最終話 ふらりと歩いて
唐突ですが、最終話です。
「レミリアさん。お世話になりました。そろそろ僕たちは、ここを移動しようと思います」
夕食を終えた直後、参真は彼女に移動の意思があることを伝えた。すると、少々戸惑うような動作のあと、いつものような傲慢な態度ではなく、見た目相応の笑顔で参真に告げた。
「参真……あなたは私の期待通り、この館の住人、景色……そのすべてを描いてくれたわ……私とフランの間まで取り持ってもらって。本当に感謝してる」
「どうしたんですか? 急に改まって」
あまりにもらしくない態度に参真は首を傾げたが、次の言葉でそれも納得がいった。
「だから、どうかしら? このまま館の住人になる気はない? フランも……ちょっと過剰なぐらいだけど懐いているし、皆あなたのことは悪く思っていない。あなたも住まいと安定した食事にありつける……悪い話ではないと思うのだけれど」
おそらく、悪く思っていないのは、レミリア本人も含めてなのだろう。妹を取られるのは御免だが、参真本人には好感を持っている。
こちらのこともある程度は案じてくれているようで、その心使いは嬉しかった。しかし――
「ごめんなさい。僕は――いろんな所を巡って絵を描きたいんです。一か所に留まってというのは、ちょっと性に合わないので」
「……なんとなくそうだろうと、予想はついてたわ。でも一応ね?」
レミリアとの付き合いはそこまで長くはないが、フランを助けるための日々に使った時間は濃い。ましてや、参真の血を吸った経験もあるのだ。彼の心情は、レミリアにとって理解しやすいものになっている。
「でもたまに遊びに行きますよ」
「その時は歓迎するわ。ああ、あと式を挙げるときはここでお願いね」
「もうその話決まりなんですか……」
まだしばらく先になりそうな話にげんなりしたが、こればかりは妖怪と人間の感覚の差だろう。お互い、あと五年ぐらいかかると思っているのだが、妖怪にとって五年などあっという間である。だから、こうしてレミリアは彼に何度も言っているのだ。
「ふふ、盛大に祝ってあげるから覚悟しなさい?」
「楽しみなような、恐いような……」
レミリアの笑顔が恐い。知らせなかったら許さないと言わんばかりだ。
「それで、いつ頃出るの?」
「三日後の朝にしようと思います」
「ん……咲夜、調整お願いね」
「かしこまりました」
相変わらず唐突に従者は現れ、消えていく。このやり取りも慣れてきてしまった。
その言葉を最後に、参真はその場を去った。
(さて、次はどこに行こうかな)
様々な所を回ったが、幻想郷のすべてを見たとは言い難い。まだ四季折々の景色も見ていないし、行ってない場所もあるだろう。そして、いつでもどこでも、彼女……小傘は一緒だ。
ふらりと歩いて……さあ、次はどこに行こうか。
青年の幻想郷での生は、まだ始まったばかり。
彼らの旅は、続いてく……
はい、約二年に渡り連載してきましたが、ついに最終話を迎えることが出来ました!
えっ? 中途半端というか、打ち切りマンガの匂いがするって?
だ・っ・て・ネ・タ・が・思・い・浮・か・ば・な・い・ん・だ・も・の
いや、正直悩みましたよ? 続けようと思えば、続けることは出来たんですからね。本当はあと、秋姉妹に会うネタと、ひまわり畑に行くネタもあるにはあるんですが、両方ともシーズンになってないとダメということなので没に(作中最終話は五月ぐらいです)
これにて、参真君が主人公のお話はおしまい。少々強引ですが、ダラダラと続けるよりは、こっちの方がさっぱりしてていいかなと。
それでは皆様! ご愛読ありがとうございました!!
――と言ってあげたいところだが――