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九十四話 見え隠れする真実

 今回の回は、ターニングポイントとなります。

 こうして気絶して、目が覚めるのは何度めだろう? 寝起きの回らない頭で、参真はふとそんなことを思った。


「気がつかれましたか?」

「……咲夜さん」


 レミリアに与えられた部屋で、メイド長が隣に座っていた。参真はベットの上に寝かしつけられており、小傘は青年の上半身辺りに寄りかかって眠っている。


「あの後のいきさつを、教えてもらえますか? 確か、フランちゃんが暴走して――」

「異常に気がついた妖精メイドがあなたを助けるようにと願い出たので、私の能力を駆使して部屋から脱出。その後は、小傘様があなたを看ていました。その後、代わる代わる様子を見て、私が来てみれば、あなたは目覚め、小傘様は眠っていたということです」

「彼女、慌ててはいませんでしたか?」

「自分の主の一大事に、取り乱さない方がどうかと思いますわ」

 

 彼女もレミリアの従者なのを思えば、この反応は当然である。……どうやら自分はまた、小傘を心配させてしまったらしい。


「ありがとうございます」

「その言葉は小傘様にかけてあげて下さい……ところで、私も訊ねたいことがあるのですが」

「フランちゃんのことでしょうか? 地下室は偶然見つけただけですよ。紹介してくれなかった理由は、察しがつきますけどね」


 咲夜は一つ、頷いた。


「妹様は、情緒不安定でして……時々ああして暴れまわってしまうのです。さらに保有していらっしゃる能力も、危険極まりありません」

「その能力とは?」

「『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』です。お嬢様の話によれば……『目』と呼ばれる万物の特異点を手元に持って行き、握りつぶすことによって破壊する能力だそうです」


 参真は絶句した。姉の能力もとんでもない物だと思ったが、これはそれ以上だ。よく生きて帰ってこれたものである。と言うか……


「助けてもらっておいて、こんなことを言うのもどうかとは思いますが、よく咲夜さんも無事でしたね。握りつぶされたら、咲夜さんだって危ないんじゃあ……」

「私の能力、『時間を操る程度の能力』があれば造作もないことですわ」

「……この館の住人は、すごい人ばっかですね」


 何気なく口にされる能力は、どれもこれも強烈なものばかりだ。自分の『自然か不自然かを見分ける程度の能力』がしょぼく見える。


「話を戻しましょう。妹様はその精神構造と能力の危険性故、レミリアお嬢様の指示で、基本的には地下の自室に幽閉されています」

「自分の妹を幽閉……か」


 行為そのものにも参真は嫌悪感を覚えたが、それ以上に何か食い違っている気がする。二重に胸の内につっかかりが出来て、気分が悪くなった。


「地下室にはパチュリー様の魔法で、封印が施されていますが、妹様はそれすら破壊してしまいます。そうなると……我々紅魔館のメンバーで妹様を止めるしかありません」

「外に出す訳には、いきませんものね」

「ええ、そうしてまた、妹様を閉じ込める」


 またしても、咲夜の言葉に違和感を覚えた。彼女の言動自体は『自然』なのだが、何か前提が間違っているような気がする。

 彼女は……フランは、外の世界に対し、何と言っていた?


「次はあの部屋に近寄らないように。命の保証はできません」

「……分かりました」

「それと……これをどうぞ」


 差し出されたのは、参真があの時持ち運んでいた道具一式だ。咲夜が回収してくれたらしい。


「ああ、ありがとうございます……最後に一つ。咲夜さん。胸のあたりに違和感がありませんか? さっきからそのあたりだけ不自然に見え――」

「なっ……!? いっ、いえそのこれは……ご心配には及びません!」


 参真の忠告を、咲夜の驚愕と困惑が遮った。一体どうしたのだろう? ますます不自然に見える彼女に、参真は無神経に続ける。


「無理はしないでくださいよ? あなたまで倒れたら」

「こ、これは違う! 違うんです!!」


 脱兎の如く、その場を逃げ去るように去る咲夜。その拍子に――ぱらりと、スケッチブックの間から、一枚の絵が落ちた。


「? これは…………えっ!?」


 それは、自分の絵ではない。あの時フランに渡した一枚だ。

 中途半端な箇所で止まっているが、それにはある事実が描かれている。

 これは、フランドール・スカーレットが、見ている世界そのものであると言っていい。


(まさか……でもそれなら、あの時の言葉の意味も……)

 

青年は一人思案する。この真実を固めるためには、それ相応の情報が必要だ。おぼろげな憶測と言われてもしょうがない。証拠はこの場にあるが、それだけでレミリア・スカーレットと説得できるとは、到底思えなかった。


(これは……小傘ちゃんにも、協力してもらおうかな)


 とても一人だけでは、このパズルは完成させれそうにない。

 今は眠る少女に、参真は一人期待を寄せた。


 さぁ、ばらまいた伏線を回収する時間だ!

 想像力の豊かな方なら、もうフランのことがわかるはずです。ヒントは少なめですが。あ、もしわかってもネタバレはやめてね?

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