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百一話 それぞれの役目

う、うわぁ。めっちゃ長くなりました。

休み休み読んでね!

 紅魔館――大図書館にて。

 その中心に、レミリアたちは集まっていた。

 門番である美鈴まで集まり、今この場所には、紅魔館を構成する主要なメンバー……フランを除く全員と、小傘と参真がいる。


「……本当にいいのね? レミィ」

「ええ、実験台にしてくれて構わない。フランを助けるためなら安いものよ」


 強い覚悟と決意を込めて、館の主は頷いた。


「吸血される役は、参真にお願いするわ。どうも同調や共鳴というモノと、あなたは相性がいいみたい」

「わかりました」


 外から来たすべてのきっかけは、何の臆することもなく首を縦に振った。


「健康管理とスケジュール管理は私が担当します。美鈴、あなたは彼の強化をお願い」

「任せてください咲夜さん!」


 紅魔館の住人二人は、彼らを補佐することを約束する。


「パチュリー様、こぁも手伝います!」

「ご主人さまだけには戦わせない。私も頑張る!」


 従者二人は、頼もしい言葉を主に告げる。

 フランを救うためのすべてが、ここから始まった。


                  ***



「炎符『真紅の弓矢』!」


 参真は炎で出来た弓矢を作り出し、美鈴目がけて矢を放つ。

 軌跡に残った炎からも弾幕が放たれ、無数の炎弾が美鈴に迫る。


「ハァッ!」


 美鈴は、一喝と共に鋭く拳を突き出し、軌跡からの炎弾を振り払った。


「! まだまだ……っ!」


 今度は直撃狙いで、参真は矢を放つ。

 さらに、ばら撒き狙いで、あさっての方向にも何発か矢を飛ばした。


「甘いですよ!」


 霊力で補強され、高速で放たれるそれを、美鈴は反射神経だけで捌いて見せた。このままでは不利だと悟ったのか、すぐさま参真の懐に潜り込み、接近戦へ。


「う、うわっ!」


 おっかなびっくりで、参真は美鈴のとび蹴りを受け流す。そのまま交差するようにすれ違ったところで、


「虹符『彩虹の風鈴』!」


 美鈴がスペルカードを発動。中距離から極彩色の弾幕が参真を襲った。

 

「電撃『エレクトロスコール』!」


 青年は二枚目のスペルカードを使用して対抗。無数の電撃の雨を降らせる。

 虹と雷撃が交錯し、中空で何度も爆発が起こった。


「はぁあああああっ!」


 爆風と稲妻の間を縫って、美鈴が参真の元へと飛び出す。視界を遮られていた参真は反応が遅れそうになったが――身体をそらして、なんとか拳を回避。だが、体勢が崩れた所を美鈴は逃がさない。そのまま格闘のラッシュを仕掛けてきた。

 繰り出される拳の雨を、青年は必死に受け流す。


「!」


 痺れを切らしたのか、やや美鈴が大きく踏み込んだのを、参真は見抜いた。瞬間、腕を滑り込ませ、同時に足を、美鈴の踏み出された足の間に潜らせる。


(行った!)


そのまま美鈴の腕を引きこみ、身体のバランスを崩す。美鈴も気がついたようだが、もう遅い。足を取り、そのまま美鈴を引き倒した。


「はぁ……っ! ようやく一本ですか……っ!」


 体中から汗を流して、参真はそれだけ言うと、大の字に倒れ込んだ。相当力を使っていたらしく、満身創痍である。

 協力が決まってから二週間。参真たちは各々の役目を果たしていた。

 うち美鈴は、参真単独での戦闘能力強化を担当。弾幕による中、遠距離攻撃と、近接格闘による連携攻撃を参真に仕掛けていた。


「あ、あれ~……私格闘は受け流すようにとは言いましたけど、隙があったら投げるようになんて言ってましたっけ?」

「……美鈴さんの技を見よう見まねで使いました」

「危ないことしますね!? でもいいセンスでしたよ」


 美鈴は驚愕していた。まさか、人間である彼から……しかも自分の得意分野である格闘戦でカウンターを貰うなど、想定していなかったのである。彼が反撃してこないだろうと油断していた結果がこれであった。


