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百七話 少女の世界の終わり

今回はフランドール視点です。

番外扱いにするか悩みましたが、実質本編なのでいいやということに

 今日のみんなは、いつもと違う目をしていた。

 私が暴れると、普段は疲れたような、めんどくさそうな目をしているのに、今日は何故か……こう言えばいいのかな? みんな引き締まった、気合いの入った表情をしている。

 普段はいない人たちもいて、その人たちも真剣な目をしていた。

 だからかな。いつも暴れちゃう時より意識がはっきりしてて、私は、アイツとも普通に話すことも出来た。そして今は――


「ん……ちゅー……っ……んぐ……」


 参真に血が出ている手を押し付けられて、つい血を吸ってしまっているところ。


「く……あっ……」


 苦しそうな声を聞いて、私は背筋がぞくぞくした。血は熱く、喉にねっとりとからみついて私の喉を潤す。

 ……すごい。血って、こんなにおいしいものだったんだ。


「ご主人さま!」


 誰かが、私と参真を引き離す。ああ、もうちょっと……もっと吸っていたかったのに。

 お預けのせいで、ちょっと気分が悪くなった時――血を通して、参真の情報が私の中に流れ込んでくる。それと同時に、私の目が熱を持ち始めた。


「――っ……目が……熱い……なにこれ……」


 目を閉じて、手で目を覆う。

 涙も少し流れ出てきた……どうしたんだろう?

 そして、次に目を開くと――


「え……?」


 その視界には、何故か呆然としている赤い服の女の子が……私の格好と羽を持った子が一人いる。首を試しに動かしてみたけど、視界が固定されているのか、身体が動いた感じがするのに、全く見えてくるものが変わらない。


「な、何これ……?」


 そしてもう一つ、この視界には異常なことがある。

 あんなにたくさん、私を見ていた――いろんなモノについていた『目』が、ない。


「レミィ、上手くいったわ。今妹様が視ているのは、参真と同じ世界よ」

「そう……みんなよくやってくれたわね」


アイツってそんなに素直にお礼が言えるような奴じゃなかったはず。一体何が起こってるの? と、疑問に思っていると、


「フランちゃん……戸惑うのは分かるけど、落ち着いて聞いて」

「参真……? これは何? どうして目がないの?」

「ないのが、本当は普通なんだよ」


 参真が、そんなことを言ってきた。目がないのが普通? 何を言っているのだろう?


「だって、私が生まれた時から、ずっとずっと、何かが私を見ていて……みんなには視えていなかったの?」

「視えないのが、普通なんだ。そんなものは、視えなくていいし、視なくていいものだったんだよ。今フランちゃんが視ているのが、僕たちが普段視ている世界。どう? 全然違うでしょ?」


 私は頷いた。けれども、未だに信じられないのが本音。だってそうでしょう? 今まで視ていたものが、他の人には視えてないものなんて、思えるはずがないもの。

 でも、それなら私の疑問も解ける。なんであんなに見られているのに、平気にしているんだろうってずっと思ってたから。


「そう……なんだ」


 そっと無意識に手を伸ばす。目の前の女の子も同じように手を伸ばした。うん。間違いなくこれは、誰かが私を見ている光景だ。


「フラン……」


 アイツが私を呼んで、私の身体を抱きしめた。


「フラン……ごめんなさい。今まで気づいてあげられなくて……苦しかったわよね……辛かったわよね……」

「……」


 所どころ痣だらけになった身体が、私を包む。

 ぽた……と、頬から一つ滴が垂れてきた。……お姉さま、泣いているの?


「良かった。本当に良かった……」

「ご主人さま。泣いちゃダメだよ? 視界がだめになっちゃう」

「う……なんとかこらえるよ」


 ちょっとだけ世界が滲んだけど、すぐにそれは収まった。

 そっか……今見ているのは、参真の世界なんだね……


「これを見せるためにみんな頑張ったの?」

「その通りよ。そしてここから、あなたの世界をちょっとずつ私たちの世界に近付けていくわ。もう外を恐がらなくてもいいのよフラン」

「……そっか」


 私が外を怖がっていたのは、外に出ればそれだけ何かに『見られる』から。

 こういう風に世界が見えるなら、私も外に出られるかもしれない。

 

「けど、それには時間がかかるわ。少しずつ矯正していかないといけないわよ」

「それなら、大丈夫」


 館の魔女の言葉に、私は自信を持って答える。だって――


「だってもう、私の世界は壊れたのだから。みんながこの世界の檻の外へ出してくれたから、大丈夫」

「そう……ね。ちゃんと檻の外まで、私たちがエスコートするわ」

「……お姉さま。ありがとう」


 お姉さまには言いたいこといっぱいあるけど……とりあえず今は、素直にお礼をいってこう。だって、ここで拗ねたようなこと言ったら、いつものお姉さまみたいで嫌じゃない。

 ……あれ? なんだか世界が滲んできてるよ?


「ゴメン……やっぱり堪えるの無理……」

「参真様。ここはしゃきっとする場面ですよ? ハンカチをお貸ししますから拭いて下さい」


 なんで参真が泣いているのか、この時は分からなかったけど……私はあとで、この人が泣いている理由を知ることになる。

 最悪の、悪夢という形で。


パチュリーが作った魔術は、「参真の見ているものを、フランの視界に直接見せる

」というモノです。参真の見たままが、フランの視界に映ります。なので、参真君が泣いてしまうと台無しに。効果は十分程度。血液を媒体にするので、吸血鬼専用と思いきや、相手に血さえ飲ませればOKだったりします。

 この魔術をベースに、フランの視界を矯正する魔術も開発中です。あ、もうこの小説の見せ場は終わっちゃいましたかね? 戦闘シーンは、前回がラストになる予定です。でも、気まぐれで変更する作者だからなぁ……

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