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百九話 告白

 PS3IDを公開することにしました。

 作者と遊びたい人は、ユーザー情報を見てくださいね☆

 フランが自身の見ていた狂気の世界に気がついてから、数日。

 彼女は、館の内部である程度自由に動き回ることを許可されていた。

 今まではいつ狂気に呑まれるかわからない状態であったが、レミリアができるだけそばにいてやったりしたのが、効果があったらしい。精神状態も随分安定し、今では共に食事をすることも可能であった。


「えへへ……なんだか緊張するね」

「硬くしてると、それまで描いちゃうから、リラックスしてくれると嬉しいな」

「難しいこと言うのね参真は」


 おかげで、参真と二人っきりでいても大丈夫になったので、早速参真はフランに頼んでモデルになってもらっている。

 

「ん……やっぱり僕が勝手に描いた方がいいのかな? となると、今度レミリアさんと二人で自由にしている所を描いてもいい?」

「お姉さまと? いいよ。きっとお姉さまも断らないでしょうし」


 それと、些細な変化ではあるのだが、ちゃんと姉のことをアイツ呼ばわりしないようになっていた。これだけでも、協力した甲斐があったというものである。


「ねぇ参真……変なこと聞いていい?」

「? とりあえず言ってごらん」


 一旦描くのを中止し、フランの話を聞く体制を作る。そしてフランは、何故か妙に緊張した表情で参真にこう問うたのだ。


「参真って……好きな人いるの? その、恋人というか……そういう意味で……」

「ぶっ!?」


 あまりにも唐突すぎる問いに、参真はびっくり仰天。フランがもじもじしているのにも気がつかずに、早口でまくしたてた


「あ……あ……あのねフランちゃん。まだ君にはそういう話題は早いよ!?」

「そうかな? 参真より年上なんだけど……」

「う……まあ確かにそうだけどさ……」

「あ、ごめんね急に」

「い、いいよいいよ」


 しかし、なんで急にフランはこんな話題を振ってきたんだろうか? 意中の相手でも……と思考を巡らせる内に、ある一つの可能性に気がつく。


(まさかフランちゃん……僕を好きになってなんかいないよね!?)


 幽閉されていたのだから、男と会う機会はなかったはずだし、となれば、フランがこの話題を持ちかけた理由はこれぐらいしか思い浮かばない。絵を描いているときも、妙にそわそわしていると思ったのだが、好きな相手と二人っきりでいたと考えれば説明がつく。

 その予想を肯定するかのように、フランは続けた。


「あ、あのね参真。絵本で読んだ白馬の王子様って、檻の中からお姫様を助け出してくれるのよ。そしてその後、結婚して幸せに暮らすの……だから、私たちも……ね?」


 確かに、フランは半ば自分で引きこもっていたが、精神的には閉じ込められているようなものではあった。

 参真はそこからの脱出の協力者……しかも提案したのも参真だし、そういう解釈もできなくはない。青年は「弱ったな」と呟いて、フランの唐突な告白に対応する。


「でも、お姫様には、ずっと檻の外に出るのを待っててくれたお姉さんがいるよ……その人から王子様はお姫様を奪うことになる。それはきっと、お姉さんが少なからず悲しむんじゃないかな。それに王子様が欲しかったのはお姫様じゃない。君たち姉妹が、仲良く暮らす所を見たかったんだ」

「ん……王子様は、お姫様のことが好きじゃないの?」

「少なくても恋はしていない。王子様にはお兄さんがいた。だけど、そのお兄さんはいなくなってしまったから、そんな目に遭ってほしくなかったから、協力したんだよ。それに、お姫様を助けたのは王子様一人の力じゃない。お姉さんやその従者、館の良い魔法使いと、門番さんの協力があったから、お姫様を助けられたんだ」


 回りくどい言い回しで、彼はフランに事の真相を告げた。そうとも。今回の救出劇は、彼一人では成り立たなかったのだから、『お姫様』は皆に感謝すべきであって、王子様と一緒になることは考えてはならないと、参真は思っている。


「そっか。残念……でも、お姫様が必死にアピールしたら、いつか気づいてくれるかな?」

「それは……どうだろう。王子様は恋愛経験がないから、ものすごく時間がかかると思うよ。それに……その前にきっと、お姫様は回りの人たちの大切さに気がつくんじゃないかな。そしたらきっと、王子様の下に行くのが嫌になっちゃうと思う」

「……それがよくわからない」

「時間はかかるよ。今まですれ違ってたんだから……だけど、お姉さんは思った以上に、お姫様のことを想ってくれてる。そんなお姉さんの前から、お姫様を奪っていくなんて、出来ないよ」


 実際の所、レミリアがどう反応するのかは予測がつかない。グングニル辺りが飛んできてもおかしくないし、逆に「それがフランの幸せになるのなら」などと言いだすかもしれない。完全にブラックボックスだ。だが、そのパンドラの箱を開ける勇気は、参真にあるかと言われると微妙な所ではある。


「あ、そうだ。でもお姫様は、しなくちゃいけないことがあるのよ……ちょっと来て」

「ん? なんだい?」


『お姫様』の指示に従い、彼は鉛筆を置いてフランの元へ。すると――そっと唇を、フランは重ねてきた。


「!?」


 あまりの出来事に呆然とする参真。そこに少女は微笑んで、


「感謝のキスよ。私の王子様♪」


 参真の初めてを奪いつつ、にっこり笑うフラン。

 その時だった。派手に物音が鳴り響き、扉の外で誰かがかけだす音が聞こえたのは。


「み、見られた!?」

「きゃー恥ずかしい……」


 焦る参真に、恥じらうフラン。

 その正体はいったい誰だったのか……参真は後日、思い知ることになる。


 さてさて、フランちゃんが参真君に(遠まわしに)告白する会です。

 小傘が登場する前は、ここで参真君がフランちゃんとくっつくルートが存在していました。今回の話はその名残ですね。

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