「ん~……そういうことでしたら、柔術系統も教えておきましょうか?」

「いいんですか? 正直、実戦で使うのには不安が大きかったんですよ」

「先に言っておきますけど、それでも妹様相手ではリスクが大きすぎますからね!? 積極的に仕掛けるのは厳禁ですよ!?」


 肉体的に鍛えていない参真と、超人的な力を持つ妖怪……特に力の強い種族である吸血鬼を、肉弾戦で相手にするのは自殺行為だ。本来、油断していなければ、美鈴も投げられたりしなかったのだが、タイミングがぴったり合ってしまった。達人の美鈴でも、避けれない状況だったのである。


「にしても、すごい力ですね……僕より細腕なのに、圧倒的じゃないですか」

「その圧倒的な相手から一本とったんです。自信持っていいですよ? あ、でも過信してうっかり死なないでくださいね?」


 美鈴が参真に今まで教えていたのは、「回避」と「受け流し」の技術だけであった。

 それもそうだ。力量差があるのだから、これしか碌に対抗する手段がない。現に今までの戦闘でも、接近戦はこれの練習で、その後距離を離して弾幕戦の繰り返し。

 二枚ほど新しいスペルカードも作成し、目も大分慣れてきたところで、参真は投げ技を仕掛けたのである。


「気をつけます。美鈴師匠」

「はは……じゃあちゃんとついてきて下さいね、弟子一号さん」

「はい!」


 そうして二人は夕暮れ時まで、練習を続けていた……



                  ***



 次は、咲夜が用意してくれた食事の後、小傘と参真の連携指導である。

 こちらの担当は咲夜である。ちなみに、それだけではなく、参真の健康管理も担当してくれている。 レバーやホウレンソウなど、血を作る食品が多くなっているが、参真の舌が全くあきないのは、咲夜の腕前だろう。


「ごちそうさまでした」


 ナフキンで口元をぬぐい、食休みもなしに弾幕戦の準備に入る。

 周辺の妖精を招集し、室内でも問題なく力を使えるようにした後――


「あっ! ご主人さまー!!」

「お待ちしておりました、参真様」


 大広間では、既に咲夜と小傘が待っていてくれていた。もう準備はできているらしい。


「それじゃあ咲夜さん、お願いしますね。まずは、小傘ちゃんが後ろの陣系から行こうか」

「はぁい!」

「遠慮なく攻撃してくれて構いませんわ。できれば、私を倒せるようになるぐらいにはしておきたいですので」

「了解です……行くよ小傘ちゃん!」


 小傘を背に、青年は前線に立つ。

 レミリアとパチュリーの準備が済むまで、三人は激しい弾幕戦を繰り広げだ。



                 ***



 時が経ち、深夜の大図書館にて。

 パチュリー、参真、レミリアの三人が、少し広めのスペースにいる。

 と、レミリアが参真の手首から、血を吸った。

 青年はやや顔をしかめるが、この独特の痛みに少し慣れてきたのか、初めのころよりは表情が柔らかくなってきている。

 直後、パチュリーが中空浮かんだ魔法陣を操作する。こちらも慣れた様子だが、表情はやや硬い。


「っ……」


 目がくらんだ時のように、吸血鬼が瞬きをする。と同時に、魔女が操作していた魔法陣が消えてしまった。


「……レミィ、大丈夫?」

「少し目がチカチカするけど、問題ないわ」


 少女は遠くを見て、少しでも早く視力を回復させることに努める。

 何度目かの失敗に、魔女は憂鬱そうな表情を作った。

 パチュリーの担当は、フランドール・スカーレットに使用する魔術の作成だ。

 参真の血液を通して、彼の視界をフランに投影し、まず彼女自身に、フランの見ている世界の異常性を認識させる。

 次に、同じ魔術を何度も使用し、フラン自身に通常の視界の感覚を身につけてもらう。こうすることによって、徐々に彼女の世界を、普通の人が見ている世界へと変えていく。要するに、視界を矯正するのだ。

