十三話 特訓 そして……
また遅れたっ! あと、ちょっと急展開かもしれません。友人に「この物語には速さが足りないっ!!」と言われてしまったので……
それと、明日と明後日は更新が厳しいかもしれません。ちょっと家族の用事ができたので……すいませんね。ちょっと待っててくだしあー(汗
宴会から三日後……命蓮寺の裏庭では……
「ふう……やっぱり厳しいかな……」
「そうですね……霊力が絶対的に足りてませんから……」
命蓮寺の面々が集まり、気絶している参真と共に、縁側で休んでいた。
皆が何をしているかというと、参真に弾幕ゴッコの稽古をつけていて、一息入れていた所である。微弱ながら彼には霊力があり、弾幕ゴッコができるようになれば、一人で外に出歩くこともできるようになる。様々な所を回りたい、という参真本人の希望もあって、まずは参真が霊力を練り、弾幕にするための練習から始めたのだが……そこで大きな問題が発生した。
彼の霊力は、致命的なまでに少なかった。空を飛ぶことはもちろん。弾幕も、米粒のようなタイプのを三ケタ撃てるかどうかも怪しい。唯一の救いは――
「しっかし彼、見切る技術だけはとんでもないレベルだねぇ。ご主人の『レイディアントトレジャー』を初見で、しかも飛べないってのに完全回避するなんて……」
ナズーリンが感心したように話す。実際の所、これには聖を含めた全員が驚いていた。なんでも、彼は『自然か不自然かを見分ける程度の能力』を持っており、それの応用で弾幕を見切っていたらしい。交代で彼と直接戦った(といっても、参真は回避するだけだが)のだけれど、移動を制限されているにも関わらず、出来る範囲で、最大限の回避行動をとれていた。並みの妖怪の弾幕なら、カスリもせず乗り越えられるかもしれないが……それでも、「攻撃できない」というのは痛すぎる。
「……」
「雲山が『素人にしては上出来だ』ですって。あとは、霊力をどうするかだけですが……姉さん。何か良い手はない?」
「やはり、回数を重ねるしかないでしょう……時間はかかるかもしれませんが、それ以外に手がないですし……」
スペルカードルールの性質上、相手が調子にのってスペルを連射してくれれば、彼にも勝ち目がある。しかし、慎重な妖怪が敵となると、人間である参真が、妖怪相手に持久力で勝てるはずもない。そうなったら、後はなぶり殺しにされるのを待つばかりである。それを避けるには……やはり、本人の霊力を強化していくしかない。毎日弾幕ゴッコを続けていれば、そのうち力はついてくるはずだ。
「参真~大丈夫~? 手加減なしでも大丈夫と思ったんだけど……」
「うう……心配かけてごめん、ぬえちゃん。君の能力と僕の能力の相性が悪かったみたい……」
先ほどぬえと戦った際、大量に被弾し気絶していた参真が、ようやく目を覚ましたようだ。今までそこそこ力を出しても大丈夫だったものだから、ぬえにも本気を出させたのだが……とたんに動きが悪くなり、あっさりと撃沈していたのである。
「『正体を判らなくする程度の能力』と? なんで?」
「正体がわからないものが、どうして自然か不自然かわかるのさ……あ、村紗さん。一戦お願いできますか?」
「動けるの!? 無理しない方がいいんじゃない?」
むくりと彼は起き上がり、その両足で立ちあがる。聖たちも回復系の魔法を使用していたから、動けなくはないかもしれないが……
皆が心配する中、青年は凛と言い放つ。
「いけます! いつまでもお世話になりっぱなしじゃ悪いですから!」
「ならいいけど……今日はこれで終わりだよ? 身体壊しちゃだめなんだから」
そして、村紗は空を飛び、参真はその姿を捕える。
「スペカは二枚にしておくよ? 一枚でやることなんて、まずないからね?」
「はい! お願いします!!」
気合い十分に参真は叫ぶ。それと同時に、村紗の攻撃が始まった。
水をバラ撒くような弾幕が迫り、青年がそれをひたすらに避ける。始めはそれだけだったが……
「……!?」
ぬえとの勝負で、何か感じるものでもあったのか、移動しながら弾幕を練り上げ、いくつか発射してきた。が……
「密度が甘いよ!」
「く……」
いとも簡単に、水蜜は弾と弾の間を抜けてしまう。通常のその後、いくつか彼は弾幕を放っていたが……狙いは悪くないものの、密度が足りない。おまけに、大した量も撃てずに、彼の動きがみるみる鈍化していく。霊力不足による疲労……限界が近いのは明らかだ。
