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九十七話 実験と質問と

ちょっと時間空いちゃってごめんね☆

新学期で作者も忙しいんや……

「実験ですか……僕のためにもなりますし、いいですよ。それで、何をすれば?」

「そうよね。やっぱり実験体になるなんて嫌よね……っていいの!?」


 てっきり断ると思っていたアリスは、彼の返事の内容を飲み込まないまま答えてしまった。……パチュリーはこの回答を予測していたようだが、それにしたって人が良すぎるのではないだろうか? 魔女の提案なのだから、もう少し警戒してもらいたいものである。


「聞いた限りですが、僕も得する話じゃないですか。それに、自信はあるのでしょう? パチュリーさん」

「……失敗しないように考慮はしたわ。あとは実践あるのみと言ったところよ」


早速パチュリーは準備に取り掛かる。アリスはその様子を、呆れながら見ていた。


「ご主人さま、ファイト!」

「あなた、止めなくていいの?」

「多分止めても聞かないよ。それに、そこまで危ない実験じゃないんでしょ?」

「……どうなのパチュリー」


確かに、聞く限りではそこまで危険性を孕んではいなさそうではあるが、しかし何がおこるかわからないのが実験というものだ。恐らく、今回の実験に一番詳しいであろう、パチュリーに訊ねる。


「そうね、危険性は皆無に近いわ。彼の力の引き出し方を変えるようなものだから」

「確か、妖精を媒体にするんですよね? じゃあ、妖精がいないとダメなのでは?」

「……こぁ、暇してる妖精メイドを一匹捕まえてきてちょうだい。人選は適当でいいわ」

「かしこまりました!」


 小悪魔は指示を受けて、図書館の中から暇そうにしていた妖精メイドを連れてきた。これで準備は完了である。


「それじゃあ参真、まずは妖精にふれて頂戴。そしたら力を引き出す動作を、妖精を通してやってみて。多分それでいけるはずよ」

「なるほど……ちょっとごめんね」


 参真は妖精の頭に手を置いて、力を利用しようとすると……ふわりと身体が浮いた。その状態を維持できている。しかし――浮いたせいで妖精に触れていられなくなり、その拍子に彼は力を失った。


「……おわぁ!?」

「はわわ!」


 素早く小傘が落下地点に飛び込み、青年を受け止める。ちょうど小傘が参真をお姫様だっこするような形だ。


「っと、ゴメン。ありがとう」

「えへへぇ。私役立てた?」

「おかげで怪我せずにすんだよ……下ろしてくれる?」

「ん~ちょっとだけこのままで……」


そういうと、小傘は参真を抱き寄せる。


「そして、二人は静かに口付けをして、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

「まだ実験は続くわよ。勝手に終わらせないで……」


 アリスがナレーションを入れ、パチュリーが呆れかえる。我に返った小傘は、顔を赤くしながら参真を地面に下ろした。


「ゴホン。じゃあ第二段階に入るわよ? 次はこの薬を飲んで頂戴」

「「「う、うわぁ……」」」


 パチュリーが取り出したのは、液体の入った薬瓶なのだが……鮮やかな緑色をしている上に、ボコボコと表面が泡立っている。明らかに飲めるような感じではなかった。


「の、飲むんですか!? これを!?」

「そうよ。この薬を飲むことによって、妖精に直接触れていなくても大丈夫になるはず。さらには、力を引き出すだけじゃなく、妖精本体もある程度指示を出したり、制御することもできるようになるはずだから」

「いつの間にそんな薬を……」

「前も話したけど、あなたの力は精霊魔法と通じているところがあるの。だから、割と簡単にできたわ。ついでに、妖精に触れていないと力を引き出せないのも想定済みだったわよ」

「なら、初めからそう言ってください……」

「試しにやってみないとわからないじゃない」


 参真は頭を押さえながらも、薬瓶を手に取る。……飲むつもりはあるらしい。その時だった、突然思い出したように、参真が言った。


「あ、パチュリーさん。あとでいいんですけど、聞きたいことがあります。いいですか?」

「答えられる範囲で教えてあげるわ」

「ありがとうございます。それじゃ、飲みますね」


 やや躊躇しながらも、参真は一気に液体を飲みほした。

 途端、顔を白黒させ渋い表情を作る。どうにも味がよろしくなかったようだ。しかし、悶えるほどではなかったのだから、一応飲めるようには調整していたのだろう。それでも青年は文句をつける。


「これ、もう少しなんとかならなかったんですか?」

「大分マシになったのよ? 一番最初に作ったのなんて、ためしに呑んだら苦すぎて死ぬかと思ったわ……」


 青年の表情以上に、苦い表情を作るパチュリー。その様子を見て、彼は何も言えなくなった。


「さ、これで長距離からでも行けるはずよ。試しに飛んでみなさい」

「はい……おっ?」


 効果はすぐに現れたようだ。先ほどまで飛ぶことも出来なかった彼は、今は妖精に触れることもなく、自由に空を飛んでいる。


「引き出す方は成功ね。あとは、妖精への指示の出し方だけど」

「普通に話すだけじゃダメなんですか?」

「今の状態は、参真と妖精を魔術的に『繋いで』いる状態なの。感覚的なものだからあなたしか分からないでしょうけど、そこを通じて命令すれば、ある程度は言うことを聞いてくれるはずよ」