 そのために、レミリア・スカーレットが実験台となり、魔術作成の手伝いをしている。同じ吸血鬼という種族に、姉妹という血縁、さらには、彼女の方が年上なのを考えれば、レミリアに通用する魔術なら、フランにも通じるだろうという理屈だ。

 ところが現状、そのレミリアに通じる魔術自体の作成が上手くいっていない。


「吸血される血液の量が、少ないんでしょうか……?」

「……妹様が同じ量を吸ってくれるとは限らないわ。出来るだけ少ない血液で成功する魔術を作った方がいい」

「そうね、私もフランもそこまで大食いじゃないわ」


 魔女の言葉に、吸血鬼も頷く。参真もそれを聞いて理解したようだ。


「見る限りだと、視界に働きかけるところまでは成功してるのよね。大分完成に近づいてきたけど……参真の視界を直接投影する形になるから……『血を吸われた上で、視界をはっきりさせる』状態でないと意味ないわね」

「出来れば、話し合いで彼女に血を吸わせたいところですが……」

「無理よ。十中八九戦闘になるわ。向こうは遊びのつもりでね」

「となると、僕に余裕がある状態で血を吸わせないとダメなのか」

「まぁ、私たちも可能な限り援護するわ」


 参真を強化していたのは、フランとの戦闘に備えるためだ。

 作戦決行の際、参真はフランに血を吸われる訳だが、その際戦闘になる可能性は十分以上……いや、ほぼ確実に戦闘になるだろう。その際、最低でも参真が自衛出来なければ話にならない。


「レミィ……普段のように、気絶させてはダメよ? この魔術はお互いの感覚を繋げるものだから、かかる二人の意識がないと効果が出ない」

「……頭が痛くなってきたわ」


 つまり戦闘になった際は、フランを気絶させず、かつ参真の意識がはっきりした状態で吸血させねばならないということだ。条件は非常に厳しいと言わざるを得ないが、これしか思いつく方法がないのだからやるしかない。


「今日はもう遅いし、明日も同じスケジュールなのだから早く寝なさい。参真」

「そうさせてもらいます。……早く完成するといいですね」

「明日にはできてると思……!? この感じ……!!」


 パチュリーが異常を感知すると同時に、地震のような揺れが館を響かせた。

 

「お嬢様! 妹様が……!」

「……みんな、時間を稼いで頂戴。その間に魔術を完成させるわ。前倒しになる形だけど……問題ないわよね? 参真?」

「僕が言いだしたことです。拒否権はありませんよ」


 参真は覚悟を決めた。危険な能力と力を持った相手だが、もう後には引けないところまで来てしまっている。


「咲夜さん。妖精メイドをできるだけかき集めてください! あと小傘ちゃんも――」

「――お連れしましたわ」


 瀟洒なメイドは素早く小傘を抱えてやってきた。流石である。


「あ、あれ……? どうして私ここに?」

「説明はあとで。今は……フランちゃんを止めに行くよ!」

「私も行く……咲夜、妖精メイドを集め終わったらすぐに来なさい」

「かしこまりました」


 参真は、近くの妖精メイドと、小傘、レミリアを連れ、地下へと降りていく。

 彼が幻想郷にきてから、最も長い夜が始まろうとしていた。


はい、新スペカ二枚解説入りますよ


炎符「真紅の弓矢」

炎を纏った矢を放つスペル。

矢本体だけでなく、通った軌跡からも炎を発生させる。

……余談ですが、没ネタに、レミリアが「スカーレットアロー」に改名しない? と誘われてた小話があったり。


電撃「エレクトロスコール」

こちらは電撃の雨を降らせるスペカ。

両方とも、図書館でパチュリーが「火と雷も使える」と言ったことから、参真が考案し、作成したスペルカードになります。



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