十二話 スーパー取材タイム!!
参真クンの情報を丸裸にスルノデス!!
追記:PVアクセス10000、ユニークアクセス1000到達! ありがとうございます!!
命蓮寺で始まった宴会も、終わりの時が近づきつつあった。
リーダー格の聖と星がそろって脱落し、ストッパーのいなくなった参加者たちが、調子に乗って酒を派手に飲み散らかし、結果、会場は死屍累々と妖怪たちが横たわることになった。そんな中――
「参真さんは、お酒に強いですねぇ。妖怪並みに飲んでるのに大丈夫なんですか?」
未だに酒を飲み続ける人間に、関心半分、呆れ半分で文は尋ねた。この宴会の主役なだけに、他の人や妖怪たちに酒を勧められていてもおかしくない。文が会場に来る前から飲んでいたはずだが、彼は頬が少し赤い程度で済んでいる。
「あははは。父さんが鬼のように酒に強くてですね……たぶん今の僕と同じ量飲んでも、全く酔っていないと思います。その血引いてるからでしょう」
向こうの世界に鬼はいないはずだから、強さの揶揄で鬼という単語を使ったのだろうが……それが事実なら、こっちの鬼と同等クラスの酒の強さだろう。萃香や勇儀ともいい勝負かもしれない。質問を続けよう。
「なるほど……他にご家族の方は?」
「三つ年の離れた、双子の兄さんがいますね。母さんは、僕が三つの時に離婚したそうです」
軽く聞き流そうとして、彼女は何かおかしいことに気がついた。
「あやや? 双子なのに年が離れているのですか?」
「……すいません。言い方がよくありませんでしたね。三つ上の兄が二人いて、その二人が双子なんです。僕は三男になります」
「……そのご兄弟の名前、長男が『真一』で、次男が『真二』だったりしませんよね?」
そう言って、メモ帳に名前を書いて彼に見せてみる。果たして……
「惜しい! 長男が『真也』で、次男が『真次』です。次男の読み方は合ってましたね」
彼が『参真』で、三男だったことから予想して言ってみたのだが、大体あっていたらしい。……ちょっ
と安直過ぎるネーミングではないだろうか。親の顔が見てみたいが、ここは別世界。叶わぬ望みと気持ちを切り替え、取材を続ける。
「フムフム……失礼ですが、年はいくつですかね?」
「えっと、ちょっと待ってくださいね……季節が五回巡ったから、たぶん二十歳です」
「たぶん? 正確に数えていないのですか?」
「実はここに来る前、山籠りしていたのですが……その時にカレンダーを持っていくのを忘れてまして、季節の巡った回数しか覚えていないのですよ」
話を聞きながら、なるほどと文はどこか納得していた。彼が外来人らしくないのは、元々文化レベルの低い環境で生活していたからと思われる。カレンダーというのは、おそらく暦表のことだろう。
「山籠りとは……若いのによくやりますねぇ。まさか、絵を描くためだけに?」
「はい! 毎日外に出て、たまに寝具も持ち歩いて出歩いてました。そしたら昨日――」
「いつの間にか、幻想郷にやってきていた……と、そういうことですか。これは珍しい。スキマ妖怪の干渉なしに、面白い人間が入ってくるとは……」
すばやくメモ帳に書きとめつつ、個人的な感想なども追加しておく。記事を書くためには、情報だけでなくその場の空気も読み取っておくと臨場感が出る。そのためには、ちょっとした小言をメモに挟んでおくといい。長年の経験で、文はそれを悟っていた。しばしの間、そうしてまとめていると、今度は彼から質問が来た。
「そのスキマ妖怪とは、有名人なのですか?」
「ええ、幻想郷の管理者といっても差し支えない大妖怪ですからね。私でも勝てません」
「おおう……一応挨拶しておいた方がいいのかな?」
「うーん……難しいところではありますが……まぁ、大丈夫でしょう。あなたに何か問題があるようでしたら、即座に接触してくるはずですから。出会った時に、軽くでいいと思いますよ」
以前、博麗神社が天人によって潰された時の、紫の怒りようを考えると、彼女の幻想郷への愛は間違いない。その妖怪が『何もしてこない』ということは、危険分子ではないだろう。
「なら良かった。もう少しこの世界を、見てまわりたいですから」
「あやや? 元の世界に愛着はないのですが?」
これは少々、射命丸にとって意外だった。基本的に外来人は、すぐに元の世界に戻りたがるものだと思ったのだが……青年は興奮した様子で答える。
「だって、向こうの世界では見れないものがたくさんあるんですよ! あなたのような妖怪ももちろん、古い空気の中にある自然の景観! 妖精! 弾幕ゴッコ!! これだけあるんです。しばらくは見ておきたいといいますか……もちろん。兄さんにも会いたいとも思いますけど、すぐに帰りたいとは思ってませんね」
酒の勢いなのか、やたらと声が大きい。
「なるほど。良くわかりました! 最後に一枚、写真を撮ってもよろしいですか?」
また以前のように、回りくどく説明されるのはゴメンと思った文は、これで切り上げることにした。
「ん、いいですよ~」
「ああ、ちょっとこっちに移動してもらえます? ……そうそう! その位置で!!」
宴会場がバックになるように、彼の位置を調整する。素直に参真は移動し、そこに立った。
「では、参真さん。何かキメポーズをお願いします!!」
「無茶振りだなぁ!? じゃあね~『のまのまイェイ~♪~のまのまイェイ~♪~のまのまのまイェイ~♪』」
……なんだかよくわからない歌を歌いながら、空の酒瓶を天高く掲げる。本人がノリノリだからいいとしよう。とりあえずシャッターを切りまくり、いいものを後で現像することにした。
後日、『文々。新聞』には、それはそれはカオスな宴会風景が記事になっていた。
見出しは、『新入り外来人、命蓮寺の宴会客を圧倒!!』と書かれており。後ろで酒瓶を空にし、倒れている妖怪たちを前に、『のまのまイェイ♪』をしている参真の姿があった。
あながち嘘でもないだけに、参真からの苦情はなかったという……
射命丸のメモが落ちている……読みますか? YES/NO
射命丸のメモ
西本 参真 ……種族 人間(外来人)男性
年は、本人曰く二十歳。見た目的にはまぁ、そんなところか。
親のネーミングが終わってる。真也と真次って……そして参真……ご愁傷様。
酒に強すぎでしょう? 妖怪並みって……しかも父親がこれより強いってどういうことなの……
山籠りするほど絵が好きとは……好きなものだから上手なのだろう。
しばらくはこちらに滞在するつもりのようだ。気持ちはわからなくもない。私も外の世界に行ったらしばらく戻らないでしょうし。
びっくりするぐらいまともな人間。白黒、赤白巫女、現人神より全然きれいな御方。というより、あの人たちが少しおかしなだけか……
でも逆に、弄りがいがないとも……たまにはまともな記事もいいか?
面白いネタは、聖と星の出来事で十分?
いや! 最後の写真を上手く使えば……!!
(メモはここで終わっている)
うん。展開が遅いですね……次回も遊ぶつもりですし……
読者のみなさんごめんね!!