 言われたはいいものの、とっさに何を命令すればいいか、参真は思いつかなかった。そのまま空中で悩んで、ようやく出した命令が――


「それじゃあ……えっと……『踊れ』」

「口に出さなくても大丈夫よ……にしても踊れって……もう少しいいの思いつかなかったの?」


 すると、先ほど呼びだした妖精が、ぐちゃぐちゃに踊り出した。踊ることは知っていたようだが、踊り方は知らなかったらしい。


「じゃあ『絵を描け』とか?」

「相変わらずね……それをやらせたら子供のラクガキよりひどいと思うわ……それはさておき、これであなたは妖精を多少操れるようになったから、弾幕ゴッコとかで上手く使いなさい」

「ありがとうございました。実験としては、成功でいいんですか?」

「上手くいきすぎてつまらないぐらいよ」


 表情もしかめっ面で、まさにつまらないと彼女の態度や纏う空気が、全身でそれを示していた。いつもより少し機嫌も悪そうに見える。


「はぁ、まるで失敗してほしいみたいな言い方ね?」

「何もかも上手く行き過ぎても、退屈なものよ。まぁ、今回のは私の専門に近い分野だったから、おさらいに近かったかしらね」

「なるほど……それだと、専門外のことで質問してしまうかもしれませんが、いいですか?」

「とりあえず言ってみなさい」


 さっさと終わらせろと言わんばかりに、先を促す魔女。……そんな態度を見抜いたのかどうかは知らないが、参真も少し緊張しているように、アリスの目には映った。


「魔術や魔法の観点から見て……『目』ってどういう意味を持ってます?」

「へぇ……面白い質問するのね」


感心したように、パチュリー僅かに顔を上げた。


「ちょっと長くなるわよ?」

「わかりました。小傘ちゃんも聞いておいてくれる?」

「はーい」


 意外にも、参真は小傘を呼んだ。彼にとってそれだけ重要な話ということなのだろうか……


「まず、『目』で有名なところと言えば、『魔眼』ね。視線を介して、相手に何らかの効果を与える。レミィはあまり使わないけど、吸血鬼や魔女、悪魔が視線を合わせただけで『魅了(チャーム)』にかけたり、有名どころだとメデューサとかかしら?」

「ああ、見ただけで相手を石に変える奴でしたっけ?」

「それね。でも実は、特別な魔力とかがなくても、視線そのものに悪意が宿っていれば、それが呪いになるみたいな考えもあるのよ」

「!」


 興が乗ったのか、パチュリーはつらつらと喋り出す、質問した青年も真剣そのものだ。この考えはアリス自体も知っているので、口を出すことにする。


「確か、『邪視』とか言ったかしら?」

「ええ、悪意ある視線に、呪いがあるという発想ね。それを防ぐためのお守りなんかも結構な種類があったはずよ。他にも、目玉そのものを水晶体として利用したり、儀式に使われたりすることもあったり、細かく解説していたらキリがないぐらいたくさんあるわ」


 青年は深刻な表情のまま黙りこくっている。やがて、考え込んだそれを吐き出した。


「もし――物に目がついていたら、それに呪われることはありますか?」

「物に目なんて……ああ、目玉模様とかのことかしら? 結論から言うと、『邪な目で見られた』と本人が感じたりすれば、呪いとしては成立すると思うわよ」

「……なるほど、僕のトラウマもその観点から見ると、『呪われてた』のか」


アリスは知るよしもないが、この青年はかつて、様々な視線を浴びたことがある。この邪視の考えでいくと、彼は相当な呪いを受けたのだろう。あるいは、その呪いのせいで、世界から追放されたのかもしれない。


「さて、参真。ちょっと稽古をつけてあげようと思うのだけれど、時間あるかしら?」

「いいんですか? ありがとうございます……そうだ、そういうことなら……小傘ちゃん。パチュリーさんに『あのこと』話しておいてもらえる?」

「! ……いいの?」

「話した上で、協力してもらいたいから。例の絵も預けるよ。説明もこの前の通りにお願い」

「「?」」


 魔女二人は首を傾げた。この青年は何か企んでいるらしいが……今の会話では何のことだがさっぱりだ。


「私には秘密なのね」

「……ごめんなさい。これは本来紅魔館の問題ですから、僕も首を突っ込むべきじゃないんでしょうけど……放っておけなくて」

「パチュリーの言うとおり、お人よしね」


 肩をすくめながらも、アリスは青年を連れて図書館の外に出た。

 

残されたパチュリーは小傘によって、参真の見つけたある『事実』を突きつけられ、驚嘆することになる。


気がついたら興がのって久々の長丁場に。久々なので書きためてたんやな……

 ちなみに、妖精メイドは参真が去るまで踊り続けていたというコマイ設定があったりw ちゃんと命令はやめろまで言ってあげましょうw

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