻腔をくすぐった。
「お、起きてー……お願いだから……」
耳元で囁きながら、肩を強く揺する。本当は大声で起こしたいところだが、もしそんなことをして誰かにこの状況を見られたら――
「参真さん! いつまで寝ているので…す……か…!?」
終わった。
もう色々と終わった。
自分は間違いなく無罪だろう。何せなにも知らない。何かしたとするならこの女性であり、参真は巻き込まれただけだろう。
けれども男性というものは、だいたい悪者扱いされる訳で――そんな主張など、きっと意味のないことだ。現に――
「参真さん! 一体何をしたんですか!? 何を!!」
顔を真っ赤にして怒鳴っている毘沙門天の弟子は、こっちの言い分など聞いてくれそうになかったのだから。
うん。やっちゃったんだZE☆
前のタイトルで、「ゆうべは、おたのしみでしたね?」を使ってしまったことを激しく後悔することになりましたorz うん。小傘が出てくるシナリオは思いつきだから仕方ないね。