表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/131

九十四・五話 失う前に……

番外だけど実質本(ry

「あ……ご主人さま! 無事でよかったぁ!!」


 私が目を覚ますと、ご主人さまはもう起きていた。嬉しさのあまり、つい飛びついた。

 ぎゅ~と思いっきり抱きしめて、改めて無事を確認する。


「ごめん。また心配かけたね……」

「本当だよぅ! 私が目を離すとすぐこれなんだから!!」


 そう言って、私は頬を膨らませた。ご主人さまは、もう少し自分を大事にした方がいいんじゃないかな。いつもいつも、知らない間に危ない目に会ってるよ……


「それはそうとさ……ちょっと確かめたいことがあるんだけど、いい?」

「ま、またそうやって誤魔化して……」

「……大事なことなんだ」


急に真剣な声になって、ご主人さまは私の肩に手を置いて、くっついっていた身体を少しだけ離す。それでも十分近い距離なんだけど、そのままじっ……と私の顔を見つめていた。

 そしてそのまま、何も言わない。真剣な眼差しのまま、ただひたすらに私に視線を向け続けた。は、はうぅ……


「え、えと、その。ご主人さま……?」


 いい加減恥ずかしくなってきて、上擦った声が出てしまう。急にどうしたんだろう? ご主人さまの行動の意味がよくわからないよ……


「……見られて、どうだった?」

「えっ?」

「見られ続けてて、どう思った?」


 それに、何この質問!? 一帯どうしちゃったのと思ったけど、きっと何かの意味があるはず。だけど、答えたくないなぁ……


「すごく……恥ずかしかった……」

「……? ……そうか、一対一だと、そういう感じ方にもなるのか……質問を変えるよ。例えば……いろんな人から、四六時中見られ続けるのって、どう?」

「えぇ~……それは嫌かも」

「……だよね。見られてるって思うだけでも、嫌だよね」


ご主人さまは、何がしたいんだろう? 私にはさっぱりわからない。


「変な質問ばっかりして……ご主人さまは、何がしたいの?」

「何がしたい……か」


 深く考え込んで、今度は黙り込んでしまった。私を巻き込みたくないのかなぁ。でも……


「もうおいてけぼりは嫌。ご主人さまと一緒にいるだけじゃなくて、ちゃんと役にたちたい」

「今の質問に答えてくれただけでも、十分助けられたんだけどね」


 困ったような表情のまま、器用に笑みを浮かべる。やがて、決心がついたのか、ぽつぽつとご主人さまは語り始めた。


「フランドール・スカーレットのことは、聞いたよね?」

「うん……心が不安定で、それで暴れるって。能力も危ないし、だから地下に閉じ込めてるんだって」

「姉が妹を閉じ込める。普通そんなことしたいと思う?」

「……それは仕方ないと思うよ。現にご主人さまは危ない目に遭ってるし……」

 

私の言葉に、「そうだね」と頷いたけど、その顔は納得していない。


「だけど……僕は姉に妹を諦めさせたくない。このまま放置していたら、最悪僕みたいな目に遭う」


 ああ、そうか。

 ご主人さまのお兄さんも、気がふれてたんだっけ。

 だけど、それでも、お兄さんはご主人さまのことを気にかけてくれてたんだっけ――

 きっとご主人さまは、あのフランって子に、いや、スカーレット姉妹に自分たちを重ねて見てるんだ。


「僕は兄さんが死んでから気がついた。だけど、あの子たちはまだ間に合う。大切な関係の人をまだ失っちゃいない」

「だから、なんとかしたいんだね」

「そのための糸口をつかんだとなれば、なおさらだよ……」


 ご主人さまは、それっきり俯いて喋らなくなった。


「ご主人さまは、優しいね」

「どうだろう。身勝手な同情とも言えるかもしれない。それにどう考えても、もう一、二回は危険を覚悟しなきゃいけないから、君を巻きこみたくなかったけど――それは嫌なんだよね」

「もちろんだよ! ご主人さまの役にたたせて!!」


 私がそう言うと、今度はご主人さまから私を抱きしめた。


「ありがとう」


 少しだけかすれた声は、いろんな感情が混ざっていて、私の身体の中で、しばらく反響していた……


 無事に小傘の協力が得られた主人公。

 はたして彼は、フランとレミリアを良好な関係にすることが出来るだろうか――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