九十八・五話 門番の証言
番外扱いだけど本編(ry
私に呼ばれて、門番さんは戸惑っているようだった。
「咲夜さんに呼びだされるなら分かるんですけどね」
苦笑しながら、そんなことを言ってたっけ。
私も、事態がどうなっているのか、魔女さんが何をしようとしているのかは分からないけど、これで話が進むなら、それでいいなって思った。
「来たわね美鈴」
「パチュリー様、今日の用件はなんでしょう?」
「……そうね、妹様のことについてよ。あなた、たまに妹様と遊んであげているでしょう?どんな会話をしているの?」
「えっと……どうと言われましても……他愛のないことですよ?」
聞かれて、門番さんは困惑している。あんまり印象に残るようなことが無かったのかな?
「もっと具体的に聞くわ。『目』について何か言ってなかった?」
「ん……そう言えば――」
視線を宙に泳がせたあと、思うところがあるみたいで、歯切れが悪くてぽつぽつとだけど話し始めた。
「確かに、よく目について口にしていたと思います。会うたびに『美鈴の目は綺麗だね』って言ってくれていました。それである日、他の人の目はどうなんですかって聞いたんです。そしてら……妙なことを口にされまして」
「多分人だけじゃなくて、物にも目があるとか、いつも見られてるとかそんな感じのことを言ったんでしょ?」
「!? そうです。そしたら直後、頭を抱え始めて、暴れ始めてしまったので……でも、なんででしょうね。ああして暴れ回る妹様は、とても苦しそうに見えます……」
「……苦しくて当然でしょうね。おまけに、その苦痛を誰にもわかってもらえなかったのならなおさらよ……これで決まりね。参真の推論、ほぼ間違いなく当たってるわ」
ご主人さまに怪我をさせた妹さん……フランドール・スカーレット。
その子には直接あったことはないんだけど、ご主人さまが助けたいって言っていた子。
その子についてのご主人さまの予想が当たっていたみたい。と、そこにご主人さまが戻ってきた。
「戻りました……あれ? 美鈴さん? 門番の仕事は……」
「参真、ちょうどいいところに来たわね。妹様の狂気の原因、あなたの予測通りだと思うわ。そんな発想、全く思いつかなかったわよ」
ご主人さまの言葉を切って、魔女さんはご主人さまに話しかけた。するとご主人さまも顔を引き締めて返事をする。
「彼女、ずいぶんと『目』を嫌っていましたし、絵にも描かれていましたから。それに――視線に関しては、僕も体験したことでしたから」
「……絵を描くのが上手いから、絵から読みとれる情報量も違うのでしょうね。猶予はどれぐらいあると思う?」
「妖怪の精神力にもよると思います。でも、暴れているのを考えると……もうあまり長くないかもしれません」
「そうよね……なんとかして矯正する必要があるわ。でも方法が思いつかない」
む、難しい言葉がたくさん並んでる……私と門番さんは置いてけぼりになっている。訳がわからない話をしていたけど、きっと重要なことだ。
「そのことなんですが……吸血鬼の特性を利用できませんか? 確か、血を吸った相手のことがわかるんでしたよね?」
「……血を通して感覚を繋げようって訳? 理論上はできなくはないでしょうけど……一発で成功させる自信はないわ」
魔女さんが渋い顔をする。ご主人さまの提案は難しいみたい……
それを境に、みんな重い空気のまま黙り込んじゃった。
だから、それまで気がつかなかった気配に私は気がついて、そっちを振りかえったんだけど――何故か、そこに誰もいなかった。
あの時は気のせいだと思ったけど、後々、あそこにいた人物が誰だったのか、ご主人さまは知ることになる。
さぁ、今回のでわかる人にはわかったんじゃないかな?
答え合わせはもうすぐだよ~