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百十話 目撃者

今回はちょっと短いかな。


 まさにその瞬間を見てしまった小傘は、その場から逃げるように走り去った。

 心臓の鼓動が異様に早い。身体が緊張し、ただただ焦りばかりが身体の中に溜まっていく……


(ど、どどどどどーしよー!?)


 状況はよくわからない。ただ小傘は、そろそろお茶か何か欲しくなる頃合いなのではないかと、気を利かせてひょっこり覗き込んだだけなのだ。そしたら……自分の慕う彼と、彼が救った少女が、キスをする場面に出くわしてしまったのである。


(よよよ様子こっそり……何かあったら……ああ、でもご主人さまが手を出す訳ないもんね……)


 最近は隣で寝るのが当たり前になってしまい、全く緊張もしていない主だ。キスの一つや二つで、相手をどうこうするとは考えにくい。そもそも、彼は色恋には疎いほうで、きっとさっきの事件も、あの少女の方からしてきたと考えるのが自然だろう。


(時間を置いて、また来よう)


 きっと今頃は、困った顔をして少女の頭を撫でながら、なだめているに違いない。彼はすごく心根が良いから、怒るとしても、ちょっとだけだろう。その情景は、簡単に目に浮かべることができた。それと同時に――どうしようもない感情が、小傘を蝕む。


(あ、あれ……? なんで私……泣いて……)


 彼が少女に優しくする光景を、思い浮かべた時だった。なぜだろう? それは心温まるはずの光景なのに――自分にとっては、すごく嫌なものに感じたのだ。

 彼の優しさを、一人占めしたい――

 そんな思いが、心のどこかにあるのだろう。青年と同じく、どこか幼いままの彼女の心が、感情を処理しきれなくなって、涙となって現れたのだ。


「ひっく……うぇ……」


 彼女はその場で、嗚咽を漏らす。

 この時小傘は、やっと理解した。

 自分はどうしようもないぐらい、彼のことが、好きだということに。

 好きだという想いは、今までも心のどこかにあったし、意識もしていた。けれども、ここまで心を揺さぶられてしまうということは、もう疑いようがない。


「私は……ご主人さまが……好きなんだ」


 だから――少女が彼の唇を奪ったことに強く動揺したし、その後の光景を思い浮かべた時も素直に喜べなかった。


「……ちゃんと言わなきゃ。ご主人さまは、鈍感だもんね」


 今晩、はっきりと告げよう。

 不安もあるけど、今回を逃したら、他の人に取られてしまう可能性もゼロではない。それは嫌だ。絶対に。


「やっぱり、直接伝えないとね」


 涙をぬぐい、嫉妬心を振り切って。

 少女は凛と、覚悟を決めた


 という訳で、キスシーンを目撃したのは小傘ちゃんでした。それで小傘がパルパルすると言う回です。

 次回、二人の関係に進展が……あると良いなぁ……

 

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