「っつ!?」
それでも霊弾を撃とうと、必死に足掻く。しかし、足元に気をつけていなかったせいか、足を取られ、手に霊弾を構えたまま、地面に激突しそうになった。
「いけない! 参真君!! 霊弾をどこでもいいから飛ばせ!!」
とっさに星が叫ぶ。このまま衝突すれば、霊弾の衝撃が彼の腕に伝わってしまう。最悪、二度と使い物にならないかもしれない。だが、悲鳴に近いそれは虚しく響き――彼はそのまま倒れこんだ。
惨劇を想像し、思わず目を背けたが……いつまでたっても、爆発音などはなく、恐る恐る参真を見ると……彼は傷一つ負っていなかった。聖が駆け寄り、彼に異常がないかどうかを確認する。
「はあっ……星さん。びっくりさせないでくださいよ。別に何も――」
何事も無かったように、参真が立ち上がろうとしたその時、異変は起こった。
「!? これは一体……?」
ちょうど彼が、地面に霊弾をぶつけてしまった辺り――そこから、霊力が発生していた。しかも――
「ちょっとちょっと! これ、周りの植物とかからも、霊力吸ってない!?」
一輪の言うとおり、その地点を中心に、周辺にあるものから霊力が集まってきている。初めての事態に、聖たちが混乱する中、参真は霊力の集まった地点に手をかざした。まるで何かに吸い込まれるように。あるいは……導かれるように……
「……」
そっと目を閉じて、チカラの塊に触れる。集ったそれは彼を拒むことなく、しばらくなすがままにされていた。やがて青年は、慈しむようにそれを撫で、「ありがとう」とつぶやくと……光が霧散し、霊力が元の場所へと戻っていった。ひどく神秘的な光景に、誰も言葉を発せない時間が続き――へなっと、参真が両膝をついたところで、ようやくハッと、皆が我に返った。
「参真さん。今のは……?」
唐突に集まった外からの力に、誰もが疑問に思う。一体あれは何だったのか? その問いに、参真も曖昧に答える。
「……僕も、よくはわかりません。わかりませんが――誰かが……いえ、『誰か』というには、大きすぎる『何か』が、僕に力を貸してくれようとしていた。そんな感じがしました。ハハ、すいません。あまりにもスケールの大きいものでしたから、震えが……」
崩れそうになる参真を、降りてきた村紗が支える。それで安心したのか、彼はそのまま眠ってしまった。
残された五人と入道一人が、今の出来事を反芻する。
「あれで『貸した』か……冗談じゃない。私が本気出しでも、あれだけの霊力は扱えないよ?」
「しかしナズーリン……『周りから霊力が集まっていた』ということを考えると、あながち嘘でもなさそうですよ?」
むむむ、とネズミの妖怪が唸る。実際のところあの霊力を制御できれば、星と撃ちあえるぐらいにはなるかもしれない。それだけの霊力が、一瞬で集まってくるなど……しかもそれが『貸しだされた』霊力となると、タダごとではない。ナズーリンが信じがたいという表情をしているのも、仕方のないことではある。
「これは、ちょっと調べる必要がありますね……一輪、手伝いをお願いできるかしら?」
「合点承知だよ姐さん!! 雲山もいい?」
「……」
「参真クンはどうするかって? ……ぬえ! 水蜜! 任せていい?」
「「オッケー!!」」
こうして……先ほどの現象が何だったのか、命蓮寺のメンバーは探ることとなったのであった――
という訳で、主人公強化フラグが立ちました。
本編でも書かれているように、ぬえと主人公の能力は相性最悪です。
本来彼は、自然か不自然かを見分けることが出来ますが、「正体不明」にされると訳がわからなくなります。例えば、宇宙人が目の前に来てるのに、そいつがどういう状態なのか?なんてわかりませんよね。おまけに普段わかるものが分からなくなるわけですから、テンパってしまってやられた。ということです。
また、弾幕ゴッコにおいて、彼の能力は強力な類になります。「自機狙いの弾幕」を指定すれば、それ以外の弾幕が不自然に見える……早い話が、「初見にも関わらず、すべての弾幕が自機狙いかどうかを見分けられる」というね。咲夜さんの「ミスディレクション」を、事前情報一切なしで避けれるんだぜ……これ……紅魔境EXクリア出来ない私には、喉から手が出るほど欲しいスキルですよ……495年の波紋、鬼畜過ぎるぞ……!!